表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
229/273

【Farewell Grim Reaper②(さらばグリムリーパー)】

 バイクのエンジンを掛け、丘を下りる。

 直ぐにユリアのMi-24も上がり、上空を警戒する。

 洞窟に突入してヤザと対決するつもりだったが、ユリアに止められたおかげで目が覚めた。

 数々の戦場で戦い、そして生き残って来たヤザなら周囲を取り囲まれた基地と共に残るような真似はしないはず。

 特にこの基地には、ザリバンの首領であるアサムが潜んでいる可能性が高い。

 屹度ヤザの事だから、負けると分かった以上、全力でアサムの逃亡を助ける。

 洞窟基地の周囲には、それぞれ東西南北に4つの出入り口がある。

 しかし敵の裏をかいて崖の上を攻撃するための“抜け道”が存在したように、必ずこの基地には他にも隠された“抜け道”が存在するはず。

 それがあるとすれば最も安全な南側か、最も激戦になるはずの、この北側の入り口からそう遠くない所の中間点にあるはず。

 そしてアサムを逃がすために基地を抜け出すとすれば、人目に付かないように出来るだけ護衛は少人数にするはず。

 バイクを止め、一旦地図と実際の景色を照らし合わせてみた。

 丁度、敵の基地の南東部分が崖に最も近く、そこから崖沿いに逃げるルートが無人偵察機などの航空機から最も見つけにくい。

 しかし確証は何もない。

 バイクから離れて基地に近付く。

 上空では心配そうにユリアのMi-24がホバリングして、俺の行く先を警戒している。

 草が深い。

 基地の丘陵沿いにゆっくりと確かめながら歩いていると、草が少しだけ倒れている場所を見つけた。

 そして、その場所から基地の斜面を探ると、人が1人四つん這いになって入れるほどの穴に草が詰められていた。

 一見、何かの動物の住み家のようにも見える。

 だが、その穴に顔を突っ込むと、中から微かに小銃の射撃音や手榴弾の爆発音が聞こえるから、中に通じていることは間違いない。

 さっき少しだけ草が倒れていたのは、恐らくここから抜け出した者が居たに違いない。

 ある程度の者が知っているなら、もっと沢山の者が抜け出してもっと多くの草が倒れているはずだし、今こうしている間にも逃げ出してくる敵兵が居るはず。

 俺の様子を見てユリアがヘリを降ろしてきた。

 直ぐにブラームたちが、やって来たので通風孔を見つけたと伝え、ここから潜入して中の味方と合流するように命令した。

「軍曹は?」

「俺はハンスにこの事を報告する。俺が居ないと心細いか?」

「いえ、大丈夫です。ゆっくり休んでいて下さい」

「じゃあ、頼んだぞ!」

 そう言って今度はヘリに戻る。

「何か見つけたのね」

「ああ、秘密の抜け穴を見つけた」

「さすがね!」

「幸い、まだ敵は抜け出していないようだから、俺たちはここから中に侵入する。ユリア、すまないが、この事を至急応援のために降下しているはずのハンス大尉に直接伝えてくれないか?」

「無線じゃ駄目なの?」

「ああ、無線はマズイ。万が一傍受されたら、抜け穴を爆破されて俺たちが生き埋めにされる可能性もあるから、直接伝えてくれ」

「了解!」

 ユリアのヘリが地上を離れ上昇する。

 俺は秘密の抜け穴に向かって走り、中に入る前に頭上を通り過ぎるヘリに手を振った。

 少しだけ傾けた機体のコクピットから、ユリアが手を振るのが見えた。

 そして森の向こうにヘリが消えて行くのを、いつまでも眺めていた。

 ありがとう仲間たち。

 これからは俺の戦い。

 我儘を許してほしい。

 折れた草の根元を触ってみると、草の汁が既にネバついていた。

 脱出して30分前後と言うところか?

 敵にとって一番危険なのが脱出して直ぐの道のり。

 ここを注意深く進むか、急いで進むか……。

 我々の意識は既に洞窟の中だと判断すれば、急いで逃げるはず。

 ヤザは屹度、急いで逃げ出したに違いない。

 だとすれば、既に5~6キロほど遠くに居るはず。

 徒歩で道のりを探しながら追うと、追い付く前に日が暮れてしまい見失う。

 さすがヤザ。

 敵ながら、やることに卒がない。

 しかし俺はヤザを逃がさない。

 サオリの命を奪った復讐のために。

 俺は草の倒れた跡を注意深く見分けながら、バイクで追った。

 予想通り、敵は崖沿いのルートを進んでいた。

 崖に張り付いた所で、追手を確認するために見張りを置いたのだろう。

 確かに逃げる場合、追手を確認するのは大切だが、その見張りが煙草の吸殻を捨てたのでは元も子もない。

 通常ならあり得ない場所にある煙草の吸殻。

 そして、この煙草を包む薄い紙とフィルターは、俺に時間を教えてくれる。

 1日経てば薄い紙は直ぐに変質する。

 雨が降れば無くなり、夜露に合えば薄茶色く変色するし、そのどちらも無い乾いた天気ならカサカサになってしまう。

 フィルターの汚れも、時間が経つほどに汚れが広がる。

 この煙草の吸殻は、明らかに今日の日中に出たものだ。

 ここから先は、ひたすらこの崖の下沿いにある細い獣道を進めばいいだろう。

 俺はオートバイに跨り、先を急いだ。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ