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第四話『こいつはくせぇーっ!!』

 あれから三日、朝の授乳の後、熾天使様は「これで仕事満了です」と言い残して帰ってしまった。それとほぼ同時に、遠くから蹄の音と、何かがガタガタいう音が聞こえてきた。おそらくは馬車だ。


「おぉ、神よ……この子が貴方様が祝福を与えたもうた御子なのですね……」

「マザーリリアン!この子のステータスを!確かに、神の祝福を受けておいでです!」


 しわくちゃの優しそうなおばあさん修道女と、いかにもな格好の若い修道女が、アタシにたいして急に祈りを捧げてきたのだった。


「おぉ、よしよし、もう大丈夫だからねぇ……貴女の新しい家族の所に連れて行ってあげますからねぇ……」


 老婆は慈悲深い微笑みで、アタシをあやしてくれる、中身としてはあやされたところで何ら楽しくはないのだが、赤ん坊的には楽しそうにしてないとマズイだろうと思い、楽しそうに振舞ってみた。転生もの小説あるあるだな。


 そして、昼になった。

 シスターは、水筒のようなものを取り出し、何かを呟くと、その中身を器に注いだ。


「ほーら赤ちゃん、あーんしてくださいねぇ、シスターローイのおいしいスープですよぉ~」


 本日のメニュー シスターローイのスープ


 スープか、赤ちゃん向けだからあまり味に期待はできないが……なんて事を思いながら、差し出されたスプーンに対して口を開けた。

 うわ土臭っ?!なにこれ?!洗ってないゴボウ?!


「おいしいニンジンのスープですよ~おいしいでしゅか~?」


 美味しくない。美味しくないよシスター……まず、赤ちゃん向けだから塩味が薄いこと、おそらく鶏肉でとったであろう出汁が薄いこと、ニンジン特有の臭みが強いこと、そして何より、皮むきをしていないであろうニンジンのせいで非常に土臭いことである!!


「う、ふえええ……」

「あら?この子ニンジン嫌いなのかしら……」

「シスターローイの作るスープはニンジン嫌いの子でも食べれるくらいおいしいのに……変ねぇ……」

「はむ……うん、塩味は薄いけどおいしいスープよ?どうしましょう……」


 これでおいしい……だと?この微妙なスープが?ニンジン嫌いの子供でも食べられるくらいに?嘘でしょ?


「ほら、好き嫌いしちゃダメでちゅよ~あーんして~」


 う……でも、飲まなくては……今日の食事はこれしかないのだ……


 一食分を飲みきる頃には、スープはかなり冷めてしまっていた。さっきのはスープを温める魔法だったのだろう。


 もしや、辿りつくまで毎食このスープなのだろうか?いや、このスープがおいしいと評価されていたということは、孤児院についてからも毎食この程度の料理しか出ないということか……?

 アタシは、お母さんの作ってくれた塩おにぎりが無性に恋しくなった。


 そういえば、あっちではアタシの葬式をしているのだろうか……友達は参列してくれただろうか……親父とお袋は泣いてくれたかな?味噌蔵の経営は大丈夫かな?

 あっちの世界を思い出したが最後、いろんな思いが溢れて、涙が止まらなくなった。マザーとシスターは懸命にあやしてくれたが、泣き疲れて眠るまで、アタシはたっぷり泣いてしまった。もしかして、赤ん坊が何も無くても泣いてしまうのは、前世の家族を思い出してしまったからなのかもしれない……


「マザー、この子のお名前どうしましょうか?」

「親に名付けられる間も無く捨てられてしまったのかねぇ……可哀想に……」

「まったく、どうしてこんな小さな子供を捨てるんでしょうか!貧しいなりになんとかできないものなんでしょうか!」

「おやめなさいシスター・エラ、親には捨てられましたがこの子は神様の祝福を受けた子、救われた子供なのですから……」

「…………申し訳ありません」

「さぁ、2人でこの子のお名前を考えてあげないと!」

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