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篭の酉  作者: らいのべーる
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 そしてバーベキューをした日から俊の姿は見えなく由美は唐津に連絡をいれた後、警察へ捜索願いを届けだした。圭人ら従業員は誰一人として口を閉じていた。


 その日もいるはずだっ俊を思いながら圭人らは仕事に打ち込んでいた。


「ひゃひゃひゃひゃ なんだなんだ 居なくなった奴のこといつまでも考えてたってしかたねーだろ 」


 蒔はいつも通りの口調で場内を歩き回り笑っていた。皆は蒔が空気を変えようとしているのかと思いながらも、その声を聞かないように我慢していた。そんな姿に躊躇いもなくこう言い放った。


「死んじゃったりして ひゃひゃひゃひゃ」


 そう言葉を吐くと高々と笑い始めた。それを聞いた寛が工具を投げ捨て蒔に殴りかかった。圭人は口を噛み拳を握った。


 工場のコンベアは寸断する作業に玉突きを起こし、鉄型枠がガタガタと揺れた。


「てめーな ふざけてもそんなこといってんじゃねー」


 寛は悲しくも思ってしまうその感情に蒔の顔を一発、二発と殴り飛ばした。蒔は蒸し庫の扉に倒れるように飛ばされた。


「俊の野郎 どこ行ってんだ」


 寛は倒れる蒔を見下ろしながら言葉をはいた。


「死んじゃったりなんか しないですよね?しないですよね?」


 圭人は二人に叫ぶように聞いた。しかし二人は答えなかった。それは場内で働く誰もが知りたかった答えだったが、誰も口を開く者はいなかった。



 ー修業 終了 明日のために 

  今日も一日 お疲れさまー



 静まり返る場内に終了アナウンスが鳴り響いた。しかしその場にいる誰も帰ろうとはしなかった。


「なんだ まだ帰ってなかったのか もうアナウンスは鳴ったぞ」


 動くに動けない場内に唐津は入ってきた。蒔はゆっくりと立ち上がり「終わりだ終わり」と殴られた頬を触り唾をはき帰ろうとした。


「ちょっと待て 蒔 お前に電話だ」


 唐津は渋い顔をしながら事務所を指差した。蒔は「あ?」と唐津をみた。


「、、、警察からだ」


 蒔は一瞬強張った面持ちに高々と笑った。


「警察が俺にか?ひゃひゃひゃひゃ」


 笑いながら事務所に向かう蒔をよそに、圭人らは唐津の回りに集まった。


「国崎が亡くなった」


 唐津はそう皆に伝えると事務所へと戻っていった。


「え、、、だって国崎さんて、、、」


 圭人は不意に口にだし、事務所へ体の向きを返ると矢田前が腕をつかんで止めた。圭人は腕を振り離そうとしたが目の前を寛がふさいだ。


「圭人、、何かしってるのか?」


 寛は矢田前に腕を離させ、圭人の肩を掴んだ。圭人はその場で座り込み虚ろな表情で今までのことを話した。


「なんで黙ってた?」


 寛は圭人に怒鳴るように聞き、矢田前は事故の事を思い返し唖然とした。


 そして全てを聞いた場内種の人間は事務所へと詰めよっていった。


「社長 蒔きは?」

「知ってました?国崎のやつ、、、」


 唐津は皆が来るのをわかっていたかのように何枚もの申請書を机の上に並ばせていた。


「いったい何故、、」


 唐津は初期からいる国崎に聞くように呟いた。


「蒔さんは、、、蒔さんはどこいったんですか?」


 頭を抱えこむ唐津に圭人は聞くと、小木曽が帰りましたよと呆然と伝えてきた。矢田前と寛はすぐに事務所を出たが、蒔の姿はどこにもなかった。


「、、なら 俊さんは?俊さんはどうなってるの?」


 圭人は混乱し叫んだ。


「どこに?どこに?」


 矢田前は圭人を落ち着かせるように側により、寛はドア越しに手をかけた。


「俊の 俊の車はどこだ?」


 寛は根間に従業員全員の車種ナンバーの控えを出させ、運転種の従業員全員に呼び掛けた。


 そして一週間後、河川敷の駐車場で車は見つかった。後部座席下に俊の携帯も落ちていた。


 遠くから警察と救急車の緊急音が鳴り響いていた。


 




 蒔は電話を受けた後車に乗り不適な笑みに我慢しきれなかった。


「これで これで 俺は自由だ」


 バーベキュー当日、蒔は白々しくも警察に電話をかけていた。それも犯行時を踏まえ、発見される事を前提に事件性を伝え相談していた。電話をする場所、時間、身分と調べあげられそうなものには全て偽りを列べ、自分には降りかからないように、自分の手を汚さないように。そして蒔の思い描くように事が運んだ。


「全ては金 全ては自分 完全犯罪 見つからなければ 全て勝ち なんてな ひゃひゃひゃひゃ 兄ちゃん そうなんだろ?」


 国崎は蒔が弟だと知った時、今までの憎しみの感情が今直ぐにでも殺してやう沸き起こった。がしかし、一度や二度やったところで国崎の生活も気分も満足はしない。それなら全てを弟のせいにして最後に殺そうと、思い付く限りの犯罪に手を汚していった。しかし、蒔はそんな兄国崎の思惑など手に取るようにわかっていた。それは犯罪者としての勘がそうさせているように、国崎が手をつけようとする犯罪事には全て目を付けていた。ネットでの募集、犯行を行う人材、それら全て国崎の思い描くように手をうっていた。そして振り込まれる銀行もそれ相応に見当を付けていた。兄弟という立場を利用し、判も住所も全て用意しそれらを頼まれたと依頼状と共に受け渡す。


 そして、国崎と蒔が俊の動きを察知して共に探り合うように見ていた。


 高らかに笑う声が鳴り渡る中、蒔の乗る車の前に一台の車が止まった。笑う声に口を閉じ動く影に息を潜めた。黒いどかじゃんを着た何人もの人間が降り、あたかも現場の帰りを装うように降りる姿にその場を立ち去ろうとエンジンをかけた。


「待てコラー」

「逃がすんじゃねーぞ」


 エンジン音とともに蒔の車に襲いかかってくる男達。それはまさに組合員の男達だった。蒔は瞬時にハンドルを切り返しアクセルを踏み込む。が、ボンネットの上に、車の前にと挟み閉じ込めるように遮る群れからは逃げられることは出来なかった。そして数週間後、新聞に小さく訂載された。


 ー身元不明の男性 飛び降り自殺か?ー


 その蒔の知らせは唐桶工務には届かなかった。

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