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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
232/273

【Farewell Grim Reaper⑤(さらばグリムリーパー)】

 ドーンと言う爆発音が遠く、こだまする。

 時計を見ると俺たちが脱出して2時間が経っていた。

“ヤツにしては上出来だ”

 黒覆面の男はキッチリ時間稼ぎをした。

 計画通りなら、自家発電や暖房用の燃料にも火を付けたはずだから、当分洞窟内は酸欠状態で誰も入れない。

 大掛かりな送風機などもそうそう無いだろうから、それが到着するまで内部の捜索は手付かずのままで、その間に俺たちはアサム様を遠く安全な場所に逃がす事が出来る。

 丁度渓谷にある吊り橋に差し掛かったところ。

 斥候を出して安全を確認してから、それを渡ってしまえば陸からの追手は心配せずに進めるし、その先は森が続くから逃げ遂せる目途は立つ。




 ナトーの後を追って走った。

 自動車もオートバイも走らない山岳地帯だから、追うのに手間は掛からない。

 なぜならオフロードバイク特有のブロックパターンのタイヤ痕が、走った後にクッキリと付いているから。

 崖の近くに来た時に道に出くわしたが、どうやらバイクは道を進まずに、そのまま真直ぐに進んだらしい。

 ただしこの道の所で一旦止まった事は、サイドスタンドを立てた後が物語っている。

 しかし岩場の所で、タイヤ痕が消えた。

“まさか、この岩場を進んだのか……?”

 半信半疑で岩場を進むと、そこには岩場の向こうからは見えない隠された道が現れた。

“初めての土地なのに、なぜ分かった?”

 それはナトーがグリムリーパーだからか?

 いや、そうではない。

 ナトーは、トーニが言う通り、戦略の神アテナだからだ。

 俺は出来得る限り、グリムリーパーとナトーの関連性を否定することに必死だった。





「乗って」

「乗る?このヘリコプターに?」

「アンタたちの大切な分隊長を助けに行くのよ!」

「軍曹ならハンス隊長を探しに行ったのではないですか?」

「鈍いわねぇ、騙されたのよ!」

 騙されたのは自分も同じだけど、ナトーが単身でアサムを追ったことを知った今、まだ呑気に騙されっぱなしの3人に腹が立つ。

「騙された? いったい何のために軍曹が俺たちを騙すんですか?」

「いいから乗れ!」

 訳は分からないが、事の重大さに気が付いたブラームが、キースとハバロフの肩を掴んでMi-24のキャビンに飛び乗った。

 もちろん私も、訳は分かっていない。

 ただ分かっているのは、ナトちゃんの身に危険が迫っているという事だけ。

「行くぞ!」

 キャビンの扉が閉まる音も確認せずに、機体を急上昇させた。

「一体何があったんだ?」

 空に上がった後で、キャビンからブラームが聞いて来た。

「私も何がどうなっているのか分からない。ただナトー軍曹は単独で脱出したアサムを追っている事は確かよ。そしてハンス大尉は、そのナトー軍曹を追って行った」

「隊長も1人でか?」

「そうよ。もう、何がどうなっているのかサッパリ分からないけど、2人を放って置くわけにはいかないでしょう」

「しかし、探すにしては高度が高すぎやしないか?」

「低空だとRPGの餌食になるでしょ。それにハンス大尉の居場所はPLB(Personal Locator Beacon:個人用遭難信号発振器)を、持たせているから追跡できるのよ」

「なるほど、ハンス隊長にナトーを追わせて、それを追うってわけだな」

「ブラーム、君結構冴えているね」


 ナトーやハンス隊長のように頭が切れる訳じゃない。

 だけど俺にとって、この2人は部隊でも特に掛替えのない人。

 勉強もろくにしていない俺の頭でも、この非常事態に冴えて当たり前と言うものだ。





 バイクで追跡を初めて、もう1時間が過ぎる。

 ヤザたちが、俺が抜け穴を発見する30分前に脱出したとすれば、そろそろバイクの音が聞こえる圏内に入る頃だろう。

 調子に乗って走っていると必ず墓穴を掘る。

 なにしろ今の俺は、静かに狩場から立ち去ろうとする狼の群れに向かってサイレンを鳴らしながら追いかけているのと同じなのだから。

 音に気付かれ、待ち伏せされでもしたら、一溜りもない。

 日本の古いことわざで“桂の高跳び歩の餌食 ”と言うものが有る。

 これは脚の早い桂馬はジャンプして進めるけれど味方の兵が追い付けなくなるので、調子に乗って進んでいると敵兵の餌食にされてしまうと言うもの。

 バイクで追うのは楽で速いが、それを続けていると待ち伏せに会い、大怪我をしてしまう。

 幸い風は向かい風だから、まだ敵には気付かれていないかも知れない。

 だけど、この辺りが潮時だと決めて、バイクを止めて歩いて追跡することにした。





「全員足を止めて、静かにしろ!」

「―― ……」

 気のせいなのだろうか、何かが追って来ているような音が聞こえた気がしたが、いざ止まってみると何も聞こえなかった。

“気のせいか……”

 しかし、用心に越したことは無い。

 慎重に周りの景色を確認し、1人の男を指さした。

 男の肩に下げられているのはAK-47自動小銃ではなく、SVD通称“ドラグノフ式狙撃銃”と言うヤツで有効射程距離600mで、しかも弾丸は10発のカートリッジにより供給されるから連射が出来、接近戦にも対応できる。

「おいお前、この崖の中程にある藪の陰で30分この道を見張れ。もし追跡してくる敵が居たら狙撃して殺せ」

「ヤザ様。了解しました!」

 たった20人しか居ない兵隊のうち1人削るのは惜しいが、もしも追跡者が有ったとして、それがもしもナトーだったとしたら1人くらい減っても何も惜しくはない。

 これを見逃して、奴に追い詰められればアサム様の命を守る事は困難になる。

 ――そう。

 黒覆面の男が失敗したように。

挿絵(By みてみん)

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