【4 enemy soldiers②(4人の敵兵)】
2人を片付けた後、用心のため、もう一度周囲を確認した。
他に潜んでいるような、新たな敵はいない。
死んだ2人を仲良く、木に寄り掛かるように並べて座らせ、口に煙草を咥えさせて火をつける。
それが終わると、俺はズボンを脱ぎ捨て2人の前に大の字に寝転がり、合図の口笛を吹く。
中東にいたとき、戦場で仲間を呼びたいときに使っていた合図。
ここでも通用すれば良いのだが。
しばらく様子を見ていると、1人来た。
直ぐに俺の姿に気が付いて、ニヤッと笑った。
「遅いと思ったら、お楽しみだったのかよ」
そう言って持っていた銃を肩にかけ、座っている仲間の肩をポンと叩く。
叩かれた拍子に、口に咥えていた煙草が落ちるのを不思議な顔で見ていたが、そのうちバランスを崩して倒れる死体を見て顔色が変わった。
その瞬間、素早く起き上がり、男に向かって飛び掛かる。
男の目がギョッと見開かれ、肩に掛けていた銃の紐に手を掛ける。
ドンと激しく男の胸に飛び込んで、心臓を一突き。
持たれ掛かる男の体を受け止め、優しく背中に手をまわし、ゆっくりと座らせ開かれた瞼に指をかけ瞑らせた。
残りは、あと1人。
この1人は情報源として連れて帰りたい。
殺さないで連れて帰る。
失敗すればこちらが死ぬ。
だから、その前に“のろし”を上げておいた。
煙が青い空に向かって高く上がって行く。
戦場に響いていた銃声が一瞬沈黙し、しばらくたって規則正しくパンパンと音を鳴らす。
これで俺の役割の一つは終わった。
あとは、ここで見つけた新しい任務を遂行して、無事に帰ることだけ。
うまくいくかどうかは、相手の出方次第。
最悪が訪れない事だけを祈るだけ。
枯れ葉と落ちた枝が多いから、相手に気付かれずに接近する手立てはない。
裸の状態からパンツとシャツだけを着て、気付かれるのを承知で、そのまま進む。
銃も持たなければ、ナイフも持たない。
もしも敵が撃ってきたとして、運よく当たらないとは限らないし、銃のある場所まで逃げ遂せるとも限らない。
全ては運任せ。
木々に隠れず、比較的見通しのいい場所を歩く。
そのほうが、早く発見してもらえる。
距離が離れているほうが、撃たれた時に生き延びる可能性は高いから。




