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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
184/273

【12:45, check the current status(12時45分、現状確認)】

 ヤクトシェルダンに乗って輸送機へと帰る。

 直ぐにゴンザレスが飛んで来て、負傷したフジワラを回収し機内へと運ぶ。

「状況は!?」

「裏に20人ほど、正面にはまだ50人以上!両方とも遮蔽物に隠れていて膠着状態です」

「レイは大丈夫か?」

「ああ、やっこさん軽機関銃を破れた外壁に引っ掛けて、器用に撃っていまさぁ」

 話しながらコクピットに向かうと、なるほどゴンザレスの言う通り、器用に撃っていていつの間にか足に重傷を負った兵士が給弾役に付いていた。

「キム大丈夫か?」

 夢中に射撃しているキムに声を掛けたが返事がない。

「こいつ、あれから2回もヘッドショットを決められて耳をやられている」

「怪我は大丈夫なのか?」

「ああ、怪我はない。その代りヘルメットを2個替えた」

 ゴードンが明るく言った。

「状況は?」

「軍曹たちが戦車の敵を排除してくれたのと、戦闘機による機銃掃射でコックピット側は人数も戦意も落ちて多少警戒が必要なレベルまで下がった。裏側に敵が入ったのは厄介だが、数も少ない上に統率も取れていないから突進してこないかぎり安全。正面の敵は依然戦意が高くて手強い」

 指揮官の問題だ。

 誰が部隊を纏めるかによって兵士の指揮は変わる。

 中東の紛争地域を渡り歩いたヤザが生きている限り、正面の敵は手強いだろう。

 俺は無線を取りジムに砲弾の残り弾数を確認した。

 残り4発と回答があったので、撃たずに待機するように言った。

 弾切れになった戦車は厄介だ。

 砲撃して来ると思うから、敵もビビる。

 ビビるから焦って撃ち、狙いも外れる。

 だが砲弾が切れたと分かると、ただの視界の悪い箱だ。

 自ずと敵RPGの射撃制度も上がる。

 弾の切れた戦車でも遮蔽物としては使えるが、大量の燃料を抱えているので、さっき俺が片付けたシェリダンⅡのように爆破されると被害も甚大だし戦意も喪失してしまう。

 使い勝手は悪い。

 だからと言って、下手に扱うことは出来ない。

 味方の兵士からは守護神のような存在だから。

 敵にも味方にも、最強のものであり続けなければならない。

 コクピット正面の敵をレイとキムに、そして一旦指揮をゴードンに任せ、その間にジムとゴンザレスと俺の3人で後部ハッチ側にバリケードを施すことにした。

 バリケードを築く前にハッチの下に潜り込む。

「大丈夫か?」

「ええ軍曹、新たに2名負傷しましたが軽傷です」

 さすがにここは狭いだけあって防備が固い。

「これから、戦車を一旦裏側の敵用に回す。そのためハッチの空洞部分が弱点になるので、そこにバリケードを築く。あと1時間足らずで味方の応援が来るから頑張ってくれ」

「OK!聞いたか皆、もう少し頑張ろうぜ!」

「よっしゃー!あと1時間たてば仰向けになれるんだな!」

「ひょーっ、そろそろ俺様のデカ物が蒸れてミミズになりかけていた所に朗報だぜ」

 陽気なのは良いが、その言葉を聞くとコンゴで俺に小便を掛けたモトリを思い出すからやめて欲しい。

 情報的に孤立すると不安になりやすいので状況報告をしたが、さすがは怪我をしていても海兵隊員。

 怪我の痛みを我慢しながら戦っているというのに、冗談を言い合って明るく振る舞うこいつらを絶対無事に基地に帰してやると決意を固めた。

 弾薬の残数に不安が無いか確認して、ハッチの下から戻った。

「さあ、バリケードを築こう!」

「了解!」

 さすがにジムとゴードンは体がデカいだけあって、重い物でも軽々と運ぶ。

 その姿を見ていると、ここにモンタナが加われば百人力なのだろうなと思い、その姿を思い浮かべると緊迫した戦場なのに不意に可笑しくなった。

 遮蔽物が完成してヤクトシェリダンを裏に引き上げた。

 戦場は膠着状態。

 あれほど攻勢に出ていたというのに、戦闘機の支援を受けてからというもの一気に戦意が喪失してしまったかのように静まりか照っている。

 いつの間にか銃声も止んだ。

「どうして敵は撤退しないんでしょう」

 コックピットに集まったとき、ゴンザレスが言った。

 空からの支援があった以上、救援部隊が来ることは分かっているはず。

 そして、その時間が近い事も。

 退却もしなければ、新たな攻勢もして来ない。

 何かを待っているのか、時間を稼いでいるのか、それとも打つ手がないのか?

 待っているとしたら何か?

 増援部隊の到着、それとも新たな兵器。

 時間を稼いでいるとしたら何か?

 本隊の撤退……。

 打つ手がないという選択肢なら、俺たちにとって好都合だが、ヤザがまだ生きているならその希望は薄いだろう。

 本来なら、やはり偵察部隊を出したいが、フジワラが重傷を負ってしまい、レイも負傷している状況では難しい。

 五体満足で戦える兵士が7人から5人に減った。

 そしてもしこの静寂が、俺たちを誘い出そうとする作戦だとしたら、待ち構えている敵の思う壺だ。

「小銃弾は問題なし。戦車用の砲弾4発、あとは手榴弾が100個以上で、極端に消耗しているのが戦車砲用、要注意レベルが重機関銃用、それ以外は今の所問題は有りません。あと武器ではありませんが戦車用の燃料はまだ2/3は残っています。以上、兵器関連」

「食料の方は、レーション(携帯用食料)は人数が少なくなった関係で1週間分ほどありますが、水の方は大凡3日分と極端に少ないのが現状ですが、節約すれば5日は持ちます。以上、食料関連」

「医療用機材の方は、消毒用のアルコールが僅かにあるのと、錠剤の鎮痛剤は未だありますがモルヒネと点滴類は有りません。また、今の所急重傷者に容態の変化はなく落ち着いています。これまでの戦闘で、軽傷者として戦闘に参加していた者のうち5名とフジワラ伍長が新たに負傷離脱しています。以上、医療関連」

 ジムとゴンザレス、それにゴードンの3人が再度調べてくれた状況を報告してくれた。

「敵の新たな激しい攻勢が無ければ、5日間は持つという判断でいいか?」

「「「大丈夫です」」」

 と3人が答える。

 敵の出方が分からなくなってしまい、今後は様子を見るしかない。

 なにも無ければ、救助部隊が到着するまで籠城を続ける。

 籠城と言っても、もうあと30分もすれば応援のヘリが近くの安全な降下地点に到着して、そこから歩いて2時間程度でここに到着する。

 今まで張り詰めていた気持ちが、少しだけ緩む。

挿絵(By みてみん)

A-10 サンダーボルトⅡ

乗員:1名

全長:16.16 m

翼幅:17.42 m

全高:4.42 m

翼面積:47 m2

自重:9,760 kg

運用重量:14,850 kg

最大離陸重量:22,950 kg

エンジン:GE製TF34-GE-100×2 ターボファンエンジン

エンジン推力:4,110 kg×2

巡航速度:560 km/h

戦闘行動半径:1,290 km

武装

固定武装:GAU-8 30 mm ガトリング砲×1(1,174発)

爆弾など約7t

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