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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Opération“Šahrzād”(シェーラザード作戦)*****
32/273

【Infiltration investigation(潜入捜査)】

“うっ、なっ、何をする”

 そう、言葉に出そうと開けた口はエマに塞がれた。

 手荒なことはしたくなかったので、手で体を押すが確り体をホールドされて離れない。

 押し返そうとした手を取られ、体を預けてくる。

 コンテナの壁に背中が付く。

 心とは別に、濃厚なキスに抵抗する力が抜けて行く。

 久し振りのキス。

 サオリと別れて以来……。

 エマの手が、俺の服のボタンに手を掛ける。

 サオリなら抵抗はしない。

 だけどエマはサオリじゃない。

 ボタンに掛けた手を捻り、後ろ向きにさせ捩じ上げる。

「痛た・た・た・チョッとギブ、ギブ!」

 エマが捻られていないもう片方の手で自分の肩をたたき、降参の合図をしたので手を離す。

「何のつもりだ」

「ゴメンゴメン。ちょっとテストしてみたまでよ。それにしても、さすがね。どこで習ったの?」

「まだ、俺の問いに答えていないだろ」

 俺の言葉にエマはニッと笑った。

“これもテストか?”

「察しが良いわね」

 声に出していないのに、返事が返ってきた。

「実はね――」

 エマがエマ大尉に戻り、説明してくれた。

 1週間前から、トリポリ郊外に潜伏していたDGSEの民間エージェント1人と連絡が途絶えた。

 ザリバンに拘束された可能性が高い。

 だから、ほかのエージェントは、郊外を出て安全な所で身を隠している。

「救出作戦か」

「そう。私と一緒に潜入捜査をするのよ」

「駄目だ、組織が違う」

 潜入捜査が嫌なわけではない、むしろパトロールでバラクを探し出すような、まどろっこしい事をするよりも、潜入させて欲しいとさえ思っている。

 ハンスが行けと言ってくれれば、直ぐにでも行く。

 だけどエマはハンスじゃない。

「組織のことなら大丈夫。愛しの君にも、もう了解は取ってあるわ。大分渋っていたけれどね。でも彼は言っていたわ、話を出したらナトーは断らないだろうとね」

“愛しの君って誰のこと?もしかして……”

 急に頬が熱くなる。

 さすがに情報部員だけあってか、暗がりの中でも俺の顔色の変化に気が付いて、ちょっかいを出してきた。

「きゃっ。ナトちゃん可愛い♪ハンスのこと言ったら顔が赤くなったぁ!意外とウブネ」

「違う。熱くなってきただけだ。そうと決まればサッサと脱ぐぞ。着替えは奥のバッグの中だな」

 軍服を脱ぐ俺をウキウキした顔で見つめるエマが言う。

「やっぱ。抱きたくなる」と。

 俺が、聞こえなかった振りをして全部脱いでバッグの中から服を取り出していても「ねっ!ねっ!彼とはどこまでいったの?」とか「彼の他には、何人くらい?」とか聞いてくる。

 正直ウザい。

 俺は無視して、黒い服を着て同じ色のビジャブを巻いた。

(※ビジャブ:イスラム教徒が頭から被るスカーフで、目しか出ないアバヤと違い、結構普通のスカーフに近い)


 着替え終わって、別のエージェントが運転するルノーで郊外まで送ってもらうことになった。

 車の中で装備を渡され、説明を受けた。

 先ずは拳銃。

 万が一、銃撃戦になった場合の唯一の武器はベレッタPX4 ストーム。

 装弾数は9mm弾が20発。

 予備のカートリッジは、ブーツの外側に施された装飾の中に左右各1個ずつで、本体に装着済みのカートリッジと合わせて60発まで撃つことが出来る。

 あとは、手投げ用のナイフが6本。

 2本はブーツの内側。

 残りの4本はガーターベルトの内側に装着。

「なんで、内側なんだ?取りづらいし、少し気持ち悪いんだが」

「外側だと、お尻周りを触られた時にバレちゃうでしょ。

 まったく、男ってやつはどこまでスケベに出来ているんだか。

 あとは、エマは髪を纏める櫛が2本、投げ用のピンになるが、ショートの俺は携帯できない。

 それと連絡用の携帯電話。

 古いタイプのボタンが付いているやつだが『0』キーの長押しで先端がスタンガンになり『9』キーの長押しで、持っている本人側に高圧電流が流れる。

 催涙ガスが出る口紅に、スプレー缶の裏を強くたたくと煙幕が出るヘアースプレー。

「まるでスパイだな」

「そうよ。だって情報屋だもん」

 そう言ってエマが俺の腕を掴み密着して、柔らかい豊満な胸をグイグイ俺の腕に擦り付けてくる。

「よせ!」

「いやぁ~ん。意地悪ね♪」

 エマ大尉に対して敬語を使わない俺もどうかしていると思うが、その受けごたえに対していちいち甘えたような言葉を返すエマも、またどうかしている。

 一応の装備の説明を受け、装着するものは装着し終わる頃には、目的地に着いた。

 時刻はもう三時。

 今頃、ハンスたちはどうしているのだろう……。

「ナトちゃん。お腹すかない?」

 車を降りるとエマがアラビア語で話しかけてきた。

 そう。

 既に俺たちは敵地に潜入しているのだ。

 鋭い目で、辺りを見渡しながら、昼食を取っていないことを思い出す。

 だが、戦場で昼食など、のんびり食べている場合じゃない。

「すいていないから、いらない」

「じゃあカフェ付き合ってくれる?私はお腹ペコペコなの」

「任務中だぞ」

 2等軍曹が大尉に向かって言う言葉じゃない。

 だから小さい声で言った。

「いいじゃないのよぉ~。エマお腹ペコペコペコリンで死んじゃうかもよ」

 くだらないことを言うエマにウンザリして「それだけ胸に脂肪を付けているんだから、三日くらい持つだろう」と言ってやる。

 エマは服の上からオッパイを持ち上げて見せて「私、ラクダじゃないから、そんなに持たないわ。ねえ行こ行こ!」

 エマが俺の腕を掴み、またもやその巨乳をグイグイ擦り付けてくる。

 周りに居た通行人の目が、俺たちに集中する。

「分かった、分かったから手を離してくれ」

 周囲を通る男たちが足を止め、俺たちを見てニヤニヤして見ている。

“いったい何なんだ、この女……”

 目立たないように気を使わなければいけないのに、これじゃ目立ちまくっているじゃないか。

挿絵(By みてみん)

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