【Rescue of Tom and Jerry②(トムとジェリーの救出)】
森の中へ入ってからは、俺とジムの2人が前を警戒しながら歩き、ゴードンは援護のため少し離れて着いてこさせた。
少しの物音も逃がさないように、少しの物音もさせないように用心深くゆっくりと進む。
聞こえるのは、まだ遠い銃声と、鳥の囀り。
捕虜にした敵の居た窪地に到着した。
ゴードンが担いでいるリュックを1つを下ろさせて、そこに埋めた。
「持っていくんじゃなかったんですか?」
「いいや、デポ(補給所)だ」
それぞれのリュックを森の3か所に分けて埋め、森の端まで来ると、低い木立の向こう側に少尉たちの部隊が進んだ山の急斜面を削って造られた道路が見えた。
敵に見つからないように茂みの陰から双眼鏡で探ると、道路下の崖から谷に向かって伸びるガレ場の渓谷を7人のザリバン兵が降りて行くのが見えた。
道の上にも10人居て、その上にある崖にも数人居る。
少尉たちと同じように道を進むと、敵からは丸見えで、隠れる場所もない。
ゴードンとジム、順番に双眼鏡を渡し敵の位置を説明するとともに、見逃している敵が居ないか確認させた。
どうやら、確認できた場所以外、他に敵はいないようだ。
ゴードンとジムのリュックをここで下ろして身軽にさせた。
ゴードンに左側の尾根に登って、安全なルートがないか偵察に行かせることにした。
ジムにはゴードンの援護として、10m間隔を開けて着いて行かせる。
その間俺はジェリーたちを捜索して見る事と、狙撃で敵の人数を割くことを伝え、2人を送り出したあと直ぐにM82の準備を始めた。
谷にまだ発砲音がしないということは、ジェリー伍長たちはまだ見つかってはいないということ。
どこかの茂みに身を隠しているのだろう。
スコープを覗いて注意深く探る。
……見つけた。
ジェリーは、意図的にここから見えやすい位置に身を隠していた。
危険を承知で、仲間が助けに来ると信じて見えやすいようにしている。
トムはその奥に居るようだが、木の枝で覆っているのだろう、ここからは確認できない。
ただジェリーの首が何度も茂みの奥に向くので、そこに居ることだけは確かなようだ。
しかし、もう敵は発見できる位置まで近づいてきている。
おそらくジェリーも、敵を確認しているはず。
確認していながら敵を撃たないのは、見逃してしまうという僅かな可能性に賭けているのだろう。
だとすればトムの方は戦える状態ではなく、且つジェリー伍長自体もどこかに怪我をしている可能性が考えられる。
ジェリーの直ぐ横を敵が通り過ぎる。
気が付かない。
その後ろからも、もう1人。
もしも通り過ぎた前の奴が後ろを振り向けば、必ずジェリーは見つかってしまう。
そして都合の悪いことに、身を潜めているジェリーが前の男を撃つためには姿勢を90度以上変えなければならず、そうすると当然隠れている茂みから音が立つ。
挟まれた状態だから、前の敵を撃てば後ろの敵に撃たれるし、逆に後ろの敵を撃てば前の敵に撃たれる。
そろそろ、こちらも限界だ。
ターゲットを前の奴に絞り、スコープを調整する。
撃ち損じた場合の猶予は殆どないけれど、M82なら500mで打ち損じることは先ず無い。
“ズドンッ!”
1発目を発射して直ぐに照準を後ろの敵に合わせ、先に撃った男に弾が届く前に、後ろの奴の予想される行動位置に向けて次弾を放つ。
俺の思惑通り、前を進む仲間が倒れたのを見て、後ろの奴はその場に身を屈めた。
500mだと、音が届くまでコンマ7秒ほど掛かる。
俺は1秒間に2発撃ったから彼も1人目と同じように、銃声を聞くことなく死んだ。
ジェリーたちに最も近づいていた2人を射殺した後は、一旦道路に出ている敵兵を射殺していった。
谷にはまだ5人の敵が降りているが、これに固着すると、相手にこちらの意図を伝えることになるから上の奴らを優先して射殺していく。
谷の下の奴らは殆ど隠れる事は出来ないのだから、ジェリーに近付かない限りは生かせておいてやる。
と言っても、ただ数分長生きが出来るだけなのだが……。




