表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
143/157

邂逅③

 如何にも馬鹿そうな笑い声と共に、血濡れの男が突如として現れた。

 一体私が何を言ってるのかわからないとは思うが……。

 手品とか……ヤメタ……。

 

 はぁ……ナンデスカアレハ……。

 突然どこかから文字通り降ってきた変な男。

 年の頃なら二十代ってトコなんだろうけど、この世界じゃ見た目ってあんまし意味ないんだよね。

 見た目はイケメン風だけど、件の血の雨を浴びたのか全身血まみれ。

 そいで、ちょい乾いてきて『パリ』もしくは『ヌチャ』状態な感じ。

 そいつは降ってきた直後から、とんでもない戦闘力で私達に群がって来ていた魔物達をケタタマシイ嗤い声をあげながら殲滅中。

 それこそ河原に生えてる草をかき分ける様に、薙ぎ払う様に、そして楽しそうに……。


 んで、登場の台詞が聞くに堪えないものだった。


『ヌハッハ~! 俺様爆裂参上ぉっ!!』


 って全然意味解んないしっ! 

 俺様が爆裂して大惨状なの?

 血まみれな理由の説明でもしてんのこの馬鹿?

 フツーに血が乾いたのか、スッゴイくっさいし、超臭いしぃ。

 ツーカさぁ、なんであの匂いで平気な訳ェ?

 こいつ絶対ヤバい、絶対頭オカシイ、絶対超変態っ。


 なんなのさもぉ~っ!!

 状況がクッソ面倒臭くって、そろそろケイクンにヘルプ頼むしかないかな~なんて思ってたところなのに、変な奴に絡まれそうで、更に状況悪化ってどうなのって感じじゃん?

 なんなの私の運勢……仏滅ってレベルじゃ済まないんだけど。しくしく。


 戦闘中なのに異常にフレンドリーな感じで笑みを飛ばしてきてウザいんですけど。

 うげぇウインクしてきたぁ!? 

 キッショイ! マジ、キショイっぃっぃぃぃ!

 挙句なんなのさアイツ。それに何、あのエグイ魔力。


 いま、紙切れみたいに魔物を素手で引き裂いたように見えたんですけど。

 トンデモナイんですけど……マジで冗談じゃないでしゅけどーっ。

 ……ううっ、噛んだ……。


 ロミィの様に赤金色に輝きを発したかと思うと、漫画のエフェクトを追加したみたいな非現実的なトンデモ衝撃波を放ち、その車線上を一掃したり、聖○士☆矢みたいに拳を振り上げるだけで、魔物が宙を舞う。

 非常識の塊が現実に目の前にあると、自分は寝ているのかという不思議な気分になる。

 超、初体験(☆◇☆)

 ……ううっ、頭が変になってきたっぽい。


 この世界は意外と至って普通だ。

 かと言って、魔物が居たりする剣と魔法の世界であって、前世の世界とは全く違うって事は良くわかってる。

 けど、漫画やゲームの世界みたいに理不尽なチートスキルで重力を自由自在にできたり、スキルを自由自在に操作したり作ったり。概念や法則を自由自在にしたりできないし、エロいことをすればエネルギーになったりしない。

 ちゃんとした物理法則がある。

 人族と呼ばれる人類は前世の人間よりは健康的なだけであっても、滅茶苦茶に強靭だったりしない。

 そうだな~。

 前世の世界で言えば、大昔の人達って便利な機械が無いじゃん?

 だから全部自分たちが労働力なわけで、今の人より数段強かった……その程度かな。


 クラスやレベルがあるじゃないかって?

 レベルなんてのは私もケイクンとあって初めて知った概念だ。

 アレは見た対象の個としての強さを、私達異世界人の価値観に置き換えて数値化したものだと私は感じている。

 世界規模の最大最強の存在から最低最弱の存在まで全部集めて『1』なる値を導き出したような絶対値的なモノでも無いんだと思う。

 

 クラスは単なる職業や得意な事であって、てんで出鱈目なスーパー能力を表すものじゃない。


『でたらめな事』って、ケイクンが教えてくれた『神の欠片』って固有能力だけだと思う。 

 魔物の存在は私達の見地から見れば理不尽で出鱈目な感じだけど、魔力っていうよくわかんないエネルギーがあって、初めて理屈が成り立つものだから仕方がない。


 私やロミィが、世界的平均で考えて強い部類に入るんだって事は理解してるつもり。

 でもこれは唯一のの理不尽である『神の欠片』の力だったり『種族』的な要素があっての事。それ故レベルってものが上がりやすいしからであって、理解できる事象だ。

 ……普通の人族よりは優遇を受けているってわかってるんだよ?


 で……で、よ?

 なんなのアレ?

 幾らなんでも理不尽過ぎない?


 巨大な生物でも無いし、見た目強靭そうにも見えない、単なる変な男が超絶無双してるんですけど。あれがもーわけわかんない。


 今生では多くの色々な戦士や騎士の人たちを見てきたつもり。

 侯爵領の騎士団の人たちは強かったし、竜の里の皆は本当に強かった。

 でも、目の前の男に比べれば在り得ない程懸け離れている。

 それこそあの里での悪夢の剣士の様な、超理不尽。

 ケイクンですら霞んで見える圧倒的な戦闘力。


 ケイクンだって化物の部類だって思ってるよ? 

 竜を竜とも思って無いし、空とか歩けるしぃ、連発できない魔術だってバンバン使えちゃうよ? でもそれは、魔術道具が優れてるからであって、人としての範疇を逸脱してない。ちゃんと怪我もするしね。

 でも『アレ』とか『あの剣士』とかは駄目。

 どう考えても『漫画の世界から飛び出してきました』って存在にしか見えないじゃん。

 

「ジェシ姉ぇあの人に貰いました」


 そういって呆然としてる私の元にロミィが前線を離れて戻ってきた。

 何を貰ったのかと差し出された小さな手を見ると、ちょこんと綺麗な銀色の指輪。

 華美な装飾なんか全くない、何処にでもありそうな指輪だ。

 

「へっ?」


 ロリコン……?

 ワザワザ魔物溢れる森の中でナンパ!?

 それも相手はロミィ? 

 つ、強者すぎる。勇者すぎる。

 ユウシャコワイ。

 完全にパニックだこれ、全然なにも理解できないカンジじゃん?

 

「ユーザーノ生体記録ニヨル認証登録ヲ完了致シマシタ。コレニテ当システム譲渡ヲ完了。コレヨリ初期設定モードニ移行シマス」


 ――指輪から声がするんだけど気のせいだよね?


所持者(ユーザーネーム)ノ提示願イマス」

「ゆーざーねーむのていじって何ですか」


 ――キコエナイデス――。


「保有者ドノノオナマエヲ聞カセテクダサイ。コチラデ登録イタシマス」

「むぅ、駄目です。お名前を教えてもらう時は、自分から言うってアン様とマスタぁに教えてもらいました。ロミィは指輪さんのお名前聞いてません」


 なにフツーに指輪と話してんのぉ!?

 

「一人称ノ発音ト認識。初期ユーザー登録ヲ実施…………完了…………」


 ロミィの持つ指輪の一部が赤く明滅すると音がする。

 どう見てもこの指輪が話しているように見えちゃってるぅ。

 アハハ、これば夢だ、マボロシだ!

 なんなのよ、このメカメカした言い回しは!?

 私一人を放置して一体何が起こってるって言うの。


 って全部叫びたい。超叫びたいけどそれどころじゃないじゃん!!

 仮にも保護者としては状況の把握位はしておかないと……。


「あーロミィ、それってあの変な男から貰ったの?」

「はい。んと『テメーにそいつをやる。巧く使いこなせ』って言ってました」

 

 使いこなせって……何かの魔術道具なんだろうけど怪し過ぎる。

 ってか、発声機能付きの魔術道具って『有知能宝具インテリジェンスアイテム』でしょ?

 高価なんてものじゃないじゃん。

 幾らなんでも、こんなのをタダで初対面のちいさな女の子にくれてやるって、どんな神経してんのアイツ。ロリコンこじらせ過ぎでしょ!?

 ま、あのぶっとんだ強さで、力づくって訳じゃないみたいだろうから悪い奴じゃないかもだけど……。


「所持権利者ノ質問ニ応答。我ハ……製造年月日3829年型、ロバート・ヘンドリクセン研究室製造。型式番号ハ、アールエイチ32、試作(プロト)・|量子理論式次元転送防護クアンタマルディメンジョントランスファー装置(システム)、分体ノイチ。コノプレーンデノ通称ハ、霊界の鎧(イセリアルアーマー)……デアリマス」

 

「異世界ファンタジーぶっ壊しかぁっ!!」

「ほえ?」


 なんなのそれっ、唐突にファンタジーの上にサイエンス付けてんじゃないよっ。

 冗談じゃないじゃん、超フザケンナじゃん!?

 思わず突っ込じゃったよ、ううっ。


「んと、えっと。お名前長いです。ロミィはロイリエルです。こんにちわ、長いので短くしていいですか」

「要請ヲ受託……主体ヨリメインシステムノダウンロードヲ実行……完了。言語制御システムノ起動ヲ開始……完了。主体ヨリ仮想人格ノダウンロードヲ実行……エラー。主体ヨリ拒絶サレマシタ。サブシステムヲ起動シ仮人格ヲ初期形成シマスカ」


「んと、えっと。クアさんって呼んでもいいですか」

「何シレっと普通に名前つけてんの?」

「所持権利者ヨリ許可ト認識。実行……完了。

 こんにちはマイレディ。呼称に関する質疑に応答、コレより我はクアであります。

 以後、宜しく」

「ガン無視ぃっ!?」


 うあぁ~うあ~なんなの?

 ホゲーと見ちゃってたけどいいのかな? 

 いや、ただで見て無いけどさー、ツっ込んじゃったけどさー。

 勝手にドンドン事が進んじゃうしさぁ。

 ぶっちゃけ私にはどうしようもないしさ。

 仕方ないじゃん……ねぇ?

 うぼあぁぁぁ……アンちゃんやケイクンにどう説明しよっかなぁ。

 うっぷ。ストレスで吐きそう~。


「あのおじさんが上手に使えって言いました。何かわかりますか」

「応答、我の機能を説明するには、事態が切迫していると認識。主体ヨリ通信受信。マイレディへと連携、使用法の伝達を開始します。生体エネルギーを展開後『スタートトランス』のコールにより声紋申請を受託し機能展開を開始致します」


 あ~ぁ~疑問符浮かべ開くって、キョトンとしてる。

 これ言っちゃっていいのかなぁ。呪われたりしないかなぁ。

 でもコイツすんごい怪しいけどイヤな感じは全然無いんだよね……。

 はぁ、どうしよっかなあ……。

 とか悩んでるとやっぱり『どうすれば良いですか』みたいな目でこっちを見て来る。

 うう、リスみたいでめちゃ可愛いよぅ。

 でも保護者としては悩んじゃうじゃん? 困っちゃうじゃん?

 ええぃ! 女は度胸!!


「ロミィは、指輪さんどう思う?」

「へう? 悪い人ちがいます。あのおじさんもロミィ達守ってくれてます」


 だよねぇ……。


「じゃあ指輪さんが言った事やってみたい?」

「はいっ! ロミィやってみます」

「よしっ。じゃあねぇ、いつもやってるみたいに金色になりながら『スタートトランス』って言ってみて」

 

「はいっ! クアさんお願いします」


 良いお返事を頂いた直後、ロミィが指輪を握り締めながら金色に輝きだした。

 

「スタぁートトランスッ」

了解(ラジャー)マイレディ。転送プログラム起動、及び戦闘サポートシステム展開を開始……」


 うは~、SFアニメじゃん。超ぉ完全にアニメじゃん。

 ロミィの背後に異空間への扉みたいのが広がって、そこからメタリックな質感の光り輝く鎧って言うか、変身ヒーローのスーツみたいのが出てきた。そして輝くエフェクトはそのままロミィへと重なる。

 

所持者(ユーザー)戦闘方法(バトルスタイル)のイメージに従いスーツフォルムを変更。以後のデフォルトフォームと設定を完了魔力障壁(エネルギーフィールド)による防護を開始。マイレディ、いつでもどうぞ」


 おぉ。意外にかっちょイイ! あと凄く……可愛い。

 下半身はミニのフレアスカートの様に広がる衣装なのに、上半身はブレストプレートアーマーと籠手のセット。フトモモ部分は謎テクノロジーで浮いたプレートが浮かんでいて、膝部分が尖った脛をガードするレガース装備。それ等は全て鱗状の細かい金属片の集合体に見えて竜っぽく、スカート部分以外の素材がプレートアーマーの部品に見えてすっごくマッチした感じで統一感は超バッチリ……でも。

 でもこれって……ロミィの年齢がもうちょっと上がってくれば……エ、エロイ。


「周辺索敵サポートを開始します。いつでも戦闘開始をどうぞ、マイレディ」

「うあ~。これすっごいですっ!!

 ちっとも重く無いけどちゃんとヨロイです。見てくださいジェシ姉ぇ!」


 うんうんピョンピョン飛ぶロミィのスカートがふわふわ舞い上がって超カワイイ。

 でもデルタゾーンは全然、全く見えないの。

 すんごい謎テクノロジー素敵すぎる。

 変身魔法少女の衣装みたいでめちゃ似合うしぃっ!


「ヌアッハッハぁっ。オイゴラァ! 遊んでねぇで手伝えオラァ!」


 謎の変な男が叫んでこっちを促してくるけど、私はもう目の前が素敵すぎて。


「あっ、ジェシ姉ぇ後ろっ!」


 へっ?

 声に反応して見やると目の前に魔物の咢が迫っていた。


「みっ!」


 けどケイクン張りの異常速度でロミィが助けてくれた。

 魔物の下顎がボトリと地面に転がる。

 振りぬかれたのはトンファーだってロミィの仕草で解っただけで、全く目で追えてなかった。その上の本体はって言うと……。


「ふみぃっ!」 

 

 血まみれで宙を舞っているところに、更に追撃の蹴り(?)を仕掛けてミンチになっちゃった。ナニコレ凄い!

 トンファーにも、足を覆うレガースにも金色がまとわりついて、魔力付与した武具の様に超強化されてるっぽい。


「な~っはっは! いよ~ぅうし、準備整ったみてぇだな。そっちの嬢ちゃんは俺様が見ててやっからよぉ、思いっきり力試しして来いっ」

「はい、行きますっっっ!」


 そう言うとロミィはいつも以上の速度で金色の矢になってすっ飛んでった。

 

「おいっ、ボケっとしてんな」

「うわぅ!?」


 いきなり目の前に来た謎の男が私を小脇に抱える。


「ちょ、なに離してっ……」

「追うぞ、んでもってこのまま森から出る」

「突然の事で驚いているところ恐縮だが、しっかり捕まって口を閉じておくことを我は推奨する。舌を噛む恐れがある故に」

「おおぅ! 張り切ってやってやがんなぁ、俺様も出るぞイセェ!」

「了解だ、だが、我のシステムは激減している。ARMシステムも使用不能。サポートシステムのみであることを認識しろよロイ」

「なーっはっは! むつかしーこたぁいい、イセは頭だけ貸してくれりゃぁいいんだ」

「理解した、補助は任せていつでも行け」

「おうよっ! つかまってろよ小娘ぇ!!」


 あ~うん。その後?

 あはは……視界が暗転して気を失っちゃいました。

 全く覚えてません。

 このあとは、夢で見たバカげた笑い声だけが私の記憶だった。




体長がすこぶるで悪く更新できませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ