【14:10, attack on the back①(14時10分、裏側への攻撃)】
捕虜を尋問した結果、ヘリの脅威になるのが裏側の敵が持つ、3門のRPGであることが分かった。
そこで一気に裏側の敵を掃討することにした。
掃討作戦に参加するのは俺とゴンザレス、それにジムの3人。
本当は山岳歩兵のゴードンを連れて行きたかったのだが、レイの補佐をさせるには上等兵のゴードンのほうが何かとふさわしいし、一番守らなくてはいけないのは、この輸送機にいる者たち。
だからゴードンは負傷しているレイの補佐として置いて行く。
ジムが戦車で乗り込もう、と言ったが却下した。
確かに戦力としては大きい。
しかし敵がRPGを持っている以上、被弾した際のダメージは甚大だ。
俺たちは戦車という強力な武器を失うばかりか、今迄一切敵の攻撃を寄せ付けていなかった守りに穴が開く。
敵にしてみれば、何もかもが上手くいかなくて疲弊してしまっている所に、思わぬ成功体験を得ることになり士気が上がる。
戦車は、そのまま負傷した兵に任せて正面の守りに着かせる。
必要とあれば4発ある弾のうち3発までなら撃ってもいい許可を出した。
捕獲したRPGのうち2門は持って行く。
これが戦車の代わりだ。
出かける前、捕虜にもう一度確認した。
「もしも嘘の情報なら、お前は二度と奥さんと子供に会うこともない」
捕虜の男はスッカリ戦意を失って言った。
「嘘ではない。もう戦場から離れて家に戻りたい」と。
俺は、捕虜の傍に腰掛けて、優しく伝える。
「情報が正しくて、俺たちが無事に帰国出来たら、お前もお前の家族も戦争のない国で幸せに暮らせることだろう」
男は傷だらけの顔で、優しく笑い「ありがとう」と静かに言った。
誰も戦争なんて好きじゃない。
もしも、指導者同士に武器を持たせて“殺しあえ”と命令できたなら戦争なんて起こらないだろう。
「さあ、行くぞ!」
部隊を鼓舞するため、ひときわ大きく高らかに言った。
全員がオー!と、その声に返す。
重機関銃が援護射撃を始める中、俺たち3人は裏のガレ場にとりつく。
敵がどの岩場に隠れているか分からないので、3人で援護しながら一つ一つの岩場を探す。
さっきまで狙撃銃で狙われていた敵は、岩場の奥に隠れてしまって、中々見つけるのは難しかったが、1人、また1人と始末しながら奥に進む。
一旦奥まで進み、森の前で止まりジムを残して、ゴンザレスと森の中を捜索する。
森の中に2人いた。
おそらく見張り。
RPGは持っていない。
引き返してジムと合流し、逆方向から敵を探す。
“居た!”
大きな岩の陰に10人くらい。
スコープで覗くとRPGも3門ある。
敵がまだ気づいてないので、最良の攻撃位置と、周囲に潜む敵を探した。
左横に7人、その前にも2人。
右斜め前に5人。
三方向に少なくとも24人の敵が密集している。
「左横から行きますか?」
ゴンザレスが言う。
確かに地形的には、左横の敵から攻めて行くのが定石だろう。
だが、そうするとRPGを持っている10人の集団が散らばってしまい、再捜索は打ち合いの中になるので時間がかかる。
時間がかかれば、最悪の場合、銃声を聞きつけた本体が森の中から現れるかもしれない。
そうなれば俺たちは逃げ場を失う。
「一気に行く!」
そう言って、ゴンザレスとジムに攻撃の指示をした。