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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Opération“Šahrzād”(シェーラザード作戦)*****
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【Invoke! Operation Šahrzād(発動!シェーラザード作戦)】

  作戦名のシェーラザードは『千夜一夜物語』の中にある物語からの引用。

 遠い昔、ササン朝ペルシャの若い王は、毎夜寝床を共にした生娘を翌朝に殺害していた。

 何人も何人も。

 そしてシェーラザードという名のお姫様の順番が来て、王と一夜を共にすることになる。

 寝床に着くとシェーラザードは、夜遅くまで王に物語を聞かせた。

 王が物語の続きを求めるが「続きはまた明日」と言って寝てしまう。

 続きが聞きたい王はシェーラザードを殺さずに次の日も物語の続きを話すようにせがむ。

 ところが物語の面白い所で「続きはまた明日」と言って眠ってしまう。

 そして、千と一夜の物語が終える頃には、王はもう生娘たちを殺すことをやめ、二人は幸せに暮らすというお話し。

 つまりザリバンのバラクを野蛮な王に見立てた作戦名。

 今は亡き義母ハイファが幼い俺に良く話してくれたお話し。

 その事を思い出しながら、エマ大尉の話す作戦内容を聞いていた。

 作戦内容は、先ず国軍がこの基地よりもバラクの潜入が予想される郊外に近い場所に、前線基地を設け、国軍は、そこから引き続き現在の作戦を継続する。

 そして我々LéMATは、昼のパトロールから外れ、夜のパトロールを行う。

 国軍と混成だった即応部隊は廃止され、三班のパトロール隊になる。

 即応部隊は郊外に常時待機するのではなく、前線基地に待機することになり、今迄よりも到着時間は若干遅れる。

「それでは、ジープに簡単な装甲板を張り付けた程度のVBL装甲車じゃ持たない」

 珍しくハンスが声を荒げた。

 確かにVBL装甲車の防御は弱いし、3人乗った状態では、狭すぎて弾薬や装備さえもまともには詰めない。

 万が一、車両を盾にして戦わなければいけない場面に遭遇した場合、ハンスの言う通り即応部隊の到着まで持たないだろうから、怒るのも無理はない。

「それは心配しないで、もう直ぐ新しい車両が到着するわ」

「ハンヴィーは止してくれよ、ありゃただのジープだ」

 ミラー少佐が言った。

 確かに米軍のハンヴィーは、室内は広いが防御力はVBLより更に劣る。

 かといって装甲兵員輸送車や機動戦闘車輌では視界が狭いうえに、反政府市民に対して刺激が強すぎるだろう。

「大丈夫よ。明日、日本から令式軽装甲機動車が届くから」

 令式軽装甲機動車というのは、もともとあった陸上自衛隊の軽装甲機動車のバージョンアップ版。

 軽装甲機動車の装甲・防弾ガラスが7.62mmクラスの銃弾に対する防御力だったのを令式に於いては12.7mm、つまり対物ライフルに対応する防御力まで引き上げている。

 つまりM82バレットのような狙撃銃にも対応する。

 それに、乗車定員もVBL装甲車の2+(1)に対して、4+(1)。

 しかも、車体上面にはリモコンでの操作も可能なミニガンも着く。

「よく、そんな高価なもの買えたな」

 ミラー少佐が驚いていたように、日本軍の使用する武器は高性能だけど、恐ろしく値段が高い。

「二両だけだけど、買って貰っちゃった♪」

「二両で約1億円かぁ」

 可愛くおどけて言うエマ大尉の後で、アンドレ基地司令が言った。

 兵器はお国柄が出る。

 兵士の命を尊重しない国は、適当に模造品を拵えて使うが、命を大切にする国は少々調達費が高くても良い物を揃える。

 その代表的な国がイスラエル、ドイツ、そして日本だ。


 翌日、エマ大尉と共に令式軽装甲機動車を受け取りにトリポリの港まで行った。

 出向いたのはエマ大尉の他にDGSEのエージェントが3人と、LéMATの11人。

 受け取ったコンテナを開けると、小型ながら堅牢な車両が入っていた。

 しかも日本製だからオリジナルは右ハンドルなのに、届けられたのは左ハンドル仕様。

 ドアを開いて中を見ると、軍用車なのに真新しいシートにはビニールもかけられていて、カップホルダーやコンセントも着いている。

 これには同行したモンタナやフランソワも大喜び、トーニなんかはお金をためて自分用に一台購入すると言い出す始末。

「じゃあ宜しくね!」

 エマ大尉がハンスに言う。

「了解した」

 いつものように、ぶっきらぼうな返事。

「さあ、みんな乗って帰るぞぉ~!」

 ニルスが大きな声で叫ぶと、誰が運転するかで、ひと悶着。

 いつもなら、運転をしたくないという選択肢なのに、今日は運転をしたいという選択肢でもめていた。

 まあ、誰が運転するにしても俺は助手席だ。

 そう思って車に近づこうとしたところ、エマ大尉に呼び止められた。

「ナトー2等軍曹は、ここに残って」

 いくら階級が上だとしてもDGSEの命令を直接聞くことはできないのでハンスを見た。

「いいぞ」と、ハンスはそれだけ言うと、一台の助手席に座って出て行った。

 それに続いてもう一台も。

 こちらのほうは、ハンスが居ないので、まるでお祭り騒ぎ。

 トーニなんかは運転しながら、俺に投げキッスまでしていきやがった。

“今度こそキン〇マを握りつぶしてやる“

「さてと、2等軍曹いいかしら?」

 そう言うと、エマ大尉は空のコンテナに入って行った。

 いや、空ではない。

 中には大きめのバッグが一つ、隅に置かれている。

 俺が付いてくるものと思って、後ろも振り向かずに一人で入って行くその姿が、彼女の性格の強さをよく表している。

 俺は、それ以外何も考えないで、後に着いてコンテナの奥に入って行った。

 俺たちが入ると直ぐに、コンテナの扉が閉じられた。

 真っ暗になった中、懐中電灯の明かりが灯る。

“計画通り”ということか。

 薄明りの中、エマ大尉が軍服を脱ぎ始める。

 下着越しにボリュームのある胸と、引き締まった体が(あらわ)になる。

 華奢なサオリとは違うボリュームのある体。

「あなたも脱いで」

 今までの軍人らしい態度から、妙に悪戯っぽく俺にも脱ぐように促す。

 従う理由も、拒む理由もないが、俺は言われるままに服を脱ぐ。

 露になった俺の体を見て、エマ大尉が近づいて来て胸を触る。

「思った通り魅力的なバストね。そして張りもある」

 エマ大尉の手は、そのまま腰からお尻に降りて行き、最後に俺を抱きしめた。

 顔が近い。

「キスして」

 甘い声で俺に言うエマ大尉に「いやだ」と返した。

 しかし俺の断る声など、まるで聞こえなかったように、エマ大尉の唇が俺の唇を塞いだ。

挿絵(By みてみん)

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