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第十三話 「魔導教典書士、空を飛ぶ」

けてるけてるけてるけてるけてる

 『神龍の角(デウスホーンドラゴン)

 『神龍(デウスドラゴン)シリーズ』と呼ばれる七体のモンスターの内の一体だ。

 奴らは世界各国のダンジョンにランダムに出現するボスモンスターであり、俺も実際に遭遇するのはこれで二度目だ。


 七体の名前はそれぞれ『(ホーン)』、『(ウィング)』、『(テイル)』、『(ハンド)』、『(レッグ)』、『(ボトム)』、そして『心臓(ハート)』。

 体の部位の名前を冠しており、特徴として名前に付いている体の部位のみが実態を持ち、それ以外が半透明で曖昧な非実体となっている。

 その為、七体が揃うと完全体になるのでは? と言われているが、実際に七体が揃って出現したという話は聞いた事が無い。


 何故そのモンスターが出現したことで、探索者たちがお祭り騒ぎになっているかと言えば、奴らを倒して手に入る素材やドロップアイテムが原因だ。

 奴らを倒すと、実体化している部位がそのまま素材として手に入り、加えて他のモンスターであれば低確率で手に入るドロップアイテムが、現在報告されている限りでは確定でドロップする。

 倒せれば一攫千金は決まった様な物である為、探索者たちは一様に盛り上がっているのだ。


 それだけリターンが大きい相手なら、普通出現情報は独占するんじゃないのかと疑問に思うだろうが、奴らは『ボーナスレイドボス』と呼ばれるモンスター……『レイド』、つまりは大人数が徒党を組んで討伐する事が前提と認識されているほど強力なモンスターだ。

 欲に目が眩んで少人数で挑み、死体も残らなかったなんて話は探索者界隈ではよく聞く話だ。

 その事を知っているからこそ、みんな情報を広めて少しでも多くの人手を募って討伐しようとしているのである。

 逆に言えば、人手さえ足りていればお祭り騒ぎになるくらいには美味しい獲物であると言えるのだが。



 そう言った事情を青ヶ谷女子と緑河女子に説明する。

 今日の所は、二人をもう帰らせよう。流石に時間も時間だし。


 結局、二人のジョブは決められなかったな。

 まぁしゃあねぇや。黄村と……ついでに秤間の連中にも意見を聞きたかったんだが、この調子じゃ連中が帰って来る前に日が暮れる。

 秤間の連中ならどうせ明日もいるだろうし、二人のジョブを決めるのはその時で良いだろう。


「と言う訳で、今日はここまでだな。続きはまた明日にしよう。二人共それで構わないか?」

「うん。何と言うか、今日だけでも結構濃い体験だったから、ちょっと疲れちゃったかな」

「自分もっスね。親にもまだ探索者を始めるってことは言ってないっスし、今日はこの辺で帰ることにするっス」


 自分で口にしてようやく自覚が出たのか、二人の顔には疲労感が浮かんでいた。

 まぁ二人共、まだスライム一匹倒しただけで、体力的にも気力的にもまだまだ一般人だからな。さもありなん。


「そうか、なら送って行くよ」

「良いの? 赤松くんもお祭りに参加したいんじゃないの?」

「俺はまぁ参加出来なくても……『奥義個体』も昔一回討伐した事あるし」

「あ、そう言えばそっちの事をまだ聞いてなかったっス。奥義個体って何スか?」

「ああ、そっちをまだ説明して無かったか。奥義個体って言うのはだな―――」


 『奥義個体』。

 これを説明するには、まずステータスを持って居るのが人間だけでは無いと言うのを理解して貰わねばならない。


 俺のペットたちがモンスターの討伐に参加してステータスを獲得した様に、人間以外の生物でもステータスを獲得する事は可能だ。

 そして、モンスターたちは最初からダンジョンに居る存在である為に、当然の様にステータスを持っている。

 ステータスを持っているという事は、スキルや魔法を持つ事もあるという事だ。

 それはつまり―――


「――つまり、奥義個体って言うのは『奥義スキル』を獲得した個体って事っスか?」

「ああ、そう言う事だ。と言っても、モンスターの場合長期間生き残って行く内に獲得した者と、今回みたいに出現した時点で持っている者の二パターンがあるがな」


 そう、『奥義個体』とは『奥義スキルを獲得した個体のモンスター』を指し示す言葉である。

 特徴として、種族名の後に奥義スキルの名前が組み込まれているのが目印だ。

 まぁ、名前なんかは『鑑定』スキル持ちじゃないと判らない情報だが。


 人間とは違い、モンスターの中にはダンジョン内に発生した時点で奥義スキルを所有している個体も居る。まぁ、一種のレアモンスターだな。

 奥義スキルを持ったモンスターと言うのは、強力な能力を持っている狂的な訳だが、奥義個体と言う存在には、もう一つ意味を持っている。

 それが、ボーナスレイドボスのお祭り騒ぎを更に盛り上げている原因だ。


「奥義個体のモンスターって言うのは、ドロップアイテムなんかの他に、確定で所有している奥義スキルをドロップするんだよ」

「え? それってつまり」

「倒すとそのモンスターが持っている奥義スキルが手に入るって事だよ。みんなが目の色変えて()る気出した原因だな」


 奥義スキルと言うのは、非常に強力かつ狙って獲得するのが難しいスキルだ。

 入手出来る機会があるのなら、そりゃぁみんな飛び付くだろう。

 まぁ、ボスモンスターと戦える実力のある上級冒険者限定の話であるが。


「ほへぇ~、それでみんなあんなに血走った眼をしていたんスねぇ」

「そう言う事」

「赤松くんはどんな奥義スキルを手に入れたの? 昔倒したんだよね?」

「あ、それ自分も気になるっス!」

「俺のか? 俺の場合は『骸剋龍夜刀神がいこくりゅうやとのかみ天破激震の頂インパルス・オブ・ザ・ワン』って言うのを倒して、『天破激震の頂インパルス・オブ・ザ・ワン』って言う衝撃波を操る奥義スキルを手に入れたよ」

「「名前長っ!?」」

「そう思うよなぁ。俺もそう思う」


 便利なスキルではあるんだが、名前が長いというか、中二臭いというか……。

 まぁ、実際俺の戦った骸剋龍夜刀神は、『(いただき)』の名に恥じないだけの強敵だった訳だが。

 俺が一撃で首を落とせなかったのって、今まで戦った中であいつだけだぞ。


「さて、じゃあそろそろ送って行くよ」

「ありがとう赤松くん。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰うね」

「申し訳ないっスね。ジョーくんのお祭り参加を遅らせちゃって」

「なに、直ぐに送って行くから問題無いさ」

「「?」」


 直ぐに送るという俺のセリフに、青ヶ谷女子と緑河女子が首を傾げて疑問符を浮かべる。

 確かに歩いて送って行ったらだいぶ遅くなるだろうが、俺の移動手段は徒歩だけじゃないんでな!


 収納スキルから普段のダンジョン探索でも身に着けている赤い外套『朱雀羽織(すざくばおり)』を直接身に着けた状態で取り出し(収納スキルのちょっとした小技だ)、更に同じく左腕に巻き付いた状態で黒い鎖、伸縮自在で俺の意思通りに動くマジックアイテムの鎖『黒百足(くろむかで)』を取り出す。


 そうして左腕を上げて巻き付いた黒百足の調子を確認してから朱雀羽織のフードを深く被り、右手を青ヶ谷女子の、左手を緑河女子の腰に回して抱き寄せる。


「ちょ、赤松くん!?」

「わわ、ジョーくん大胆っス!?」


 突然の俺の行動に顔を赤くしている所申し訳ないが、本当に大胆になるのはここからだ。


「折角だから、ちょっと『空を飛んで』送って行くぞ。ナビゲートよろしく」

「な、ええ!? 空!?」

「飛んでくってどういう事っスか!?」


 こういう事だよ!


「『あかしけやなげ ひいろのとりよ くさはみねはみ けをのばせ』!」


 その言葉を唱えた途端、朱雀羽織がまるで生き物のように蠢き形を変える。

 一瞬の後に朱雀羽織は、まるで鳥の翼のような形となりバサリと大きく羽ばたいた。

 これぞ、『朱雀羽織・飛行形態』である。朱雀羽織にはこのような機能もあるのだ!


 翼となった外套が、俺の意思通りに動くのを確認すると、黒百足を命綱として青ヶ谷女子と緑河女子の体に巻き付け、地面を蹴って空へと飛び出した。


「ひゃぁっ!? ホントに飛んでる!?」

「ジョーくんなんでもありっスかぁ!?」

「ハハハ! 空を飛ぶくらい上級探索者の必須技能だぞ!」


 上級探索者の潜る様なダンジョンは、基本的に一般人では移動不可能なくらい厳しい環境である事が多い。

 その中には徒歩で移動するのが困難な断崖絶壁などもある為、上級探索者なら大抵の場合飛行手段を確保しているものだ。

 大抵の場合は、飛行魔法に頼ることが多いのだが。


 しっかし毎度思うが……空を飛ぶのは気分が良いな! 引っ込み思案(当社比)の俺の心も大空に羽ばたいて居るぞ!!


「ハハハハハ! どうだ!? 自分たちの住む町を空から眺めるのは気分が良いだろう!!」

「ジョーくん、性格代わってるっス……」

「でも、確かに空から街を眺めるのって新鮮な気分だね」


 夕暮れに染まった七咲町に、段々と家の明かりが灯って行く。

 見慣れた町も、視点が変わるだけでここまで新しい顔を見せてくれる。

 この光景を二人に見て欲しかった。


「……なんか、良いっスね。こういうの」

「うん……生まれた時から知っている住み慣れた町なのに、こうして見るととっても綺麗……」


 うむ、二人共良い感じに景色に見蕩れて居るな。押すならここだ!


「稼ぎの多い上級探索者を目指すなら、飛行手段の獲得はスマホを持つくらい必須項目だ! そこでお勧めなのがこちらのマジックブック! 読むだけで飛行魔法が修得出来る優れもの! でもお高いんじゃないかって? 大丈夫、青ヶ谷女子と緑河女子なら分割払いも全然オッケーだ! 未来への投資と思って、御一ついかが? 今ならこの契約書にサインするだけで、夢の飛行魔法が君の物に!!」


 ふふふ、空を飛んでいる時のテンションじゃなきゃ、こんなにスムーズに宣伝なんて出来ないからな。

 シチュエーション的にも飛行魔法のお勧めにぴったりだ。

 将来魔法書販売で生計を立てようと考えている以上、こういうトークも出来るようになっておかないとな!

 反応はどうだ? と、二人の様子を窺って見ると。


「……」

「……」


 二人共なんか白けた様子の半眼でこちらを見ていた。何故だ!?


「ジョーくん……売り込みの為にここまで連れて来たんスか?」

「なんだ、シチュエーション的にもタイミング的にも完璧だろ? 二人共飛行魔法欲しくならなかった?」

「確かに欲しくはなったけど……赤松くんって馬鹿だよね」

「ハッハッハ! 何だと青ヶ谷女子? ……本当の事言うなよ」



 何が駄目だったのかなぁ? と首を傾げつつ、二人を自宅へと送り遂げた蓮上君であったとさ。

 あ、後、飛行魔法は探索者として収入が安定してから考えるという事となった。

 俺はいつでも待ってるぜ!

朱雀羽織(すざくばおり)


『屍征獣・朱雀』からドロップした外套。

鳥の翼を思わせる外見の赤い衣であり、滑空能力を持つため火魔法の『噴射(バーニア)』を利用する事で高速飛行を行う事も可能。(イメージ的にはマインクラフトのエリトラ)







………そう、本来の朱雀羽織に単体での飛行機能は存在しない。

まして、固有の呪文を唱えて能力を発揮させることが出来るのは蓮上のみである。


この機能は朱雀羽織の本来の機能では無く、蓮上の…に……憑…た……の……―――――



食いたい喰いたいクイタイくいたい喰喰喰喰喰飢飢飢飢飢餓餓餓餓餓………―――――

食わセろ食わセロ食ワせろ食ワセろオレはハラが空いテイる俺はマダマダ食イ足リなイ………

寄越せ寄越セ寄越せ寄越セ食イ物を力ヲオ前の全テをヲをヲヲ………―――――



アノ化け物を喰イ殺すッ!!! ソの為ノ餌を寄越セェッ!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現代ダンジョンもの……中々好みな話ですな [気になる点] その呪文はアカン、マジでアカン(朱い鳥の幻覚を見ながら) [一言] 貴方は財団職員だったのか?(朱い鳥にもぐもぐされながら)
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