1-8:所持品検査
サブタイトル修正いたしました。
「えっと、コッチが『グロック』でコッチが『ベレッタ』どちらも拳銃だよ。
んで。えーあった、あった。これが狙撃用の銃だ」
召喚された時の部屋に戻り、忘れ去って転がっていた銃を見せる。
言っても、勿論モデルガン。
どうやら、身に着けていたものは全てあるようだ。
スマホやら現金はない。
現金は、遊ぶ時には持ち出してなかった。スマホはどうやら落としたっぽいな。
あるのは、まず服。インナー、ロングシャツ、デニムパンツ、ジャケット非迷彩。フェイスガートなんかは無く、ストールとゴーグル。ニットキャップバイザー付き。あと厚手のグローブとトレッキングブーツ、ニーガード。
衣類はさっき着替えたときの籠にあった。ジャケット以外。
各種ポーチ類、ヒップガード代わりのバッグとベルトから下げたカラビナ数個。替えのマガジンはワンセットづつだけ。とび職の工具入れっぽいバッグに常時入れている、折り畳み式ツールナイフ。缶切りやペンチになる優れモノ。左右レッグホルスターで全部だ。
信頼のG-SHOCKは腕時計嫌いが災いして持っていない。
あー! あった。バッグの中に時計! これでかつる!
電池がなくても、振れば動くし永久保証だベイビー。
ベストとかは邪魔すぎて持ち込んでいない。全装備なんぞ持ってけなかった。
現在の時刻は午後の十二時。ざっと考えて約二十時間程かこちらに来て。
まだ丸っと一日も経過してないのに驚いた。
ちなみに今は『再生』の効果で痛みの類は無い。無いのだ……チート持ってたわ。
「どうやって使うの」
「んーガス残ってるかな」
アンが興味津々で聞いてくる。
ホビーと言っても危険物。本来、こいつは十八禁物。良い子はマネするなよ。
ガスって言うのは、この銃の威力の元。実際の銃は火薬でドンと弾を押し出すが、この玩具は圧縮されたガスの噴出を利用して、弾を出す。スプレー缶のスプレーが出る仕組みなんかと大して変わらん。よって、ガスの補充が必要って訳だ。
バッグにあった補充缶を見る。よし、凹みもないし穴とかなさそうだ。まだ半分以上残ってそうだな。
スプレー缶から銃にガスを補充。よし。
弾の有無を確認してっと。あるな。五発入ってた。
適当な布を用意してもらい、カーテンの様に垂れ下げる。
グロックを構え、トリガーを引く。
ポスッ
っと小さな音を立てて、直径約六ミリの弾が銃から飛び出した。
「おぉー」
「とまぁこんな感じ。当たると痛い。普通に痛い。農家さんは害獣払いにしたりする所もある位ではある。当たり所が悪ければ、例えば目とか、視力を失う程には危険だな」
「これで玩具なのね」
「まぁそうだ」
しげしげと銃と小さな弾とスプレー缶を持ってじっくり観察している。
「ねえ。スプレー? だっけ。の中身が無いと弾が出ない? 動力触媒って事?」
「そうだよ。こちらには絶対にないだろうね。成分はあるだろうけど」
「あるの? で成分は?」
「存じ上げません、マイ・マスター」
「ブーブー! いいもん調べるもん」
言うや否や、魔力が形を成し銃を中心に正方形に固まる『構成解析』と言う術らしい。
魔力の有無や、素材を調べる術だそうだ。掛かっている魔法効果も解るらしい。
「ふーん、ナルホド。蛍石を濃硫酸で溶かすときの気体を加工すれば……うん、これなら、ガスそのものは生成出来るよ。もちろん液化もできる」
「マジデカ!」
「マジデカってなに?」
ありゃ、翻訳されない。『ラジオ』みたいな造語だからか。
「ほんとに? って事」
「もちろん。でも缶って入れ物は無理かな。穴倉族の職人なら再現できるかもだけど」
そうか。まあそうだろうな。穴倉族はドワーフって認識で居ればいいか。
なんつーイメージの悪い。変換ちゃんとできてんのかコレ。
「あたしなら缶なんて要らないけどね」
「へ?」
「ガスを転移させればいいんでしょ? 銃の中の容器の内部に」
「そりゃ、そうだけど。で、なんで恒久的に使おうとしてるのさ? 売るの? 確かに珍しいけどさ」
「ケイゴってさ。意外と馬鹿?」
失敬な! 確かに学業席次的にはど真ん中キープだけど、バカじゃないと思いたい。
「あたしの守護者には武器が必要です」
「あ、はい」
ぴっと立てた右手人差し指を見て、アンが先生に見えるのが不思議。カモン! 黒縁の眼鏡。
左は腰に置かれ、教壇に立つ女教師の様だ。
こんなセンセイに授業してもらえたら、おれ成績上がって……ないな。妄想ばっかしてるわ。
「それには使い慣れたものが一番です。よろしい?」
「結構です」
「つまり! はい、これもって! 『付与弓 魔力』」
グロックにエンチャント!?
術の発動と共に手の中の得物は確かな魔力の存在を確認できた。
いつの間にか、俺は魔力感知ってのが可能になっていたのか。
ってぇグロックって弓か。
「はい、撃ってみて?」
「どこを撃つんだ」
「んー床を粘土化するから、それで撃って」
アンが何やら呟くと、塔の床である地面がぬかるみ始める。沼っぽいけど大分粘度が高い。
しばらくすると、固まってきた。
へぇ~こりゃぁ凄い。敵の足止めとか便利そうだ。
「了解」
それを見て、グロックを構える。んで、撃ってみるとどうだい? えらく撃ちごたえが違うヨ奥さん。
ノーエンチャントのベレッタでも同じように撃ってみると、段違いの威力の差が浮き彫りになった。
かなりはっきりとした違い、圧倒的にグロックの方に軍配が上がる。
ちまっとめり込むのがベレッタで、グロックはめり込み過ぎて弾が見えん!
すっげぇ差が出た。
「これはまた、効果絶大だな」
「付与前までは吹き矢程度の威力だけど、ダガーを投げた程度には強くなった感じ?」
「速度が段違いだよ! 躱せるかよこんなもん!」
そうなのだ、破壊エネルギーは速度で上がる。なんじゃこれ、普通の軍用銃程度まで上がってるんじゃないのか。
驚きなのが弾だ。あれだけの力で射出されたにも関わらず、砕けている様子が無い。
ちゃんと射出されたし、着弾後も割れてない。粘土の中をほじって唖然とした。
弾を魔力がコーディングして保護がされているっぽいな。
二度試したが、玉が砕けてジャムったりもしない、至って正常稼働。
「あれ?」
もう一度グロックを試そうとグリップを握ると、さっきの魔力を感じない。
「付与の効果時間切れよ」
「なるほど」
納得のご回答。
「わかった?」
「永続化だな――でも俺自身は魔法を使えないから。また巻物からかな」
「術は発動するし、本格的に魔術の習得をするなら使えるようになるかもだけど。とにかく、いろいろ試してみよう」
「了解であります」
武器で無双は無理でも、多少の底上げは出来そうかな。
仕込む魔術によっては、俺でも確かに役に立てるかも知れない。
俺は確かな手ごたえを感じていた。
こいつはワクワクしてきた。
次回:「装備の確認」
魔女:今度嘘吐いたらどうしてくれようか……。すりつぶす? ねじりきる?
下僕:(ガタガタガチガチガチッ)
楽屋裏
魔女:一話間違えちゃった。 テヘっ
下僕:言ってないってんだ、畜生!