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第五話『魔物肉の香草焼き』

 結局、アタシは『純粋』という意味の『カタリナ』という名前をつけてもらいました。前世の『真澄』と意味合いを被せてきやがったなあのクソジジイ。


 それで、まぁなんだかんだあって、孤児院で十年生活してました。まぁ、ね、割と平穏無事に十年過ごせたんじゃないか?飯は相変わらず微妙な味だが……果物や砂糖を多く使った食べ物はおいしい。


 ただ、アタシはどうしても我慢ならないことが出来た……


 本日のメニュー カタリナお誕生日記念の『魔物肉の香草焼き』


 この世界、普通の動物が存在せず、『獣属』という魔物の一種族として存在しているのである。そして、悲しいことに魔物は結構な割合で雑食なのである……

 まず、元の世界でもそうだが、野生生物の肉は固くて臭いのである。それを食用に改良し、育てているから豚や牛、鶏の肉は臭くないのだ。

 そして、雑食動物の肉というのはさらに輪をかけて臭い!臭いのだ!!

 稀に、限りなく草食に近い魔物も居るらしいが、そういう魔物の肉はまあまあ美味いらしい。ただ、そういう魔物は美味いから魔物に狙われやすく、体が小さく逃げ足も速い。珍しくて美味い食材だから市場に出回る前に王侯貴族が買い取ってしまう。


 さて、それじゃあ臭い魔物はどうやって調理しようか?臭みをとり、別の匂いで誤魔化せばいい。じゃあそうするためにはどうすればいいのか?


 その結果がこれだ


「今日は魔物肉の香草焼きよ~」

「わーい!」「やったー!」「僕お肉大好きー!」「カタリナおねえちゃん!お誕生日おめでとー!」

「あぁ、うん、ありがとう」


 アタシが小さい頃から、年長の孤児が誕生日の日は決まってこれだ。今日はオオツノウサギの肉だそうだが、こいつの肉が安く手に入るぶん臭い……さらに、小さな虫型の魔物や、木の実、草を主食としており、虫型魔物が保有している毒を分解しきれないために、若干苦いのである。

 毒を抜くために香草の中に毒消しの葉をいれるのだが、その毒消しの葉っぱもまた苦いし、毒の効果は抜けても味は抜けないのだ!忌々しい!


 何度か、魔法で苦味や臭みを取ろうと試みた事があったが、このメニューの度に細かく臭いや苦味の度合いを指定して軽減するのは非常に面倒くさい。貴重なお肉だし、我慢すれば食べられないわけではないのも相まって、いつしか苦手な食べ物になってしまっていた。


 もう、もう嫌だ……魔物肉の香草焼きは飽き飽きだ!!


「おいしーね!カタリナおねえちゃん!」

「うん、おいしいね」


 ちびっ子に笑顔でおいしいね!なんて言われたら何も言えなくなっちゃうだろ……みんなニコニコして、

 かれこれ中の人は42歳……出ちゃうだろ、母性とか!老婆心とか!!将来的にはここでシスターになってちっちゃい子達を育てて暮らしたいとか思っちゃうだろ!


 そんな和やかなお誕生日会は、食堂に飛び込んできたシスター・エラの一言で脆くも崩れ去った。

 真っ青な顔、震える唇、上手く言葉が出なくてぱくぱくした口……何か不味いことが起きたのは想像に難くなかった


「ま、マザーが……息をしてらっしゃらないの……」

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