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一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~一章 守護者の召喚~
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1-7:アン先生の『魔法』とは

やるやる詐欺。分割しました。なのでタイトル変更。

「ふふっ」

「ん?」


 可憐に微笑むアン。両の手で口元を隠し俯く。

 ほのかに染まる頬の色は艶やかな桃。

 見とれてしまわないように、頭上から赤い髪を眺める。

 

「ようこそ守護者さん」

「っぐっっ」


 そんな言葉と共に、下から俺の眼を覗き上げる。

 そのポーズはあざとくも、俺を貫くには十分な威力があった。

 僅かばかりであったハズのほのかな思いの度合いを表す数値は、怒涛の勢いで曲線が上昇しているらしく、どうにも抗いがたい心情『可愛すぎるやろ』がノンストップ。

 目を合わせれば、上がる心拍数。


 無力な守護者に過ぎない俺に向けていい表情じゃないぞ。

 俺まだ役に立つか解らないのに『誓え』とか言ってんじゃナイヨくらい言ってもいいのよ? 

 態度だけが一人前の非召喚者。それは俺。


 まぁ、カッコをつけたところで無能者。

 今だけ無能者ならいいが、無能のままじゃアンがリスクを負っただけ。

 ギアスだ。対価は尊厳と術。すべてを失うリスク。


 最大限の努力で、最大限の力が欲しい。いや、贅沢は敵だ、最低限の力。



「うぇっほん。えー、息巻いたところで、俺には力が無い。何をすればいい?」


 問う。当然だ。何を、どうすれば良いか。ベターなのかベストなのか判断材料と知識と知恵と能力が皆無だ。

 もちろん、目を合わせる訳にはいかなっかったので、今のセリフは何もない天井を見上げながら言った。

 我ながら情けない。


「力が無い? 本気? って聞いても本気よね。

 魔術の知識はどれくらいあるの? 妄想想像で良いんだけど、聞かせて」

「昨日言った通りだよ。俺の世界に『魔法』とか『魔術』と言った単語はあるけど、妄想の産物に過ぎない。

 現実には存在しない認識。

 だから、ざっと説明してくれ。俺なりに聞いた内容の精査と認識した内容の正誤判定をやろうと思う」

「じゃぁ、魔術の発生には理論があるって言う専門的すぎる情報は横に置いて、ケイゴにとっての不思議な現象って位置づけから始めていいかな。どんなふうに使うとかから」

「問題ない」


 どこからか出現した黒板とチョークを背面に、アンの説明が始まる。


「魔術とは、大きく分けて二種類『フォース・マジック』『コントラクト・マジック』力と契約。力は魔力。魔力を現象に変換して行使する魔術。基本は詠唱。これに追加で身振りと触媒。これを『対価』って言うの。呪文を唱える+魔力で発動」

 

 言うなり実演をしてくれる、術式名は『踊る光』人差し指を立て、指先をくるくる振り詠唱。

 

「我は求める、炎の円舞。『踊る光(ダンシング・ライト)』」


 短い呪文の終わりとともに、指先に灯ったライターを使った火程度の小さな灯が、ポウと空中に揺れ動く。その灯りは三十秒ほどで消えた。

 

 なるほど、詠唱と身振りだ。


「初級者は触媒として、ひとつまみの埃や紙屑を用意して唱えるの。もちろん、内包される工程や理屈が解っていれば、こんな風に……」


 刹那、アンの右手の指五本それぞれに火が灯された。同じように五つ全てが揺れ動く。

 ほほう。


「魔力量を多めに対価として使用して現象……つまり対価の報酬を引き出したってことで良いか? 大分乱暴な理解だとは思うけど。無詠唱もその副産物」

「やっぱり、理解が早い。ケイゴの世界って一体どんな世界なの、魔術は存在しないとか言ってさ。――概ね間違ってないよ」

「じゃあ契約は? 魔力と触媒以外の対価を支払うって事か?」

「呆れた。そこまで理解する? 

 そう、回復魔術の大半を占める『神魔術』は契約魔術の系統に入るの。対価として『信仰』や『貢』を捧げて行使する感じ。他は儀式や魔法陣ね。」


 儀式や魔法陣が対価になるのか。

 まさか、労力が対価じゃないだろうな。あり得る。だってファンタージだしな。

 祭りや、奉納の舞で豊作を祈るのも、こちらじゃ魔術扱いだな。

 うん。ボキャブラリーに当てはめると、正統派中世ファンタージーな魔法系統だ。

 ダンジョン・アンド・ドラ○ンズとか、指輪○語とかっぽい。


「で、アンは回復術も使えるのか? 多分だけど使えないだろ。なんせクラスは魔術師だからな。ダブルクラスとかマルチクラスじゃないんだろ?」

「マルチ? なんの事かわから無いけど、うん。使えない。普通のは無理」

「いや、こちらの知識の話だ。で、基礎属性は「地水火風」とか発動時間とか効果時間とか、あるんだろ? 詠唱を邪魔すれば、発動を止めれて尚且つ、使おうと思った魔力の無駄使いになるとかなんだろ?」


「――ケイゴ。もしかして……嘘、ついてる? ――あたしを馬鹿にして楽しんでる?」

 

げぇ!?


「そうだよね。あんなこと出来るもんね。――ケ・イ・ゴ・?」

「ままま、まて、まて、まて。誤解だ!」 


 髪が! 耳が! 口調もなんか変!

 やっちまった、調子に乗りすぎた。

 最後『ゴ』の辺りとかホラーだよ。カクンって首が折れそうなほど真横に傾いたよ。

 ツンデレでもなく、ドS様でもなく、ヤンデレ系なのかぁ!?

 って、やってる場合か。


「確かに俺の世界のボキャブラリーだが、誤解だ! 嘘なんて吐かん。第一、メリットはなんだ。無いだろ?」

「証明できる? 言ってみ? 場合によっては一度死んでもらうわ。――大丈夫――どうせ『再生』するだろうし……うふふ」


 一度しぬう?

 死なないのに、死ぬの? いっぺん死ぬ?

 どうせ再生とか、冗談じゃない。

 お仕置きがてらに殺られるとか怖すぎる。


「お、おち、落ち着け。俺の知識の源泉とか、すげぇ浅いから。せ、説明を! 語る時間をください」

 

 死ぬ気で元の世界の知識、特にサブカルチャー関連のテレビゲーム、漫画、アニメ。その他、ロボットに戦闘兵器、武器。学校教育について語りに語った。


「四則演算。算術とかは楽勝デスヨ?」

「右翼の騎兵、五百騎を撤退に追いやりたい。撤退水準となる三割とは?」

「ひゃ、百五十騎の損耗です。マイ・マスター」


 俺の知り得る限りというか、専門的なところは省きまくって、アンが理解できそうにない事でもなんでも語った。


「グロックって銃は、俺の得意なハンドガンって分類で……」


 次第にエスカレートしていく説明。というか超級の言い訳。


 アンと言えば、嘘吐きを見る蔑んだ暗澹たる表情から、一転し驚愕に代わる。

 途中ちょいちょい質疑応答したりの大説明会を開催。

 大げさなアクションや身振り手振りを加え、俺ソロ・オン・ステージを披露した。

 都合、四時間は話したところで、喉と体力の限界がきて、


「ご、ごんなとごろで、どうでじょうか。ゼィ」

「ちょ」

「ぢょ?」


「超高度文明じゃないの! 何よそれ。 じゃあなに? その見たこともない服の繊維は古代生物の遺骸から抽出した物質って事? 靴も? 読み書きの習熟に九年とか、それが義務とか最低条件とか……はぁ。大半理解しきれなかったけど……つまり、サブカルチャーって分野の知識が魔術知識に通じるのね」


 危機は脱したッポイ……か。


「ぐえぇっホ、ゲホ! 喉イダイ」

「ごめんなさい気が付かなくって。はい、お水。しばらく、ゆっくりしてて見て『再生』の片鱗位感じれるハズよ」


 アンから受け取った水を飲み干し、げぇげぇ言いつつ仰向けに寝っ転がる。

 しゃがみ込んで「大丈夫?」と見下ろす彼女に目だけ向ける。既にあのモードからは脱し、素敵すぎる瞳とハの字の眉。心配してくれている様子。

 さらりと落ちる赤い髪が綺麗だ。


 少々視線を下げて、ぎょっとする。

 むぅ、ローブかスカートかわからんが、膝丈の衣類の奥。見える、見えるぞ!

 トライアングルゾーン。ファンタジー巻頭衣の致命的弱点、前後スリットの為に!

 少々暗がりの奥ではあったが、間違いない。

 あるんだ! 魅惑のオーパーツが! あれが。


「あ、赤のレース」


 あ、しまっ。


 ズババッっと衣を翻す音と共に立ち上がるアン。

 耳まで真っ赤。イコール。可愛い。チガウ! 聞こえちゃった。

 イコール。死。


 立ち上る魔力と迸る赤い稲妻。


 ラッキースケベには対価が必要でした。



 パンツは本当にあったんだ―――――。




次回「所持品検査」


下僕:ラピュ○は本当にあったんだーーーー!

魔女:……。(そ、そんなに嬉しいのかな)


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