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グリムリーパー  作者: 湖灯
*****Hell Battlefield(地獄の戦場)*****
116/273

【Hell door②(地獄の扉)】

 村の方では激しい銃撃戦が続いていて、俺たちは丘の上から、その援護をしている。

 そしてブラームは高い木の上に登って、周囲の警戒。

 ここからの援護射撃は、かなり有効的で、村に近付こうとする敵は隠れる所がない。

「ざま―見やがれ!」

 射撃の上手くないトーニに遠距離射撃をさせるのは弾の無駄だから、仕掛けた爆弾の世話をさせていて、なぎ倒される敵兵を見ながら燥いでいた。

 しかしこう派手に撃っていては、いくら敵だってここの重要性に気付いて作戦を変えて来るのは目に見える。

 次第に村への攻撃は下火になって来た。

「たいしたこたぁねえな」

 トーニだけじゃなく、隊員の殆どが、そう思っているに違いない。

 だが、次に叩かれるのは俺たちの番。

 ハバロフに無線でビバルディーを呼び出させた。

『高みの見物部隊が何の用だ!』

 相変わらず口が悪い。

「迫撃砲の照準を、この丘の近辺に変えられるか?」

『どうした、弾が飛んでこないので寂しいのか?』

「いや、敵の次の標的は俺たちになるはずだから、迫撃砲で援護を頼む。座標は追って連絡する」

『お前らたったの10人で守り切れるわけねぇだろう。迫撃砲の援護を受けるより小隊長に応援を頼め!』

「駄目だ、応援が上がって来るまで余裕がないかもしれないし、応援を受け入れるほどこの陣地は広くはない。まして応援が来たことに感付かれると、今度はそっちが手薄になる」

『ちきしょう。手間の掛かる奴らだな。だがこの暗がりだ、間違って砲弾が陣地を直撃しても文句は言うな!』

「ああ、信頼している」

 無線を切った途端、ブラームから敵接近の知らせが入る。

「どこだ!」

『前方300.丁度、爆弾を仕掛けた辺り!』

「人数は?」

『多数!』

「多数じゃわからん!大凡の数を言え!」

『100……いいや200は居る』

「爆破させるか?」

 隣に居るトーニが起爆スイッチを握る。

「待て」

 ブラームに50通せと指示をした。

 50通して、あとに続く敵を爆弾と迫撃砲で叩く。

 そうすれば最初に通った敵は、しばらく孤立する。

 運が良ければ、そのまま孤立してくれるかも分からない。

 ハバロフに迫撃砲の指示を出すように伝えた。

 先ずは爆発した地点の、やや後方を狙えと。

 あとは成り行き次第で座標を支持する。

『50超えました!』

「ブラーム、一旦木から降りて安全を確保しろ。安全が確保でき次第爆破するから連絡しろ」

『了解!――降りました』

「トーニ、やれ!」

「待ってました!」

 トーニが起爆スイッチを入れると、真っ暗な空を焦がすように青い炎が上がりドーンと言う爆発音が響く。

「全員頭を下げろ!」

 俺たちの頭上を爆風と衝撃波が通り過ぎた。

「よし、全員射撃を始め! ブラーム、今度は高い所までじゃなく木の幹の太い所まで上がって見張れるか?」

『大丈夫、了解した』

「ハバロフ、砲撃座標320の77!」

「了解!」

 村に白煙が上がり、直ぐに指定されば場所に正確に砲弾が落ちて炸裂する。

 モンタナのM249ミニミ軽機関銃が、タタタと軽快な射撃音を上げる。

 フランソワが銃の先端にAPAV40 ライフルグレネードを装着して発射する。

『敵の後方、右翼に回り込もうとしています。数約50、座標300の50』

「ハバロフ、迫撃砲280の52!」

「軍曹!前方の敵から約10人左側斜面を下りました!」

「ブラーム、そこから確認できるか?」

『ここからは丘の陰になって確認できない!』

 俺が動ければ問題ないのだが、今は指示に集中しなくていけないので、ここを離れられない。10人相手になると3人出さないといけないが、今はそんな余裕はない。

 クソ―、なんでこんな時にハンスは居ないんだ!

「ハバロフ、ビバルディー軍曹に重機関銃の援護を要請!座標150~200の-20!」

 直ぐに受けてくれれば、おそらくその座標、遅ければもっと近くてヤバいことになる。

 俺の心配を他所に、直ぐドンドンドンと12.7mm独特の重い発射が響いた。

 文句を言っていても、さすがにやるときはやるな……。

 12.7mmに狙われたら、木の陰に隠れても意味がない。

 その撃ち出された弾丸は草や木をなぎ倒してもなお強力な殺傷力を持つ。

 約20秒の連続射撃のあと、トーニとミヤンを仕上げに当たらせた。

「敵兵力が削減されていなかった場合は交戦せずに、直ぐ連絡して戻って来い」

「了解!ミヤン行くぞ!」

「はい」

『敵右翼、並びに後方の本体、退却します!』

 これで残りは最前線に孤立した敵だけ。

「モンタナ、あと何人くらいだ?!」

「10人居るか居ないかだと思います」

「よし。では、一旦射撃を止め、敵の反撃の意志を確認。反撃もしくは前進してくるようならまた撃て」

「逃げたら、どうします?」

「逃げる敵も撃て」

「でも、戦う意思は」

「戻ったら、また戦いに加わる。だから降伏しない限り殺さなければならない」

「分かりました」

「俺はトーニたちを見て来る」

挿絵(By みてみん)

ブローニングM2重機関銃

1933年にアメリカ陸軍で正式採用され、今も世界各地で採用されている万能重機関銃です。

自衛隊では「キャリバー50」と言われて戦車などに搭載されています。

口径12.7 mm

銃身長1,143 mm

ライフリング8条右回り

使用弾薬12.7x99mm NATO弾

装弾数ベルト給弾(1帯110発)

作動方式ショートリコイル

全長1,645 mm

重量 38.1 kg(本体のみ)

発射速度 485-635発/分

銃口初速887.1 m/s

射程 2,000 m(有効射程)

6,770 m(最大射程)

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