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一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
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アグーデ伯のおもてなし

次回 5/10 AM 02:00を予定しております。と書きましたが 本日、月曜日の間違いです。




 俺はゴチソウになられる前に悪魔(堕ッパイ)を葬り去り、窮地からの脱出に成功。

 そしてこの時を迎えている。

 神々しく光ったあの現象はひとまず心の片隅に追いやっている。

 って考えてる時点で追いやれてないとか言うな!



「我が娘、テレジアの危地を救って頂き誠に感謝する。今宵はささやかながら晩餐を用意させた。是非召し上がって頂きたい」


 アグーデ伯が無駄に巨大なダイニングテーブルのホスト席でそう挨拶すると、これまたバカみたいな量の料理が次々と運ばれてきた。


「盛大な歓迎を頂き感謝致します、総督閣下」


 そう応じたのは薄いボディーラインをフリルをゴージャスに盛った赤いドレスを身に着けたアンだ。長い赤の髪をアップにセットし、特にボリュームが控えめな胸元には、髪の煌びやかさに負けないてんこ盛りのレースがあしらってある。

 

 見慣れないからだろうか、いつもよりすげぇキレイに感じる。


「おやおや『閣下』と来ましたか。もうルイス君とは呼んで頂けませんか」


「御隠居なされた先代を継ぎ、譜代の貴族であるアグーデ伯となられた方を、男爵夫人に過ぎぬ身でそのように呼べるはずもありません」


「では、私も『アンジェリーナ殿』では無くアン・ゼルフ男爵夫人とお呼びせねばなりませぬな」


「今まで通り、アンジェリーナとお呼びくださって結構です。先程の連絡の際はそうお呼び下さったのに、意地の悪い事です」


 やれやれ、ここでもまた茶番かよ。呼び名でもめるのも、正直飽き飽きだ。


「アン。俺もここでは『様』をつけて呼ぶ。それでいいのか」


「駄目、イヤ。や・め・て」


 南国特有の軽いエールをぐびりとやり、いつの間にか復活したベリがその艶めかしい唇を濡らしながらに追従する。

 堪能してくれと言われたが、飲んでいいタイミングとは思えないが、そんな事はベリには関係ないらしい。当然の様に飲み干す、そこにシビレる、憧れ……無いな。


「主よ、ここは男爵夫人とお呼びするべきであろうよ。公的な場として接しておられるのであれば、尚の事そうすべきであろ。のう男爵夫人?」


 言いつつシャンパングラスの様に薄く透明な、魔術で加工されたガラス製の美しいグラスの飲み口をアンにすうっと向けた。

 その様子は煽情的で艶めかしく、巨大な質量の胸元を強調したシックな黒のイブニングドレスがさらに妖艶さを引き立てる。なんとも色っぽすぎる。

 眼が奪われていることを勘付かれては面倒なので、視線をやるのは一瞬だ。

 

「ベ~リ~ぃ」


 いやらしく口角のつり上がったベリの笑みに、不快感を隠すことなくアンが応じた。

 それを聞いていたアグーデ伯が『私としては残念ですな』と言えば、いつに無くアンの対応は早かった。


「あ~もぅ! 分かったわよ……」

 

 いや~今回は折れるのが早かったね。

 なので『折角カッコ良いとこ見せよう思ったのにっ』とか小さく言ったのは聞かなかったことにする。と言うより、今更『貴族っぽく振る舞えるのよ』アピールとか要らないですよマイマスター。

 俺はアンの守護者、しかし貴族だから守る訳では無い。一体何を気にしているんだかね。



「お久しぶりね、ルイス君……は流石に教育に良くない(マズイ)わね、ルイス殿」


「はっはっは、気遣い無用。どうぞご自由に、アンジェリーナ殿。こちらこそ御無沙汰しております。さて、今宵はグレアスの街にて修行した当屋敷のシェフ自慢の料理です。ゆるりと堪能ください」


「「「グレアスの料理!」」


「いい匂いです」


 思わぬ所であの味覚を味わえると俺とアン、リナの三人はハモってしまった。

 ロミィも素敵オーラが眩しく出ていて嬉しそうだ。

 あの馬鹿悪魔は供された酒が気に入った様子で、何杯目かのお替わりを飲んでいる。

 

 会話の最中から気になっていたが、ものすごい芳香の本流だ。様々なスパイスとハーブのいい匂い。

 感じとしては、東南アジア料理の雰囲気。

 インドネシア風かな、タイ風? ベトナム風? かぁ~タマラン。

 グレアスで修行したと聞けば、かなり美味い物のイメージが脳を占める。

 異世界料理も良いが、食べ慣れた味覚を期待してしまう。


 先刻よりちょいと気になる方向に目を向けると、ドレスを着せられて愛らしく着飾った二人が緊張の面持ちで座っている。特にうさ耳のエルリルはガチガチだ。

 しかし緊張しながらも、俺達と同じように漂う香しい芳香を放つ料理の登場に目を細めている向かいの女性陣。テレジア嬢もその例に違わない。


 この状況は通常ではあり得ない事だと思われる、仮奴隷であるあの娘達が貴族と食卓同じくしていると言う、この状況がだ。

 無論、俺に否は無い。アグーデ伯は知らないかもしれないが、身分で言えばロミィだって奴隷だ。否のあろう筈が無い。

 譜代のルシアナ貴族である総督閣下が同席を許している訳だから、何んらかの事情があるのだろう。例の侍女教育ってのが関係しているのだと思うが、はて。

 思案にふける俺に気が付いたのか、アグーデ伯が思い立ったように声を上げる。


「おお、同席のご説明するをすべきでしたな。実はこの娘たちは、この度我が養子として迎える事となりました……」


 ヨウシ? ヨウシってあの養子!?


「あ、あの、その、改めまして、エルリルです」


 視線で挨拶を促されたうさ耳ちゃんがおずおずとした口調で言うと。


「ジェシカと申します」


 と、こちらはシレッとしたもんだ。

 年相応の笑顔付とは恐れ入る。


「この者達はご存知の通り、奴隷の仮印を持っております。ですが、我が養子として迎えるにあたり、少しでも慣れてもらおうと思い、此度の席に招きました。故にどうかご容赦を頂きたいと言った次第なのですよお若い従者殿」


 は、い? 俺ぇ? 俺が何? 嫌がるって意味か んなワケが無い。

 むしろ、こちらこそロミィを無断で同席させて貰っているワケで。


「あぁイエ、問題ありません閣下。あ、いや、お初にお目に掛かります、男爵夫人付筆頭武官ケイゴ・ヨネハラと申します。申し遅れまして恐縮ですが、どうぞお見知り置きを」


「はっは、そう硬くならずとも良い」


 そう言って立ち上がってしまった俺に対し、微笑みつつ手で制しを示すアグーデ伯。

 おずおずと着席する俺。

 むぅカッコ悪い。


「よろしいですか、アンジェリーナ殿」


「うん。と言うより助かるわ、二人を匿って頂いて」


 かくまう? あっ! そうか、この人は皇帝派の貴族!

 ボケか俺は。


 俺達とは別にこの晩餐前にアンとアグーデ伯は会談済み。

 であるからには、彼女たちが『竜の里』の住人であると伯爵には伝わっている。そこから導き出せる答え。それは『生存者の保護』だ。

 公爵の陣営にあの娘達が渡る事を防ぐ為にも、密かに匿うより寧ろ公にした方が良い。

 所在があちらにバレるデメリットよりもこちらのメリットの方がデカイ。

 貴族が貴族の養子を手に入れる方法なんてのは合法ではあり得ない。

 ナルホド考えたもんだ、良い手を思いつく。

 彼女たちの身の安全も守れるし、立場の強化にもなる。種族の詳細、つまり竜の里の出身である事なんか、公には伏せちまえば良い。単に、身寄りの無い亜人族の娘を身受けした形にするのも良い。

 高級貴族達には、体の良い手放したくない情婦と見られるかもしれないが、そんなものは放って置けば良い、彼女達がアグーデ伯に連なる続柄となるそれが重要なのだ。


 こりゃ、先刻の事件と言うか俺のミスは、かなり面倒な事になりそうだぞ。

 全く、どうやって弁解した物か……。。


 余談ではあるが、後にアンに聞いた話だが、この四大陸世界の貴族と言うより『ルシアナ貴族は』には、人種による差別志向は粗無いと言って良い。隣の国民の大半が人族以外なんて普通にある。故に無い。

 だが無論、我々の世界でも同様だが『余所者嫌い』なんって考え方はある。

 その亜種と言って良い考え方が『人族主義』だ。俺達の感覚で言えば『白人主義』のようなものと思えばいいだろう。

 そう珍しい現象では無い、言葉だけで考えれば日本人だって『外人』と他国の人たちを呼ぶ文化がある。

 で、特にこの『人族主義』が『人族至高主義』に成り上がっちゃった人たちがこの国に居る『門閥貴族』である。

『門閥貴族』とはあの公爵を筆頭とする、建国当初からの古い氏をもつ貴族達を指す。

 こいつらに掛かれば獣人族、亜人族に対し「獣風情」とか「蜥蜴の分際で」とかって台詞が出て来る。もちろん貴族が発する訳だから、そいつ達が治める地域に行けば、住民だって同じような風潮に染まる。あまり近寄りたくないね。


「あら、お父様の事だから私(わたくし)てっきり、お妾としてお迎えになられるものと思っておりましたわ」


「おっと、我が娘ながらこれは手厳しい。ふむ、見目麗しい少女故それでも私は構わぬが、なんにせよ成人して後の事さ。彼女らの気持ちにもある事だしね。しばらくは我が養子として迎え、おまえと同じ学び舎にて色々学んでもらいたいと思っているんだよ」


「まあ、そうでしたのね」


 うわぁ……幼女趣味の容赦なし親父とか思って済みませんでした。

 すげぇ出来た人だこの人。

 それにしても、歯に衣着せぬ物言いの娘さんだ。


「まだお話しする事はありますが、まずは食事としましょう。ささ、料理が冷めないうちにご賞味ください」


「は、伯爵様、ほ、本当に私たちも一緒で宜しいのですか。仮とは言えど奴隷の身であるのに、この様に伯爵様や、お客様と同席など……」


 口調の正確性は今一つだが、気後れする気分は解らんでもない。

 俺だって、ちゃんとした貴族の前での会食など初めて。基本的なマナーすら危うい。

 

「お前たちは、私の子なのだ。養子と言えども列記とした私の娘だ。遠慮等せずにお食べなさい。作法等もさほど気にせずとも良い。後日ゆるりと学んでゆけば良いのだ」


「は、はい。では、ご、ご賞味? ごしょう、ご、御相伴いたします?」


 惜しい!


「はっはっは、よいよい。娘同様、無事であってくれた事を私は神に感謝する。さぁでは食事を共に頂こうではないか」


「ふふっ、あたし達も頂きましょうか。そうだ! ケイゴ、アレやりましょう」


 あれってこれか? と手を前で合わせいて合掌した。


「うん、ソレ」


「うし、じゃぁ、イタダキマス!」


「「イタダキマスっ」」


 俺に続いて、みんなで『イタダキマス』をやると、アグーデ伯爵家の面々は何が行われたのか解らない様子だ、配膳の使用人達もきょとんとしている。但し、約一名を除いて。


「ふふっ、じゃ私も『いただきます』」


 その約一名である『ミサキ』さん事ジェシカも続いた。


「ほぅ、食に対し祈りを捧げる作法と見るが、うん、良い趣だ。よし、我が家でも習うとしようか、レジー唱和を。我等も習ってみようではないか、勿論エルリル、君もだ」


 レジーはテレジアの愛称だ。そのテレジア嬢は父伯爵に促され、慣れないながらも見様見真似で唱和と祈りをささげるポーズを取った。すると続いて、伯爵とエルリルも同様『イタダキマス』をするのであった。


 さて、楽しいお食事だ。




次回 5/15 AM 02:00を予定しております。

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