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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
189/273

【4 enemy soldiers③(4人の敵兵)】

「誰だ!」

 仲間の帰りが遅いことに苛立った敵が、銃を向けた。

 裸同然の俺の姿を見て、まるで阿呆のように一瞬ぽかんと口を開けた。

 問題は奴が次にとる行動。

 撃ってくるか。

 それとも……。

 両手を前に広げ、撃たないでと、お願いするポーズをとる。

 奴は銃口を俺に向けたまま、用心深くゆっくりと近づく。

 のこり2mのところで立ち止まり、俺の周りを回る。

 もちろんその間、銃は俺に向けたまま。

「仲間は何処だ!」

 言葉は分かる。

 だが、一般的な米兵には通じない。

 だから首を横にブンブン振って、分からない振りをする。

 奴は苛立って、銃を撃つ振りを繰り返し「お前を探しに行った、俺の仲間は何処にいる?」と繰り返した。

「Help me, don't kill me!」

 俺は中腰になり、相手が撃たないようにお願いするばかり。

 もちろん演技ではあるが、この位置から撃たれると確実に死は免れない。

 奴が俺の後ろに回って、銃口で腰を突く。

 結構用心深い奴だ。

 正面やサイドから、それをしてくれれば対応できるのに、手を上げた状態での後ろからでは何もできない。

 何度も何度も突かれ、俺は「OK、OK!」とだけ返事をして歩く。

 そう、奴の仲間がいた場所に向かって。

 案内した先に散らばっているのは、俺の脱いだ服だけ。

 奴らの死体は離れたところに、片付けた。

 仲間がいないことに腹を立てた男が、俺に銃を突き付けて「仲間はどこに行った!」と迫る。

 いつ引き金を引いても、おかしくない剣幕。

「No!No! Now、そこにいた!」

 膝をついて必死に懇願するポーズを取りながら、最後の言葉だけアラビア語で答えた。

「仲間が居るのか!?」

「I alone! I alone! 」

「分かるように離せ!さもないと撃つぞ!」

「One girl! One girl!」

 人差し指を立てて言った。

 このくらいの英語は、コイツでも分かるだろう。

「あっちから来た!」

 急によく分かるようにアラビア語で言って向こうを指さすと、指の動きに釣られて、男が初めて俺から目を離した。

「今だ!」

 一瞬俺から視線を逸らした男の、銃を持つ腕を下から上に払いのける。

 打撃はさほど強くはない。

 それはAK47のセーフティーレバーを上げ、ロックを掛けるのが第一目標だから。

 ほかの銃では簡単にはできない。

 それはダイヤル式だったり、レバー自体が小さかったりするから。

 しかしAK47のセーフティーレバーは馬鹿でかい。

 スコープ用のマウントを装着していない限り、それをロックにするのは慣れれば造作ないことだ。

 上手くいった。

 男が俺をはねのけて、銃を構える。

 払いのけられて後ろに仰け反る力を利用して、足を高く蹴り上げると狙い通り銃が空中に舞い上がり、地面に落ちた。

 ロックされたレバーのおかげで、俺は撃たれることもなく、地面に落ちた銃も暴発しなかった。

 男は素早く腰に付けたナイフを取り出し、寝転んだ俺に飛び掛かってくる。

 体を回転させて避けると、再度飛び掛かって来たので今度は受け止めた。

 ナイフを持つ手首を握り、腕を逆間接に捻ると見事に手からナイフは外れた。

 普通なら、ここで終わる。

 逆間接に思いっきり捻じ曲げられた腕は、相当痛いはずだ。

 確実に筋が伸びる。

 無理に抵抗すると、脱臼することもある。

 だがこの男は、ナイフは落としたものの、捻じられた方向に上手く体を回転させて、ブリッジの体制から起き上がった。

 レスラー? 

 あるいは体操をやっている者の身のこなしだ。

 ブリッジで起き上がった男は、向きを変え俺をホールドしようと飛び掛かってくる。

 当然、寝ていた姿勢から起き上がる俺のほうが遅く、後手に回る。

 タックルの姿勢が低い!

 レスラーだ。

 レスラーに一旦ホールドされてしまっては、体重の軽い俺に勝ち目はない。

 極限まで体を小さく折りたたみ、タックルをかわすため巴投げで返した。

 上手くいった。

 投げた体制のまま後ろ向きに回転して起き上がり、倒れた男の胸にエルボーを打ちこむことも考えたが、止めた。

 この男を相手に、自ら接近戦を仕掛けるのは危うい。

 ここは一旦横に転がり、距離を取って起き上がるほうが無難だろう。

 案の定、男はまたしても起用に体を回転させて倒れずに着地し、今度はそのままの姿勢から半身に体を反らしながら後ろ向きにジャンプしてエルボーを打ってきた。

 その場で起き上がって居ようものなら、避ける間もなくまともに食らっていたところ。

 今度は俺のほうが先に立つことが出来た。

 だが、先に立ったところで状況はあまり良くない。

 この低く鋭いタックルは危険だ。

 男は余程自身があるのか、また低く構えてタックルの姿勢を取る。

 それをさせまいと、じりじりと後ろに下がる俺。

 もう巴投げは通用しない。

 今度は、もっと低く突っ込んでくるはず。

“パキンッ”

 航空機の機銃掃射で落とされた枝を踏み、一瞬バランスが崩す。

 その隙を、男が見逃さず、タックルするために低く飛び込んできた!

挿絵(By みてみん)

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