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第二話『大和撫子はうろたえないっ!』

 まぁ、結論を言うとアタシは売られることは回避することができた。

商人が指先から出した火で煙草に火をつけるのを見たからである。

アタシは、商人が火を出す時に軽く目を閉じて念じているのを見逃さなかった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 念じるだけで魔法が使えるのか気になったので、アタシをかかえているのとは別の男に向かって燃えろと軽く念じてみた。果たして、男は全身を焼かれてのたうち回っている。


「お、おいどうした?!?!」

「ま、魔法攻撃?!?!?!誰か!水!水を!!」


 やっべー……思った以上に、というか、軽く念じただけでこんなに燃えるもんなのか……水、水を……むむむ……


 どっぱーーん!


 母親に父の死体、商人や男達、全員巻き込んで家の中で大洪水が巻き起こり、家がメキメキッ!という音を上げた。

 ぐはっ!テンパって強く念じすぎた!!ヤバい溺れる溺れる!


 咄嗟に空気を求めた結果、アタシの元に集まった膨大な量の空気は竜巻となり、アタシ以外の全員と家を木っ端微塵に吹き飛ばしたのであった。


 竜巻は水を空高く吹き上げ、村全体に雨のように降り注いだが、もうそんなことは重要ではない。アタシは生後数日にして、魔法の暴走でたくさんの人を殺してしまったのであった。

 ヤバい……これだけ強いと著しくヤバいぞクソジジイ……ど、どうする?どうするよアタシ……落ち着けっ!大和撫子はうろたえないっ!


『ほっほっほ、早速やらかしたようじゃのぉ』


 不意に頭に響いたクソジジイの声。誰のせいでこうなったと思ってやがる!!


『安心せい、飛ばされた奴らはワシが助けておいた』


「うぁ、う、ぶぅー!」


『ほっほっ、赤ん坊言葉しか喋れないようにしておいたぞ、三歳ごろまでにゆっくりと解呪されるから、気長に待つんじゃな』


 くそぅ!余計なことしやがって……クソジジイ!こんな魔法の威力じゃあ危なくて使い物にならないじゃあないかっ!!


『おぉ、そうじゃそうじゃ、魔法の仕組みだけ説明せんとな!魔法は、使用者のイメージに左右されるんじゃ』


 イメージ?


『うむ、つまりじゃな……必要とする事柄に修飾語をつけることで正しく発動するのじゃよ』


 修飾語というと、形容詞とかそういったやつか


『佐用、例えばさっきのおぬしなら燃えるに対してあの男がというイメージがあったからあの男だけが燃えたわけじゃな』


 つまり、とにかく水を要求したから底抜けに水が、とにかく空気を要求したから竜巻が起きるレベルの空気が来たってことか。


『流石に本当は主席の癖に学年次席を取り続けただけあって物分りがいいのぅ』


 なるほどなるほど……つまりは……アタシを1mくらい浮かせろ!


『あっ、こりゃ、ちゃんと人の話を……』


 グンッ!っと、とんでもない速度で私は1mほど上昇し、急停止し、そして落ちたのであった。


『指定しない場合、可能な限り大きく実行されてしまうんじゃ……ワシが今おぬしに保護をかけてなければGだとか衝撃波だとかで木っ端微塵じゃぞ……』


 うぇ……じゃあ……人が抱えあげるくらいの速度でアタシを1mの高さに浮かせ続けろ。

 ここまで細かく指定して、はじめてアタシは思った通りの感覚で浮くことができたのだった


『おぉ、そうそう、いい感じじゃな!これが呪文の詠唱じゃ。慣れればイメージだけでつかえるようになるぞ』


 イメージだけってどういうことさ?


『頭の中でふわぁっと浮く自分をイメージするとかじゃな。高速で移動したい時は自分を保護しないと木っ端微塵になるから注意するんじゃぞ』


 なるほど……使いにくいシステムにしやがって。


『言葉にするとイメージしやすいじゃろ?修飾語がたくさんついた言葉を口に出す時、なるべくカッチョイイ言葉つかってみるのじゃ』


 か、カッチョいい言葉……えーっと……我よ浮け!大人の目線ほどの高さでとどまれ!


『そうそう、なんとなく呪文っぽいじゃろ?』


 しょ、しょうもねえ……


『さて、いつまでも浮いていると様子を見に来た村人にみつかるぞ』


 はっ!しまった!えっと、えっと、風よ!宙浮く我を吹いて動かし時速7kmでそこの岩陰へ!


『中途半端にダサいのぉ』


 いい言葉が浮かばなかったんだよ!

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