2話 「不親切な神様」
目が覚めた。
頭がズキズキするし、気分も良くない。
それもそうだ、目覚めたのは布団の上でも、石畳の上でもない、汚ならしく薄暗い牢屋の中だったのだから。しかも妙に静かでなかなかに怖い。
手足には真っ黒で数キロはあるだろう拘束具がはめられていて、肌と擦れてヒリヒリする。腰回りのこれまた大きい拘束具は壁に鎖で繋がれているようだ。
今度はなんだって言うんだよ
ああそうだ思い出した...
訳のわからん化け物に出くわして、逃げたらぶっ飛んで..多分頭打って気を失ったんだろう。そうならばこのズキズキもその時のダメージの可能性が高い。
ついでに言うとやっぱりここは異世界だ。
あんなやつあっちにいるわけがない。
ああ思い出しただけで寒気がする。
ひとまずこの状況は置いておいて、あいつに食べられず殺されずに生きていることことを喜ぼう。
「―――――xuagjxjaguxhdhs」
俺はここでようやく牢屋の前に地べたに座っている男がいるのに気がついた。牢屋のなかに閉じ込められた俺に向かってなにか話しかたようだがうまく聞き取れなかった。
何を話そうか一瞬戸惑った、
なにしろこの世界の住人とのファーストコンタクトだ。慎重にいかねばなるまい。とは言っても何から話そうか、敵意がないことを示すとか、助けを求めるとかいろいろあるけど...
ああもうわかんないし今一番聞きたいこと聞いてしまえ。
「すいません..ここはどこですか?」
その言葉を聞いた瞬間、目の前の細身の男は勢いよく驚くようにして立ち上がった。
あれ俺なんかまずいこと言ったかな。牢の中だから明かりもなくて表情が読み取れない。なんでもいいから返事ください。
「Hdiahjxkzha...jskhsihahdjd?」
まただ、また聞き取れなかった。
ああ..わかってしまった。よく考えればあたりまえの事だ。なんの影響か分からないが異世界へ行けば、その世界の人々と現世にいた人々と同じように意志疎通ができると刷り込まれていたんだ。
日本語じゃねーーー!どうしようか
英語は?高校2年の英語力なら...
と一瞬と思ったが、ここは異世界、どの言語もここでは役立たずの道具であろうことに気づき、思わず溜め息がでた。
そうこう考えている間に、その異世界人はコツコツと音を立てて、牢の前からどこかへ行ってしまった。
詰んだかもしれない。下手すればこのまま獄死、あるいはもっと恐ろしいことが待っているかもしれない。異世界へ来て言葉が通じなかったときの対処法に関しては妄想したことはない。なにかないか...
思い出した。
異世界へ飛ばされる場合には2つあるのだ。
大抵は神である送り主が接触してくる場合とせずに放り出される場合。俺は今後者である。この危機的状況、まさに神頼みだ。
拘束されて手は合わせられないので目を瞑り心のなかで必死に唱える。
お願いします。出てきてください。
出てきてください。
このままじゃ死んじゃいますよ?せっかく送ったのに死んでもいいんですか?
.........
「ふっ....君やっぱり面白いね。出てきたよ。」
来たぁぁ、どこからか声が聞こえてきたが姿が見当たらない。直接脳に話しかけてくる系か、なんか気持ち悪いな。でもよかった神は日本語対応のようだ。
てか軽いな、ホントにこれが神なのか?
心の中で呟いた。
「聞こえてるよ!神に対して失礼だな。敬われることしたわけじゃないけど。で、なんの用かな?あんまり干渉しないつもりでいるんだけど。」
「勝手に連れてきて、言語も一から習得してくださーい。はちょっと理不尽だと思うんですけど。あと、連れてきた理由とか、ここがどうゆう世界だとか、できればすべて教えてください。」
「だから不干渉のつもりだって...
じゃあこうしようか、ここの言葉を使えるようになるけど、君が言ったことには答えない。もしくはそれに答えるけど、言語能力は与えないか。」
くっ....非常にいやらしい。
だがしかし答えは決まっている。ここで一生過ごすなんてごめんだ。優先すべきはここから出ること。
「言葉で...」
「了解。じゃあこれでおしまい。
またすぐ来るさ。じゃあ異世界生活楽しんでね
こっちも楽しませてもらうからさ。」
もとの静寂に戻る。
本当にあれがいままで人類が信じてきた神という存在なのだろうか。いやきっと違うあれが預言者たちに信託を与えたとは考えれば難い。
取り敢えず、言葉が通じるようになっただけでかなり救われた。依然、まずい状況なのは変わらなず、本当はここからが重要だ。
にしても不干渉って言っておきながらまたすぐ来るって矛盾してるじゃないか。
そんな感じで振り返っていると先の男が再び戻ってきた。こんどこそはここから出してもらえるように頑張らなければならない。
戻ってきて同じようににして檻の前に座っている男にすぐに話しかけた。
「すいません...ここから出してもらえませんか?」
男は一度目と同様の反応を見せた。
まさかまだしゃべれるようになっていない?
そんなことはなく、男の口が開いた。
「お前話せたのか...初めて見たな話せるやつ。これは貴重だ。少し話がしたい。」
それから30分ほど話しただろう。
話せるやつとか貴重だとかの意味は分からなかったが、
どうやら俺は目の前の男の国と敵対している国のスパイ的なやつだと思われているらしい。なるほど、それで拘束がきついわけだ。
ただ予想外だったのはいくら自分が何者か説明しても理解を示してくれなかったことだ。
あくまで予想だがこっちの世界には異世界という概念がないのではないだろうか。
「あ、いい忘れていた。お前、このあと拷問待ってるよ。」
「....えっ......」
嫌だ帰りたいいいいいいい
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