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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪魔が涙を落としたら……

作者: クロクル

お久しぶりです。私は生きてます。

久々なので色々と至らないところもあると思いますがよろしくお願いします。

あるところに、とても変わり者な悪魔がいました。


 その悪魔は魔界でも最強と言わしめる程とても強い力を持っていました。

 それにも関わらずその力で何をすることもなく、それどころか自分が悪魔であることを隠し人間の手助けをしたり、人と一緒に生活したりするとても人間が好きな風変りな悪魔だったのです。

 しかし、悪魔はそれだけでは満足できず、とうとう自らも人間になりたいと願いだしました。

 が、もちろんいくら探してもそんな方法は見つかりません。



 そんなあるとき、悪魔はある噂を耳にしました

それは『悪魔は涙を流せば魔力を失う』という噂でした。



 魔力は悪魔にのみ宿っており、それを失うことは人間になることと同義です。

 悪魔はその噂を聞き、「それが本当ならば早速試さなければ……!」と悪魔は嬉々として涙を流そうとして、あることに気づきました。

 それは涙を流す方法が分からないということでした、思えば今まで涙を流すような出来事もありませんでした。


 悪魔はこれはマズい、とまず涙が流れる理由知るため、人の書物で調べることにしました、そして人は主おもに痛いときと悲しいときに泣くことがわかりました。

 悪魔は悲しいという感情がよくわからなかったのでとりあえず痛いという方法を試してみることにしました、よく人間が痛がっていたのでそっちは知っていたのです。


 痛いと思うにはどうすればいいのか考えて、一番手っ取り早い方法は魔物の攻撃を受けるという色んな意味で危ないものでした。

 思いついたことを試すため悪魔は近くの森に行きました、少し歩くとゴブリンが出てきて攻撃を受けようと悪魔はその場で棒立ちになりました。

 ゴブリンは鳴き声をあげながら手に持った鉈や棍棒を悪魔に向かって振り下ろしましたが、悪魔は痛いと思うどころか傷一つ付かず、むしろゴブリンの武器が壊れてしまいました。

 がっかりした悪魔はゴブリンたちを焼き払い今度は山に行きました。



 山にはドラゴンが住んでいて、悪魔はこれなら痛い思いができるだろうと少し勘違いしそうなことを考えていました。

 山に入ると、早速ドラゴンに遭遇しました、どうやらドラゴンは縄張りに入った悪魔をあまり快く思っていないようですぐさま攻撃に移りました。

 口から炎を吐き、硬い爪を振り下ろし、鋭く大きな牙が生え揃った口で噛みつく……悪魔はこれならと期待に胸が高鳴りました。

 が、悪魔の思惑と期待はまたもや外れてしまい、炎は熱さを感じず爪と牙は悪魔に当たった瞬間砕け散ってしまいました。

 またもがっかりした悪魔は、ドラゴンを拳で胴体を貫いて殺し、別の場所へ移動しました。



 その後も悪魔は様々な場所を訪れては自分に『痛み』を与えてくれる存在を探しましたが一向に現れませんでした。

 やはりダメなのか……そう途方に暮れ、人間に化けて日課になっていた人間観察がてらとある町の酒場で酒を飲んでいたある日、一人の少女と出会いました。

 その少女は酒場の看板娘らしく、とても元気の良い明るい女の子でした。



 ——なに辛気臭い顔してるの、せっかくのお酒なんだかた明るく飲んで嫌なこと忘れなきゃ!——



 女の子はそう言って悪魔に酒を出しました。

 彼女の言葉に悪魔は人間とはそんなものなのかと少女の言う通りにしました。

 それから少女は悪魔のことが気にしていたのか時間が空くと度々話しかけてきて、少女一人に興味を持ちました。

 悪魔は気づかぬうちに少女に惹かれているのでした。



 そのことを自覚した悪魔はなぜそうなったのか、その飽くなき探求心がますます少女に興味を抱かせました。

 その日から悪魔は涙を流す方法は一旦横におき、殆ど毎日少女の元へ通うようになりました、その感情が何であるか気づかずに……。

 酒場は色んな話しが聞けるところ、別に誰かと話しをしていなくても誰かが話しかけ、人間が好きな悪魔は笑顔で応じ、気のいい酔っ払いたちは更に話し、そこに少女が笑顔で混ざったりと。


 ——森に増えてたゴブリンがいきなり元の数に戻ったって。どうしたんだろうね?——

 ——山のドラゴンが急に姿を消して、近くに住んでる人たちは大喜びなんだって!——

 ——火山に住んでたサラマンダーの主ぬしが死んでるところが見つかったんだって。主を倒そうって人たちがっかりしてたよ。——

 ——隣の国との戦争が酷くなってきてるらしいよ。旅人さんも早くここから離れた方がいいよ?私たちは大丈夫!ちゃんと避難する場所があるから——

 ——海で悪さをしてた海賊たちの船がひっくり返ったんだって、きっと神様が怒ったんだね。——


 悪魔に概ね心当たりあるような内容でしたが本人は覚えていません。

 色々なことを笑ったり怒ったり、悪魔では決してできない感情豊かな表情で話す少女に悪魔はますます心を惹かれました。


 そんな悪魔ですが毎日通っていたわけではありません。最近になって漸く人間にな試みを再開したからです、少女に出会ったことで人間になりたいという思いがより強くなりました。

 しかし、思いとは裏腹に中々うまくいきません。

 そこで悪魔は痛いと感じるにはどうすればいいのか、涙を流すよりまず先にそれを解決しなければならないと趣旨がズレ始めた考えになり、悪魔は様々なことを試しましたが、やっぱりうまくいきませんでした。



 そんなある日のこと、悪魔は少女に頼まれ遠出をすることになりました。

 それは少女の両親が病気になってしまい、それを治すための薬が異国の地にあり、少女では取りに行くことができないので代わりに取ってきてほしい、と。

 少女はついて行こうとしましたが病気の両親を一人にさせるわけにもいかず、何より魔物もいるので危険だと諭し、悪魔一人で行くことにしました。


 悪魔は話しを聞いたその日には出て、悪魔としての能力を全力で使い、数ヶ月かかる行程を僅か一月で向かい、一月で帰ってきました。

 しかし、その二ヶ月で町の様子は様変わりしていました……戦争です。


 隣の国との争いが激しくなり、ついに首都から離れたこの町にまで戦禍がやってきてしまったのです。

 悪魔は帰った来て町の変わりように驚き、すぐに酒場に向かいました。

 かつては綺麗な町並みだったところを走り抜け酒場に到着しましたが、酒場も他と同様に見るも無惨な姿になっていました。


 悪魔は少女を探すため、店だったところを中心に辺りを探しましたがどこにも見当たりません。

 そこで悪魔は、以前に少女が避難する場所があると言っていたことを思い出し、避難したんだろうと判断しました。

 避難場所までは聞いてなかったので廃墟となった街を歩きながら避難場所を探していると向こうから人影が二人、こちらに向かってきます。

 悪魔は人間が好きではありますが、殺すことに躊躇いはないのですが、今回は血を見ることはなさそうです。

 なぜなら向こうからやってきたのは酒場の常連でもあった冒険者の二人でした。

 二人も悪魔の顔を見て安堵して避難場所に連れて行ってくれました。

 避難場所は外れにある洞窟で、中には街の殆どの住人が避難していました。

 その中から悪魔は少女と少女の両親の姿を見つけることができました。

 少女も悪魔がいることに気づき、顔を綻ばせて悪魔に飛びつき、お互いに無事だったことを喜び合いました。


 しかしその喜びも束の間のことで、入口から剣戟の音や悲鳴が響き渡りました、隣国の兵士に見つかってしまったのです。

 入口を見張っていた人たちが倒されてしまったようで兵士たちが雪崩れ込んできました。


 このままでは街の人たちが殺されてしまう、しかしここで悪魔としての能力ちからを使ったら少女たちに恐れられる、そのことが頭によぎり躊躇ってしまった。

 そしてその一瞬が、全ての運命を決めた。

 敵兵の一人が悪魔に向かって弓を放ちましたが悪魔は気にもとめませんでしたが、矢如きでどうにかなる筈がないからです。

 しかし、その認識は悪魔だけで、周りは違いました。


 矢が当たる瞬間、悪魔の前に人影が躍り出て弓が胸に刺さり、力が抜けたように崩れ落ちてしまいました、なんと人影は少女でした。

 悪魔は少女の行動が理解できずしばし呆然としましたが少女が地面に落ちる前に何とか抱き留めます。

 辛うじて息をしていたので、悪魔は急いで回復魔法をかけようとしますがなぜか魔法が発動しません。

 なぜこんな時に……!

 いら立ちを覚えていると少女の服に水滴が落ちているのが目に入りました。

 この水滴は?悪魔は不思議に思った次の瞬間に、自分が涙を流していることに気づきました。


 驚愕とともになぜ痛くもないのに涙が流れたのか、そこで悪魔は自分の心が痛いと感じていることに気づきました。

 そして、その次には心を痛めている原因が少女の死で、死んでしまったのが自分が魔法が使えなくなってしまった自分を、弓を引いた兵士たちを恨み、復讐心が沸き上がりました。

 復讐心が沸き上がった瞬間、悪魔の中で何かが変わり目の前が真っ白になりました。


 視界が戻ると辺りには無惨な兵士の死体、視線の先には先ほどの洞窟、中には誰もおらずただ少女の死体が横たわっているのみ……。


 悪魔だったものは少女の遺体を抱き上げ、どこかへ去ってしまい、人間の前に二度と現れることはありませんでした。



 












 とある、深い森の中、一人の何かと一つの墓がありました。

 その墓に名前は刻まれておらず、何かは墓を守る様にいつまでその身が朽ち果てるまで傍にいたそうです。

 

其の涙、善き心を知り流したならば人に成り

其の涙、悪しき心を知り流したならば、人とも悪魔とも成らず異形と成すであろう。

いかがでした?最後の詩っていりましたかね?

感想、ご意見、誤字脱字などお待ちしております。

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