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第七話『行くぞ!』

 あれから数日。マザーのお葬式は国を上げてのとてつもなく大きなものになった。

 王国の国民皆が偉大なる魔術師の死を、偉大なる聖母の死を嘆いた。国内に残っていた元孤児院の孤児達は、アタシが知ってる人知らない人を問わず、皆が集まってマザーの遺体が土の下へ沈むのを見送った。


 そして、その悲しみの消えない翌日。


「マザーの遺言とはいえ、本当に旅立たれるのですか?カタリナ」

「うん……アタシは世界を見てこなきゃ!世界を回って、誰かのために魔法を使ってこなきゃだから!ありがとうシスター・エラ、マザーと一緒にアタシを拾ってくれて」

「そんな……今生のわかれみたいな事を言ってはいけませんよカタリナ。マザーは居なくなっても、ここの元孤児達は王宮で働いている子も多いですから、孤児院はずっとここにあります。守って見せます。」

「いつでも、帰ってきてくださいね?それで、旅のお土産話を子供達にうんとしてあげてください」

「ありがとうシスター・ローイ。きっと、約束しよう」

「行っちゃやだー!」「バイバイ、おねえちゃん」「僕も一緒に行くのー!おねえちゃんと一緒がいいのー!!」

「皆も、わがまま言わないの!いつか皆が大きくなって、どこかへ引き取られたり旅に出たりして、その行った先でもし会えたら絶対お話してあげるから!」


 涙目の子供達に後ろ髪を引かれる。あーもう!本当にかわいいなぁ!


「それじゃ、行ってきます!」


 こうしてアタシの冒険が始まったのだった。




 が、旅立って早々に大きな問題にぶち当たった。


「お金が……足りない……!」


 シスター達から貰った旅の支度金は、食料を買うのに使い、自衛のための武器を買うのに使い、少しお高いが温かい寝袋を買うのに使い……と計算してみたが、どう足掻いても少し足りない。

 マザーのお葬式や、子供達の食費なんかもあるため、あまり多く貰わなかったのが裏目に出た……


「しまったぁぁ……もっとお小遣い貯めておけば良かったぁぁぁ……」


 とか一人で悔やんでいると……


『なーんのための魔法じゃと思うとるんじゃたわけ』


 その声は神様のクソジジイ!


『良いか?もうこれ以上ヒントはやらんぞ?魔法でやってできないことはほぼ無いのじゃ』


 じゃあ具体的には何ができるのさ!


『無から何かを作り出すこと以外じゃ、もう何も言わん、勝手にせい』


 無から何かを作る以外ならなんでも……か……


 なめした大きな皮を二枚

 大きい丈夫な布を何枚か

 毛布を一枚

 大量の綿

 丈夫な紐と糸を一巻き


 素材だけで揃えると、そのまま商品を買うよりは随分と安くなった。あとは食料だけ買い込んで、全て収納魔法の中にしまいこんだ。あとは、街の近くの森の中に入って、全てを加工するだけである。


「ンじゃあいっちょやったりますか……毛布よ、糸によって固く縫い合わさり、我を包める程度の袋になれ!」


 そして、丁度良い大きさの毛布袋ができた。さらに……


「布よ、糸によって固く縫い合わさり、毛布袋がすっぽり入る程度の袋になれ!綿よ、毛布袋と布袋の間を満遍なく満たせ!糸よ!毛布袋と布袋を固く繋ぎ、寝袋を完成させよ!!」


 ニョロニョロニョロ、スルスルスルスル、もこもこもこもこ……


「し、指定がいちいちめんどくせぇ~……けど、これであたたかい寝袋はできたな!うんうん、クソジジイもいいヒントをくれる時もあるじゃないか……この調子でテントも作って……と、木材はそこらじゅうにあるし……」


 あとは……


「武器、作るか……」


 作り方は知っている。中学二年生ぐらいの時に、いろんな本で調べたものだし、実際に見に行ったりもした。だいぶブランクはあるが、まだ、うん、覚えている。衰えていく筈だった脳が若返ったのは素晴らしい!そこはクソジジイに感謝だ。


 魔法で、そこらじゅうの地面から砂鉄という砂鉄を全て集め、近くの木を魔法で切り倒し、魔法でかこうして大量の木炭も用意した。近くにある土から粘土の原料になりうる土だけ集め、水と混ぜて粘土に加工し、成型。

 たたら製鉄と刀打ちの準備をする。


「やっぱり、異世界転生した日本人たるもの、たとえテンプレと言われようがなんだろうが刀を武器にしたくなるよね!」


 後でたっぷり後悔するのであった。

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