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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
225/273

【Desperate situation④(絶体絶命)】

 負傷した右手が使えずに、左手一本でHK-416を器用に射撃しているジェイソン。

 左手と右足を負傷して、立っているのがやっとの状態なのに拳銃で応戦しているボッシュ。

 左足に破片が刺さった状態で応戦しているフランソワは、撃ちながら隣のボッシュに自分の拳銃を渡していた。

 左手を怪我したモンタナも、苦手な拳銃射撃を必死で敵に当てている。

 無傷なのは俺と、コンゴで怪我をしたブラームだけ。

 弾幕が薄いのをカバーするために、俺とブラームはマガジン交換の度に手榴弾を投擲して近づいてくる敵を吹っ飛ばした。

 時間にして約15秒。

 最後の手榴弾を投擲したところで、敵の突進が鈍くなったのが分かった。

 もう後続が着いて来ないのだ。

 弾の切れた拳銃をHK-416に持ち替えたモンタナが残った敵に向かって乱射を始めた。

「なんとか持ちこたえたな」

 ブラームを見て笑うと、彼もまたホッとしたのか白い歯を見せた。

「よーし皆、よく頑張った。あとは敵の残像兵を処理しろ」

 俺もマガジン交換迄撃ち続けて、直ぐに後ろの敵の対応に向かう。

 あれから20秒と少し経過している。

 そろそろ敵も、直ぐ近くまで来ているはず。

 後ろ側の射撃位置に着いた時、70m程の位置まで8人の敵兵が近づいて来ていた。

 フルオートで倒した場合、短時間に多くは倒せる事は出来るが、確実にその命は奪えない。

 後ろ側の安全を確保する場合、負傷兵でさえ見逃す事は出来ないので、単発にして狙撃することにした。

 5人を倒したところで敵の動きが止まった。

 敵は下に居るから、伏せたところで、ここからは丸見え。

 引き続き、残りの3人の脳天にも弾丸を打ち込み始末した。

「後ろは終わったぞ。前はどうだ?」

「この通り、サッパリしたモンでさあ」

 敵の脅威が排除出来たところで、久し振りにモンタナの明るい声が聞こえた。

「ちぇっ、さっき迄はアップアップだったくせに、いい気なもんだぜ」

 そうフランソワが、ぼやくと皆が笑った。

 4人の負傷者は出したものの、俺たちは、ここを守り切った。

「ブラーム、フランソワ。残存兵の片づけを頼む。ジェイソンとボッシュは少し休め。モンタナは周囲を警戒。俺は空マガジンに銃弾を装填する」

 もう銃弾も残り少なくなり、残っているのは空のマガジンと軽機関銃用の弾帯くらいなもの。

 俺は急いで空マガジンに弾を込める。

 ブラームとフランソワが残った敵を狙撃して始末してゆく。

 ほんの数分だったが、激しい嵐は過ぎた。

 と、そう思っていた。

 ブラームとフランソワの銃撃音が消え、なにか空気を揺るがすような振動が聞こえた。

「どうした!!」

「敵が最後の突進を掛けて来ました。その数約30!」

「左からは約20!」

「ジェイソン右を確認しろ!俺は後ろを見る」

「右、約20!」

「後ろも20だ!」

 100人前後の敵に四方を囲まれ、同時に突撃を仕掛けられた。

 もう誰かが撃ち漏らすだけで、ここは敵の手に落ちる。

「モンタナとジェイソンは後ろにつけ!俺が左を見る。ブラームは正面。フランソワとボッシュで右に対応しろ!」

「了解!」

 皆の声がする中、ブラームだけ声を返さない。

「ブラーム!どうした?!」

 ブラームの方に顔を向けた瞬間、俺も言葉を失った。

「隊長、どうしたんです?……」

 続いてモンタナ、そしてフランソワ、ジェイソン、ボッシュと、次々に言葉を失ってゆく。

 それは敵基地の上空に現れたMi-24ハインド。

 味方の応援が来る前に、敵の応援が先に来てしまった。

「どうします……?」

「やるしかないだろう!」

「敵のハインドをですか?」

「馬鹿!ハインドになんか叶うものか。崖の上、そして前線基地の味方のために、俺たちは最後の1人が死ぬまで目の前の敵兵を少しでも多く片付けなくてはならない……すまない。こんな所に連れて来てしまって。お前たちと戦えたことを誇りに思う」

「謝らねえで下さいよ軍曹。入隊試験で投げられた時から尊敬していまさあ」

「最初にスラム街で出会った時のインパクトは強かったが、好きだったぜ」

「俺たちもなっ」

「いい隊長の元で戦えた俺たちこそ、誇りに思います」

「すまない。最後まで生きる希望を捨てずに敵を撃て。上空のヘリは歩兵の俺たちではどうにもならんから、一切気にするな!」

「了解!」

 今度は皆の声が揃った。

 上空の不気味なヘリの音が気にならないことは無い。

 だが、今は少しでも多くの敵を排除しなくてはならない。

 俺たちが生き延びるためには、自分のノルマを確実に果たし、他の者に力らを貸せるように努めること。

 敵わない目標に捕らわれている暇は微塵もない。

 坂を駆け上がって来る敵をフルオートでなぎ倒す。

 まだ距離があるから、立った状態の敵を少しでも多く傷つけておくことを優先した。

 そして敵が伏せた所で狙撃に切り替え、大凡敵が戦意を失ったところで正面のブラームを応援した。

 ここは死体が多く、伏せた敵が生きている敵なのか既に死んでいる敵なのか判断が難しい。

 その間もヘリがゆっくりと近付いて来て、その厳つい頭を下げ射撃体勢に移った。

「全員トーチカの中に隠れろ!」

 次の瞬間にボーっという機関砲の発射音が響き、辺りは砂埃に包まれた。

挿絵(By みてみん)

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