第一話『アタシは人間をやめてるぞぉーっ!』
ちょい胸糞かも?注意です
目が覚めると、ボロ屋で母親であろう女性に抱かれていた。毛布に包まれ、上を見上げていた。
おそらく、アタシは赤ん坊になったのだろう。所謂息子は無いように感じるため、こちらでも女として生まれたのだろう。
母は泣いていた。アタシを抱える腕は、毛布越しでもわかるほど細く、力無かった。
髪は痛み、頬は痩せこけていた。涙を流しながら、しきりに「ごめんね、ごめんね」と繰り返していた。
これはアレだな。アタシは捨てられるか売られる流れだな
出だしから既に平穏とはかけ離れた状況に居る。周囲に父親の姿は……あった。
わーい、背中から包丁が生えてる~……なんて楽観的には捉えられない。おそらく酒であると思われる瓶が散乱しており、改めて見れば母の顔には痣がある。
『DV夫殺害「もう耐えられなかった」』新聞の見出しにするならこんな感じだろうか。完全にヤバい状況である。
母親が警察的なものに捕まるにせよ何にせよ、アタシはこの年齢で一人にならなければならない。まだ歯も生えてないのに!
複数人の足音。ドアを強くノックする音。
「どうも~奥さ~ん、知ってるでしょう?タクリー商会の者でございます~」
おい、パイ食わねぇか?とでも続けたくなるようなセリフだが、こういう時に来る商人っていうのは……
「旦那様はもうお帰りですかねぇ~?借金の期限がもう10日も過ぎてるんですよ~……」
うーわー、やっぱりそうなるよねー……本当に三流小説みたいな展開になってきやがったぞ……
「おい」
「へい!」
バキッ!と音をたててドアが壊れる。そこに居たのは、まるまると太って口髭を生やしたテンプレのような商人と、げへへなんて口に出してる屈強そうな男達。
やっぱりあのクソジジイこういう小説大好きだろ!
「あーあ、旦那さん死んじゃってらぁ……借金の保証人は……まぁわかるよね?奥さん?といっても……まぁ先に警吏に突き出すしか無いけどねぇ……」
「タクリーの旦那、この娘はどうしやすか?」
「チッ、産まれたばっかりのガキかよ……まぁ、『養殖場』にでも売れば金になるだろ、ステータス確認しとけ」
ステータス……?これはゲーム的な世界なのだろうか?こういう時はネット小説原作の漫画とかだと……ステータス出ろっ!
ピコン!
出た。ステータス画面、というか窓。
名前:未設定 年齢:0歳
STR:1
VIT:1
SPD:1
MAG:4095
INT:76
たっか!でもなんか区切りが悪くね?
いや、でもゲームの場合は16進数とか2進数が殆どだから、えっと、えっと……
2進数なら111111111111で……16進数ならFFF?
なるほどね、つまりはカンストか。ていうか、ステータス4つしか無いんだ。
「なっ!?」
アタシのステータスを見ようとしたおじさんもこのステータスを見たらしい
「おい、嘘だろ、何かの間違いじゃねぇのか……!?」
「どうした?そんなに慌てて」
「魔法力が……高すぎる……いや、高すぎって話じゃねぇぞ!!なんだこりゃ!!」
商人や、他の男達もこぞってアタシのステータスを見る。やめろよ恥ずかしい。
「魔法力は確かに生まれた時の適正から変化はしないが……それにしてもこんな数値見たことも聞いたこともないぞ……」
他人のステータスが見られるなら、アタシもアイツらの見れるんじゃね?
ピコン!
あ、やっぱり見れた。
名前:ボージス・タクルー 年齢:37
STR:31
VIT:40
SPD:24
MAG:6
INT:53
名前:ダリオ・ローリス 年齢:25
STR:51
VIT:46
SPD:44
MAG:4
INT:32
(……え?)
低かった。力自慢と思われる男達でさえSTRの平均は50くらいだ。MAGに至っては平均が5.5程、高い人物でも7程度だった。
(天才魔術師って、限度ってモノがあるだろうがああああ!!クソジジイめえええええ!!!)
「大事な商品だ!絶対に傷をつけるんじゃないぞ!!」
「へ、へい!!」
母親から私を奪い取り、震えながら抱える屈強な男は少し滑稽だった