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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Hell Battlefield(地獄の戦場)*****
162/273

【Underground tunnel and terrorists③(地下トンネルとテロリスト)】

 下手に手を出すとヤバイ。

 先ずユリアに連絡して、黄金の門公園付近の閉鎖を要請した。

「さてと、一応これで犠牲者は出ない……いや、1人だけ出てしまうか」

 そう言って手足を縛っている男を担いだまま梯子を上り、一番上で足と腰の部分を梯子の手摺に、両肘を顎の高さで15㎝幅に固定してペンチを渡す。

 固定された肘の位置が近すぎて、自分の肘には届かない。

 しかし起爆装置には充分届く。

「何をするつもりだ!」

「もう、何もしない」

「俺に爆弾の解除をさせる気か!」

「俺は他の場所も見て来るから好きにしろ、任せる。ただ爆破する時間が近くなったら騒ぐなり、泣き叫ぶなりして教えてくて。耳を塞いでおかないと聞こえなくなるからな」

「なんて野郎だ、それでも人間か!」

「運が悪かったな、お前が出会ったのは人間じゃない。グリムリーパー(死神)。おっとロシア語ではБог Смертиボーク・スミェールチだったな」

 そう言って、その場を離れ、他の場所も見に行った。

 爆弾はあと2カ所に設置してあった。

 仕掛けはどれも同じ。

 リュックの数と計算が合うから、これ以上は無いだろう。

 足音を立てずに元の場所に戻ると、ペンチでワイヤーを切る音が聞こえ、最後にふーっと言う溜め息を男が漏らした。

「ご苦労様」

 梯子を上がって、直ぐに男の腕を拘束して、体に巻き付けていたワイヤーを切り下に落とした。

 どこか打ったのか怪我をしたのか男はギャーと叫んだあと悪態をついていたが、そんなことに構っちゃいられない。

 俺は男がどのワイヤーをどのように切ったのか確認して、痛がっている男を引きづって次の設置場所に走った。

 男には自分のしている腕時計が見えるように、体育座りの格好で縛ってある。

 そうすることで彼はタイマー代わりになる。

 つまり爆発時間が迫れば、彼は騒いで教えてくれると言うわけだ。

 2つ目のマンホールは真下に男を置いて、俺が解除した。

 そして3つ目のマンホールに向かおうとすると、男の体が硬直して爆発時刻が迫っているのを知らせた。

 自分の時計を正確に男の時計と合わせて梯子を上った。

 離れる時、明らかに彼はブルブルと震えていた。

 時計を見る。

 もう1分半で3時丁度。

 残された時間は90秒。

 慌てて梯子を上る。

 爆弾処理に焦りは禁物だ、切り間違いはもってのほかだけど、力を入れ過ぎたりしてワイヤーを抜いてしまっても爆発してしまう。

 慎重に切るべきワイヤーを探る。

 あと10秒。

 ペンチを下に落とした。

 カチャンという音と共に、それを見た男が“ワーーーー”っと大声で叫び出す。

 俺は慌てて梯子から飛び降りて、縦穴から遠くに避難する。

 4・3・2……

 ついに男は小便を漏らした。

“死ぬのが怖いくせに、人を殺すような事をした罰だ”

 0・1・2・3・4・5……

 時刻が過ぎても爆弾は爆発しない。

 男は相変わらず泣いている。

 そう。

 爆発するはずがない。

 既にワイヤーを切って、爆破しないようにしてある。

 ただこれを仕掛けた男を懲らしめるために、音を立てずにワイヤーを切って解除し終わった後にワザとペンチを落とし、まるで解除に失敗したかのように逃げて見せただけ。

 ほどなくして警察を引き連れたユリアが来た。

 拘束のために巻かれていたワイヤーは外され、その代り手錠が掛けられた。

 立たされた男は「ああ神様……」と泣きながら警官に抱きついていた。

 神様を信じるなら、その神様が行うような行動をとればいい。

 人々の平穏な暮らしを願う神であれば、決してジハード(聖戦)なんて望まないことくらい分かるはず。

 しかも相手が民間人だなんて、もしもその中に神様に守られるべき人が居るとは気が付かないのか。

「ニャー」

「見つけたのか、その猫」

「うん、さっきここに来る途中で」

「良かったな」

 俺は猫の頭を撫でた。


 地上に戻ると、警戒のために張られたロープの傍に、さっきの子供たちが居たのでユリアが優しく子猫を渡してあげた。

「ねぇ、お姉ちゃん。何があったの?」

 子供の1人がユリア聞いた。

「悪いおじさんがね、この子を奪おうとしていたのを、この背の高いお姉さんと警察の人が助けてくれたのよ」

「ふぅ~ん、お姉ちゃんありがとう。警察の人にもありがとうって伝えて下さい」

「大切に育ててあげてね」

「じゃあ、お姉ちゃんたちありがとう」

 そう言うと子供たちは家に帰るのか、向こうに行ってしまった。

挿絵(By みてみん)

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