【rushing!(突入)】
モーリーホテルに向かう道は事故で大渋滞だったが、俺を乗せたフランソワのハーレーは歩道を突っ走り、先に出たミューレたちのパトカーを追い抜いて行った。
「いいのか? 警察の目の前で、交通違反だぞ」
長い時間、緊張していた気持ちを解そうと思って冗談を言ったのに、フランソワはいつになく「ああ……」と気のない返事を返すだけ。
“やっぱり、疲れているのかな?”
こういう時、男同士なら、どう励ますのか考えてみた。
そう言えばモンタナはよくガッツリ抱きしめていたのを思い出し、真似をして回していた手に力を入れて「頑張れ! あと、もう少しだ」と励ましてみた。
途端に元気になったのか、フランソワは雄叫びを上げながらスピードを上げて、ホテルの入り口の短い階段をバイクのまま駆け上がりエレベーターの前でスピンして止まってみせた。
「行ってこい!」
「ああ。あとは頼んだ!」
そう言って開いたエレベーターに飛び乗ると、フランソワはいつもそうするように、親指を立てて見送ってくれた。
ロビーにはテロリストの下っ端が、思いがけない侵入者に慌てていた。
エレベーターのドアが閉まり切る瞬間ホテルの玄関にジェイソンとボッシュのバイクが遅れて入って来たのが見え、一瞬それに乗っているハンスとブラームを待とうかと思ったが、レイラの事が心配でそのままドアを閉めて上に上がった。
今は一刻を争う。
ロビーの手下たちはフランソワたちに任せておけば何とかなる。
だが、敵の作戦が失敗した以上、いつレイラの命が奪われるか分からない。
いや、もしかしたら……。
エレベーターが24階に近付く。
ドアが開く先には、見張りが居るに違いない。
腰に挿したワルサーP22のセーフティーロックを解除して再び腰に戻し、口に投げナイフを咥えて上部にあった僅かな突起物に手を掛け、天井に身を隠した。
24階に到着したことを知らせるベルが鳴る。
ドアが開くと案の定、敵の見張りが1人中を覗きに来た。
エレベーターの中に居るはずの人影が、外からは見えなかったので室内に入って来た男は、それでも俺を見つけられずに「誰もいねえや」と、通路に居るもう1人の男に言った。
「人騒がせなエレベーターだな」
通路に居る男の声が、こちら向きから、向こう向きに替わるのが聞き取れた。
体を支えていた力を解き放ち、エレベーターから出て行こうとする男に飛び掛かる。
飛び掛かりざまに首をホールドして関節を外すと、男は力なく床に崩れ落ちた。
死にはしない。
だが首から下に麻痺が残る可能性はある。
本当なら殴って気絶させるか頸動脈を絞め上げて失神させたかったが、それだと通路の向こうに居る見張りに気付かれる恐れがあったので、手荒なことをしてしまった。
通路に敷かれたカーペットの上を低い姿勢で、音もたてずに走り、もう1人の見張りに取り付く。
喉を掻き切って一気に殺すことも考えていたが、あまりにも無防備な姿を見て、それを止めて拳銃を持った手で首を殴って気絶させた。
部屋のドアの傍で、バサッと音を立てて見張りの男が床に倒れる。
安いホテルではないから、このドアの向こう側に居るはずの見張りには、この小さな音は届かなかったはず。
その代りに、逆に中からキャーと言うレイラの悲鳴が、小さく聞こえた。
抜いた拳銃を再び腰に挿し、口に咥えていた2本の投げナイフを手に取った。
そしてドアを開けて中に飛び込む。
ここからは手加減は出来ない。
ドアを開けた途端に出くわした見張りの心臓をナイフで一突きにして倒すと、その先の部屋のドア前にいた見張りが俺に気が付いて拳銃を構えようとしたが、それより俺の手を離れたナイフの方が一瞬早く奴の胸に突き刺さった。
心臓を刺されて倒れ込もうとする体を支え、そして思いっきり力を込めてドアの向こうに投げ飛ばす。
ドアを突き破って部屋に飛び込む死体を目掛けて、数発の銃声が鳴る。
続いて飛び込み、その銃声を鳴らした相手に向けて銃弾を撃ち込むと5人の敵が倒れた。




