【Attack on the back②(裏側への攻撃)】
左右に展開している敵が目的ではない。
誰かひとり迂回させて敵の側面を突かせようかとも考えたが、側面に回ったとき後ろから新たな敵が出てきた場合、対応しきれなくなり留まってしまう。
1人の時に敵に囲まれて負傷するということは、死に近づくことを意味する。
助けに行くことが出来たとしても、それでは目的が達成できなくなる。
だから俺たちは、かたまって真っ直ぐ中央を突破することにした。
敵に気付かれるまでは発砲しない。
ゆっくりでも構わないから、なるべく中央の敵に近付きたい。
夜なら容易いだろうが、今は昼。
ゴロゴロと並んでいる岩は、格好の遮蔽物となってくれるが、それを乗り越えなければならない時が一番危険な時となる。
今までは左右の敵より後ろだったから、なんとかここまで来る事が出来た。
しかしこれからは左右の敵より前の位置になるから、正面と左右の三方向から身を隠しながら進まなければならない。
そして、目の前に現れた大きな岩。
岩を右に避けて通ると右の敵から、左側だと左の敵から丸見えになる。
3人で、どうするか目を見合わせる。
戻って別のルートを探すか、それともこのまま進むか。
問題なのは、そればかりではない。
この岩が邪魔をして、その先の状況が全く見えない。
もしも無事に、この岩を通り抜けられたとしても、その先に隠れられる場所があるかも分からない。
先ず俺が這って、岩の前の様子をみることにした。
目立たないように体を小さくするために、ヘルメットとボディーアーマーを外す。
ヘルメットは音を立てやすいのでそのままにしておくが、ボディーアーマーは後で取れるように腰にロープを巻いて、その先に着けておいた。
前の状態が良いようで有れば、続いてくるようにという合図として、そのロープを引く。
駄目な場合は、俺がそのまま引き返す。
地面にあるのは土じゃなくてゴツゴツとした石。
蛇のように地面に、へばり付きながら進む俺の体を岩がゴリゴリと撫でる。
顔を右に向けても敵の姿は見えない。
俺くらいの体だと丁度隠れてしまうみたいだ。
あとの2人は俺よりでかいが、まあ大丈夫そうだ。
岩の前に出ると下が空洞になっていて、その前にも中くらいの岩があり、ちょうど隠れるのには都合が良かった。
ロープを引き、装備を取る。
着用する前に窪みのどこからか、もっと前に行けないか潜ってみる。
すると、前が良く見える小さな穴があった。
抜群の狙撃位置だ。
確認して戻ると、もう2人とも来ていた。
これからの流れを説明しようと思い、ジムとゴンザレスの顔を見ると何故か目が合わなくて2人とも視線が少し低い所にあった。
視線の先をたどると、そこは俺の胸元。
どうしたのかと自分の胸を見てみると、上着のボタンが千切れて開け、胸がTシャツを前に突き出していた。
「ぐ・ん・そ・う・は、じょせい……」
「いけなかったか……」
「外人部隊で一世紀ぶりの女性隊員って隊長のことだったんですね」
「いけないどころか、闘志百倍ですよ。こんな光栄なことはない」
そう言って、2人は俺に希望をくれた。
いや、俺の胸が2人に勇気を与えたのかも知れない。