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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Death fight! Zariban Plateau(死闘!ザリバン高原)*****
179/273

【11:05, enemy's first attack(11時05分、敵の最初の攻撃)】

「来た!」

 負傷兵がザリバンの兵士を見つけた。

 残念ながら奴らは救出部隊よりも早く到着してしまった。

 人数は大凡20人、距離はまだ300mほどある。

 恐らくこの20人は偵察を兼ねた囮。

 本体は屹度森の中で様子を伺っているに違いない。

 俺は、皆に指示するまで撃つなと伝え、コクピットに向かいレイに戦闘が始まるまでは無線を使わないようにと言うことと、戦闘が始まり次第基地に戦闘が始まったことと、半径5キロ以内に近づかないように伝えることを指示する。

 足の遅いヘリコプターでは、簡単に地対空ミサイルの餌食になるしRPGでも落とされてしまう。

 救援に来たはずのヘリが落とされたのでは、兵士たちの士気に悪影響を及ぼすし、本国から遠く離れたこの土地で消耗戦をするわけにはいかない。

 ジムが戦車の中から出すかどうか囁くように聞いてきたので「まだだ」と答えると、代わりにM4カービン銃を持ち上げ、駆けっこをする子供の真似をしてみせる。

 加勢に行こうかと言うジェスチャーが面白くて、思わず口角が上がってしまう。

 だが必要になる前に万が一怪我をされても困るので、残っているように指示すると彼はオープントップ車体からハッチを閉める真似をして、了解の合図を送ってきて俺とフジワラを笑わせた。

「本隊は、どのくらいと予想する?」

「捨て駒が20だから、少なくても200……いや、300は居るかもです。くじ運が悪い。ひょっとしたら本隊を引き当てたかも」

「本隊か……」

 なかなか、良いくじを引いたものだ。

 本隊なら、屹度ヤザが居るだろう。

「距離100で打ち始める。フジワラ、全員に初弾は単発でヘッドショットを決め、初弾が終わったら連射。あと重機関銃は次の合図まで撃たないように伝えてくれ」

「了解!」

 何も聞き返さずに動いてくれる良い奴だ。

 恐らく彼は分かってくれている。

 先方のこの20人は薬漬けだということを。

 薬漬けにされた奴らは、弾が当たっても倒れない。

 薬で痛みを忘れてしまっているから、頭か心臓を遣らないと倒れない、まるでゾンビだ。

 重機関銃でなぎ倒すほうが簡単かも知れないが、序盤からなるべくこちらの手の内は見せたくない。

 特に強力な火器は、集中攻撃を浴びやすいから、少ない戦力で見せてしまうと的になる確率が高くなるだけだ。


「距離、150!」

 スコープを覗いているゴードンが伝える。

「まだですか!」

 キムが少し興奮気味に、それに反応する。

「まだだ」

 応戦できる射手は重機関銃を止めているので20人。

 あまり早く打ち過ぎて、残してしまうと厄介だ。

 出来るだけ引き付けたいが、近付き過ぎて手榴弾を投げられても困る。

 だから100mはギリギリの距離。

 打ち漏らした敵が突進してきた場合10秒足らずで手榴弾の投てき範囲に入り、20秒足らずで侵入される。

 動けない人間を抱えているこの場合、侵入は困る。

 数人が侵入し、その対応に手を焼いている状態を見せれば、敵本隊は確実に突撃を仕掛けて来る。

 その様な状況を作ってしまえば、俺たちは一瞬で潰されてしまう。

 少ない人数で拠点を離れられない場合は、敵に攻撃の機会を与えない様に務める事が重要だ。

「救援は未だか」

「まだ何にも……」

 遅いということは、こちらの直接の声は届いていない。

 山岳地帯と言う電波にとっては地理的に不利な状況が、発信源の特定さえ困難にさせているのだろうか、それとも……。

「この敵の攻撃が終わり次第、通信を再開してくれ」

「了解」

「敵の先頭、距離まもなく100!5・4・3・2・1・0」

「指定閣員戦闘開始!」

 肩に着けたハンドマイクに攻撃の指示を送り、俺は状況確認のために双眼鏡を覗く。

 待ってました!とばかりに味方の銃口が火を噴く。

 瞬く間に10人近いザリバン兵が倒れる。

 さすがに負傷していても海兵隊員。

 腕は確かだ。

 生き残った敵の半数が怯まず突進を仕掛けてくる。

 その中には下顎の無いヤツも居た。

 ヘッドショットが僅かに外れたのだろうが、普通なら動けない重傷のはず。

 相当の量の麻薬を摂取しているに違いない。

 連射に切り替えて、数発当たっても怯まない敵にキムが焦って「こいつらカミカゼかよ!」と無駄口を叩いた。

 幸いフジワラは後部ハッチに居るので聞こえてはいないだろうが、外人部隊や多国籍軍にあって、ある特定の国を侮辱するような言動は、あってはならない。

 俺とゴードンの2人で、撃ち漏らした敵を一人ずつ片付けてゆき敵の先鋒部隊を撃破した。

 後方に生き残った2人が森へ向かって走って行くのを確認したが、彼等を撃たずにそこで攻撃を止めさせた。

 弾が豊富にあるとはいえ、敵の戦力と救援の目途が立たない今は、無駄撃ちは避けたかった。

 それに、戦意を失って戦場から逃げる兵士を打っても無駄なことは、中東に居た頃に分かっている。

 案の定、逃げ返る2人が森の傍まで辿り着く前に敵の発砲音が響き、2人は草むらに倒れた。

“みせしめ”

 正規軍と違い仲間意識の薄いテロ組織では、良くあること。

 昔ヤザが“死の結束”と呼んでいたことを思い出す。

 死から逃げようとする仲間には、容赦なく死が与えられるのだ。

挿絵(By みてみん)

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