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一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
138/157

ある男

全然書けませんでした。

~~~



 鬱蒼というわけでも無い、とある南国のとあるちいさな森。

 南国とはいえ日差しはそこそこでやわやわな、とある早朝。

 世の季節は冬。常夏な南国地域であるココも多少気温が下がる。

 真夏時季のように『うだるような日差し』ってやつがあるわけでは無い。

 挙句、ココはちいさいとはいえ森の中。陽光は森の木々に遮られているので、大したことは無い。木漏れ日が綺麗だなって程度だ。

 強いていえば、湿地帯が近いせいだろうかジメっとした蒸し暑さの方が癇に障る。

 あと『蛭や虻に悩まされないだけマシっ』てな具合だ。

 そんな気持ちの良い小さな森の朝。やけに軽装な旅人であろう一人の男が、たった一人でボヤいていた。

 

「ナッハッハ。アッチぃ! すっげぇ暑いぞ」


 何が面白いのか、しきりに笑い声を辺りに響かせていた。

 気がフレた様に『ナハナハ』な男。暑さでやられてしまっているのであろうか。

 

「ナハハッ、ナハッハ、何ぉ処だよココぉっ!」


 どうやら迷子らしい。

 トンデモなく糸目で、とんでもなく汗だっくだくである。

 額から払い除ける仕草一発で、飛沫が飛んでいる。

 そんなに暑いか?

 いや、どうやらそうではないらしい。


「それに、メンドクセェ! ナッハッハッハ」


 男の周囲には無数の獣や魔物の死骸が散乱していた。

 正確に言うなら『男の通った後には』と言った方が正しい。

 今も一頭、三メートル級の猪がピューと宙を舞った。

 幸いにも眼を回す程度の被害で済んだその個体は、一目散にどこかへと逃げ去る。

 それでもなお、次から次へと男の前に現れる獣たち。


 ズガン!


 ボガン!


 ドグォン!


 非常識な音が鳴るたびに、何かが宙を舞う。

 一見すると男は武器と手にしていない。

 背負った剣は飾りなのだろうか、それとも素敵なナニカ過ぎて使えないのか?

 理由が不明だが素手で殴り飛ばし馬鹿げた音を奏でているようだ。

 

 ひたすら襲い来る猛獣魔獣を千切っては投げ。

 汗だくの理由はコレらしい。

 

「ヨエェ!! ヌアハッハ。おいっイセぇ! なんなんだコイツ等」


 ボガガァン!

 

「次から次へと、面倒臭ぇ。自殺か?」


 ズギョギョオンォ! 


 面倒と言う癖にどえらいラッシュを叩き込んだりと、まるで普段の運動不足を解消するかのように楽し気にぶん殴りまくりである。


 メギャンボギャ! グシャァ。


「イセぇ! 返事しろよコラァッ!」


 ズギャギャン!


 この小さな森には強者はいない。

 付近の街々村々から愛される近場の狩場に過ぎない。

 ピクニックするほど安全ではないが、Eランク冒険者程度でも気軽に狩りに出かけれるような素敵場所。なのに食肉に向く獣や、錬金術の素材になる様な植物が多く、非常に豊かと言える良い森なのである。

 

 ボグゥ、ゴメシャッ!


 今男がぶっ飛ばした獣からも回復薬の素材である角が採集可能だったり。

 豊かすぎる数々の動植物。がしかし、狩りに血眼になる冒険者や猟師はここには存在しない。何故ならば、採集や狩りは乱獲防止として、帝国行政府より厳しい罰則規定が設定されており、必要以上に採取しないことは法的に明白であり、近隣住民には暗黙の了解なのである。

 尚且つ付近の街道は帝国軍による整備・警備なされており、大規模な密輸を画策するには到底向かず、挙句の果てに隣接の巨大な城塞都市は皇帝の直轄地であり、ここで大それたことをすれば国家反逆罪が適用される恐れがある。

 そんな事になれば、あっさり一族郎党皆オダブツ刑の巻きである。

 故に、適度に程よく狩りし糧を得るには最適といえる小さな森。


「イセェ! 寝てんのかオイ。お前寝るのか!?」


 そんな森で、ひたすら一人でぼやきながら獣を粉砕しまくっている男は、平時に帝国兵に見つかれば乱獲の現行犯でタイーホ間違いなしであった。

 幸いにも現在は、平時とは言い難い状況危機的状況であり、そして帝国兵の目も無い。

 

「ヌワッハッハ、もいっちょこぉっぉぃ!」

 

 メンドクサイはどこいった……。


 ……こほん……。


 余人に取って、コレが『危機的状況』であることは誰の目にも明らかだろう。

 にも拘らずこの男にとってこの状況――暇つぶしに過ぎないのであろう――全く苦にする様子が微塵もない。むしろ嬉々として楽しんでいる節がチラホラ……。

 身の丈を超える魔物や獣が恐慌状態で、口角から涎を盛大にまき散らしながら突進してくるこの状況を……である。

 この男、相当の変態(マゾ)なのであろう。


「前方より人族と獣人族の混成五名を感知、なおも接近中。二十秒後に接触と推測する。間違っても殺すなよロイ」

「オルァ! ああぁん? 誰に物ぉ言ってる。俺様がそんなマヌケするか!」


 一人称が『俺様』な変態は、待望であった何者かとの会話ができてか、ホックホクでニメートル程の狼の顎を粉砕。

 この森の奥に住まう主級の魔物であったりすることは、男には当然関係が無い。


「起きてるなら返事しろよお()ぇ。心配するだろ。心細いだろぉ? イッヒッヒ」

「あと十秒だ。いいか、殺すなよ、絶対だ。それ以前に殴るな」

「まぁーかせろぉ、人は簡単に殺すなだろぉ? わ~かってるよぅ!」


 メギャギャギャギャギャン!


 ロイと呼ばれた変態男は、謎の声にいい笑顔で応えつつ襲来する獣たちを宙に舞わせた。 と同時に男の進行方向から、様々な獣たちに囲まれ、紛れ、果ては襲い掛かられつつ冒険者の一団が走り込んでくるのが見えた。

 

「おいっ、そこのアンタ。あぶねぇぞ!」

「どけどけぇ~~~~!!」

「っていうか逃げてぇ~~~~~っ」

 

 先程、謎の声氏が言った様に男女種族混成の五名の冒険者の一団である。

 剣士風、盗賊風、戦士風……魔術師は居ないようであった。

 それ等冒険者達が血相を変々え、獣たちと一緒くたに走り込んでくる。

 

「俺様にニゲロだぁ!? 冗談じゃねぇえぇぇぇ! グワーッハハッ、ハァ!!」


 変態男は全身に魔力を瞬時に放ったと思うと、熱量を帯びた赤金色のオーラへと変化させ、立ち昇らせ、それを全身に纏う。


「ダーッハッハ! 逃げぇぇぇん!!!」


 灼熱化した金色のオーラを纏いながら冒険者に襲い来る魔物と野生動物の混然一体となった群れに飛び込んだ。

 冒険者たちはギョっとした。

 ギョッとした直後、顎が外れるほど驚愕した。

 混成の大群が変態男が突っ込んだと当時に、四方へとブ飛んだからだ。


「「「「は~~~ぁあ!?」」」」


 文字通り四方八方の宙へと舞った。

 原形をとどめる者も少ない程、肉片と血しぶきをあげ、微塵となって舞った。

 

「ヌアーッハッハ! 俺様無敵ぃ!」

「依然、無数に接近中」

「めぇぇんど臭ぇぇ! やるぞイセぇ!!」

「Yes Master.Seal Released Sequence Start」

「ぬぁあらぁぁぁぁぁァ!」

「Complete.Sequence Over」 


 飾りと思われた背中の大剣を抜く、大声で喚く変態。

 自身に纏うオーラを剣にも纏わせ、更に練り上げ、剣が輝きを増す。

 大上段に担ぎ上げ構えると、輝きは最大限に達した。

 その男の様子は、日輪を背負った闘神の様である。

 

「ドォォラグゥウゥゥゥっイイィィィン~っっパクトォ!」


 極限まで魔力を高め、練り上げ、大剣に纏わせたエネルギーの塊を振り下ろすことにより前方へと放った。

 極光。

 それは究極の光としか言いようのない輝きであった。

 周囲の景色が光で消し飛ぶ。視界が輝きで満ちる。

 その放たれた光の塊は、徐々に大きさを増しながら直進。

 触れる者を全て蒸発させるように燃やし尽くしながらどこまでも突き進んで行った。

 光が収まり周囲が見渡せるようになると、地は抉れ、半径十メートルの円形トンネルをちいさな森に作り出した。

 不思議な事に、周囲の木々は燃えることは無かった。




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