魔力
小柄な犬が駆け抜けている。
颯爽と
雑多な人の間を掻い潜り
時には授業中の教室を横断し
階段を下りたり上ったり
ここはネムアール魔術学園
ランぺ王国が誇る、世界最高水準の教育機関だ。
そしてなぜ犬が駆け回っているかというと逃げているからだ。
なにからにげているかというと妖精からだ。
ついには門のすぐ手前まで。
「待ってぇーお願いだから!」
それでも犬は止まらない。
少女の声を聞いた門番が何事かとみると全力で疾走している犬の後ろから服がちぎれていたり濡れていたりほこりをかぶっていたり、およそ数時間前まで綺麗であっただろう制服は見る影もないくらいな制服のまま息を絶え絶えに走ってきている少女がいる。
門番は止めてあげたいが相手が魔犬なのでどうしようもない。
魔犬それは使用者の魔力に比例して召喚できる使い魔の一つ。
主な能力といえば半径100キロのにおいをかぎ分けられるとか、強力な竜に匹敵するほどの咆哮、長距離運搬用など人間の生活には欠かせないものになっている。
ちなみに市販されている魔術紋章を買って魔力を流せば誰にだって召喚することができる。
だが魔犬と人間が戦うとなれば話が違う訓練された魔法兵にならば倒せるだろうが一般人のそれもアルバイトで門番をやっている人を戦わせるというのはいささか酷だ。
「気を付けてな!」
「は~い」
というわけで今日も魔術失敗少女を見送るのだ。
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少女は走っている
それはもう見事な不幸ぶりだ。
時には狭いけもの道を抜け
二階から水がぶっかけられても走り
前に柱があるのにもかかわらず焦りすぎてぶつかり、
もう一度言いたい見事な不幸ぶりだ。
ここはランぺ王国、王都テンテッシの住宅街一つ
魔犬を追って走っている少女をみてある人は、きれいな子だ!とまたある人は頑張んな!と、そしてあるひとは姫様!またかよ!とこの町では日常茶飯事なのらしい。
「待って!。」
まぁ姫様は必至だ。
人に害を加えられないように魔術紋章は貼ってあるがほおっておいたらいつ暴走してもおかしくはない。
普通そんなことはないがこの不幸な妖精は異常に魔力が多いのだ。そのため魔力制御未熟なお姫様は9割がた失敗する。
魔力制御の完全な習得のため使い魔の魔術を練習しているがこのありさまである。
やっとの思いで魔犬を捕まえて抱えて帰ろうとしたら気づいたら見たことのない通りに出てしまっていて細い路地が続いているだけでどっちからきたかわすれてしまっていた。
「んもー!どうやって帰るのよ!。」
と困り果てていたらフードを深くかぶった人が歩いてきた。
(お母さまからは知らない人についてっちゃだめといわれてるけどこの際だからしょうがない。!)
「すみませ「ヴぁん!バン!ガウルルルルルルルル!」
「どうしたの急に!」
突然フードの人が近づいた途端威嚇し始めたのだ。
「ちっ・・・・これだから高位の魔物は。」
「えっ。」
「失せろ。」
フードの人が言ったとたんに魔犬が灰となって消え去った。
「あ、あなた何者なんですか。」