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篭の酉  作者: らいのべーる
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 蒔と国崎は河川敷とは違う場所に行き、俊を降ろした。


「もし何か言いたいのならおっしゃってください 何でも話しますよ?」


 手足を後ろで縛られ、口をテープで塞がれた俊。


「はい?何ですか?聞こえませんね 致し方ありませんね」


 何も出せない状態の俊に国崎は溜め息をもらした。


「ひゃひゃひゃひゃ もう俊さんともお別れだね?でも安心しろや お前の好きな圭人も直ぐに行くからよ」


 蒔は国崎の横から俊の腿を狙い鉄パイプを振り下ろした。高速道路と電車の走る高架下の狭いプレハブでは外には響く事がなかった。痛みに耐えるように声をあげるも、塞がれた口では唸ることしか出来なかった。


「良いよその目 その目だよ ひゃひゃひゃひゃ  一つ聞かせてやるよ」


 蒔はそう言うと懐かしむように話始めた。俊はずきずきとする痛みに耐えながら聞いていた。床には大量の汗と滲む血が広がっていく。


 国崎は金の工面にまず吉葉の貯金を狙った。それは吉葉が溜め込んでいるという話がきっかけだった。しかしどう奪うかという問題に頭を悩ませていた。そんなある日電車で聞いた完全犯罪という言葉に、吉葉を使って金を産み出せないかと考えた。まず吉葉に保険金をかけ、ネットにて募集をかける。それは この人に僕の娘を奪われましたと強姦されたと偽りその恨みをはらしてはくれないかというものだ。命があるなし関係なく事柄が起きればその都度入ってくる契約だ。それは仕事上における損害補償金制度のような一種の保険にだ。吉葉を一つの商品として保険をかける。そしてそこにもう一つ別に寄付金という名目で金を集めようと試みた。それはどこどこへと募る寄付を自分達でもと、寄付が集まり次第そこへ振り込みますという、なかば仲介者のような立場でサイトを作った。しかし寄付金は思うように集まることは無かった。だが、吉葉の一件は見事にはまった。金を目的とした人間は、金のみに執着する分余計な事を考えることはしない。ただ単純に遂行していくだけであり、それは自ずと達成されていく。そして当の国崎はのうのうと家で笑っていた。


 町川の時も同じだった。町川が施設上がりという事に吉葉と同じように仕向けようと、町川の生い立ちに結びつけるように企てた。


 僕の親を探しています。助けて下さい。何でもしますと。そしてそれと同時に寄付も募った。


 案の定失敗となるが国崎は町川の容姿に目を止め、その専門性の高いサイトに写真を載せて募集をかけた。


 何でもします。貴方の好きなもので遊んでください。


 金額による差別化をはかり、値段により返事を返した。主に盗撮、視姦を目的とした試みだった。それは趣向が狭すぎるもの故に応募は少なかったが、予想以上に成果があった。国崎は味をしめどんどんとエスカレートしていくにつれ町川がそれに気づき始めた。国崎はそこに最後の募集をかけた。


 苦しむ顔をみませんか?


 ぞくぞくとする罪悪感と、やらせという楽観的な思考のもと多大な応募があった。国崎は町川を呼び、ある飲み物を飲ませ車に乗せた。ゆっくりと坂を下るように車は降りていき、川へと飲み込まれていく。ドライブレコーダーと盗聴用機器、そしてカメラを設置し実行に及んだ。


 矢田前の事故は想定してたよりも複雑になったが、それでも国崎は儲けた。あの日矢田前が行こうとしていた場所は国崎が作った架空の現場だった。商談した仕事として会社を作りそこへの損害を得ようとした。架空の会社として使ったのが町川のいた芳正運送。国崎は社長と共に芳村のことは知っていた。そしてその会社が、名前だけ残っていたことを知っていた。そして実行に移し金を得るとその会社を潰した。被害者が出たのは予想していなかった。




 国崎は狭いプレハブ内でうーうーと唸る俊の声に苛つきを見せ、血の流れる足を踏んだ。奇声のように唸る声は走る電車の音に欠き消されていく。


 蒔は唸る俊のテープをはがし、何か言いたいことあるか?と聞いた。


「お前らは間違ってる 間違ってるんだ」


 蒔はその言葉にテープを張り戻し俊の腹めがけて足をけりこんだ。埋もれるように沈む足は俊の肋をみごとに打ち込み、鈍い音を響かせ骨は折れた。声にならない激痛が俊の体を走り、どくどくと流れる血が床一面に広がっていく。


「ひゃひゃひゃひゃ 俺もそう思う」


 蒔はそう呟くと、隣にいる国崎の顔めがけて鉄パイプを振りかざし殺した。


「そうだよな 俊さんの言う通りだ 間違ってたんだよな 兄さんは」


 目の前で倒れる国崎。俊は愕然とそれを眺めるしかなかった。


 蒔は倒れる国崎を見つめ「兄さんが悪いんだ」と悲しい目を作り、国崎を車に運んだ。俊はその姿に意識を失った。



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