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一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
123/157

ご飯のお時間

予約投稿に失敗しました。申し訳ないです。



 盗賊と翼竜王の襲撃から生き延び、俺達の滞在するこの旧砦に辿り着き合流できたのは約二十名。三名の商人それぞれが幾人かの護衛や伴侶、世話人を従えており、急遽雇った冒険者の護衛を含めたその合計が二十名強居た。

 不幸にも雇い主を失ったものも含めてなので、正確な関係性や構成はよくわからない。


 なんせ俺、いま気が付いただけだし……。


 当初は馬車五台、五十名弱のキャラバンだったそうだ。

 強力な魔物と悪辣な強盗集団に襲われたにしては、かなりマシな被害状況だと言われても、正直どうコメントしたもんか困る。


 ここを根城としていた集団は全十六名の構成。今回の戦闘で捕虜として捕らえたのは俺達が捕らえた四名の他、ジェシカの援護射撃を受けて護衛の冒険者が二名を捕えていた。

 死体の数は数えてあるので、前述の六名を合わせて全員だ。

 さっき起き抜けに、リナとジェシカが行っていた生き残りの尋問に参加し、俺が『魅惑の諫言ファシィニディングアイズェア』の術で聞き出したので合計人数に誤りは無いだろう。


「さて、これからどうしようか」


 んで今はと言うと、今後の指針を検討しようとパーティが集まっている。


「もう既に日は暮れ、皆野営を始めている。今夜はもう動けないだろうね」


「怪我人は?」


「なんか商人の護衛とか冒険者の中に二人ほど回復魔法が使える人が居て、ある程度は落ち着いてるたみたいじゃん?」


「俺が出張る必要はない感じか」


「そうだね、と言うよりもだ。ケイゴ殿が出ては些か不味かろう」


「おん? なしてよ」


「マスタぁはまほー使い。です」


 あ~そらそうか。俺は彼らの認識では『魔術師』ってわけか。

 常識に照らし合わせれば……いや、俺が常識的であったと言うほど厚顔ではないが……通常、魔術師には回復魔術は使えない筈だからか。

 うんうん。ロミィは偉いなぁ。


「ニヒヒッ。そうだな、お嬢の言う通りだろう。これ以上坊ちゃんが立ち回ると大騒ぎになるだろうさ」


 俺がガキの頃はこうでは無かった的なロミィの大変察しの良い発言に感心していると、後ろからなにやら大量の食事を抱えた三名が俺達の居る部屋へと入ってきた。


「お茶が入りました」


「ご、ごあん、も、あるぅ」


「はいは~い、ご苦労様。ささ座ってぇ~」


 ジェシカが率先して迎え入れると、車座に座っている皆にカップを差し出してくメルディ嬢。その中央にケーナさんから受け取った大皿を配膳する鼠の獣人族クワゥさん。


「ジェシカ先生質問です。なんでシレっとケーナさん達がここに?」


 そう聞くとジェシカは柔らかな笑みを浮かべ、人差し指を愛らしく顎に当てながら次のように言った。


「ん~っとぉ。戦闘直後にぶっ倒れちゃってぇ、す~ぅごい心配させてぇ、そろそろ起きたかな~って様子を見に行くと~ぉ、なぁ~んかえっちぃ事件起こした挙句に~ぃ自業自得な感じでまたオネムちゃんしてた人に~ぃ、わかりやす~く説明すると……ね? 

 一、一応助けた形になる商人さん達が、私たち同様ここを一時を凌ぐ場所として集まってきてしまいました~。

 二、何故集まって来たかと言うと、窮地を救ってくれた魔術師に一言お礼をと、そんな風に大勢集まってきちゃったのでした~。

 三、なのに、当の恩人殿はぶ倒れて不在でした~。

 故に! 私とお姫さま(リナ)とで先に皆さんに事情をある程度の説明をして、まだ起きてこないみたいなので「じゃあ気が付くまでに捕虜をどうするか考えよう」とか「今夜の食事どうしよう」とか「朝になったら落とした荷物回収する算段どうしよう」とかって、商人さん達と動いてると、色々忙しいかったわけです。

 なのでこちらの御三方に手伝ってもらってました。

 するとアラ不思議、どうしましょう。

 彼女たちってば、他の人からは商人さん達ご一行にはウチのパーティと思われてしまいました~……以上かなぁ?」


 最後に『んふっ』て目が笑ってない感じの極上の笑みを貰った時、俺は次に発する言葉を決めていた。いえ『これしか言えまいっ』て感じです。


「あ、えっと。スンマセンデシタ。いやホント申し訳ないっッス」


 こくりと笑みを崩さず一つ頷いてジェシカが付け加える。


「あとはさ『聞かれても見られても困ることが無いから』じゃん?」


 あ~。そっか。うん。

 アンに依頼するにせよ、アグーデ伯にお出ましいただくにせよ他言無用を願える。最終的にはアンの魔法で縛るって方法が存在する……か。ナルホドだ。ならば今は自分たちの側に居てもらって、余計な事を商人たちに知られない様にする方が都合がよい。

 納得だわ。


「何をダンマリなのか想像つくから言うけど、ちなみに三人にはその辺(・・・)も既に含ませてもらいました。差し出がましい真似で恐縮ですが、宜しかったでしょうか――。

 ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」


「イ、イエッサー! さすがの差配恐縮です、サー!!」


「あはは……その辺にしておけジェシカ。ケイゴ殿だって倒れたくて倒れたのではないのだから。見ろ、恐縮しきりじゃないか」


「ん~? 坊ちゃんはこの二人に頭が上がらねえってか。あはは、可笑しな貴族様だ」


「はは、そんな感じですよ。俺は不甲斐無いから、いつも皆に助けてもらってるんですよ」


「はあ? 不甲斐無いぃ?」

「まぁ?」

「んあ?」


「はいはい気にしないでね~、ウチのご主人様ってば偶にこんな感じだから」


「はっはっは……で、ケイゴ殿、明日以降どうする。戻るか、()るか……」


「ああ、それなんだが……」




 正直、この状況は俺の手に余る。

 整理すると、まず俺の能力ってのは大っぴらにしたくはない。

 なのに、こんなに大勢の人間がココいるわけで、状況として非常によろしく無い。

 商人達には「強力な魔術士」っていい訳が通用するかもしれないが……。


 次に、このまま全ての元凶である翼竜王討伐に向かえるかと言うと点だが、それは否だろう。間違いなく商人達が俺の枷となる。

 商人達には足が無い、荷車的なものはこの旧砦にもあるがそれを引く馬の数が足りないのだ。まあ騎竜が居るので引かせることは出来るだろうがそれでも馬とは違う、様々な不都合があるだろう。

 そして何より、生き残りの馬がそもそも使えない。

 馬は翼竜王(ヤツ)の最も欲する餌だ。そうでなければその辺に居る魔物や動物を食らう筈、そうしないのは馬が最も好ましいって事だろう。

 商品をある程度であきらめる。或いは、荷台には人を乗せず詰めるだけの荷を積む。そうすれば街へ向かう事は可能。だが、それはヤツの格好の的となる。普通に移動するだけでも襲われるってのに、悠長にしてれば尚更だ。




「って訳だ。それに……」


「彼らはケイゴ殿に護衛を求めるだろうな」


 腕を組み凛とした佇まい。

 にも拘らず、口元に付いた焼き物の油でテカ付いた口元がグロスを塗った唇の様にちょっちエロい雰囲気のリナが言った。


「当然だな。利益を追求するのが商人だ。命あっての物種だってぇのに荷を諦める事も出来ず……けっ、面倒な事になるだろうな」


「どうしてですか、マスタぁ。あむあむ」


 行儀の悪い事に、あぐりあぐりと鳥の丸焼きを堪能しつつ問うてくるロミィ。

 そのべた付く口を拭ってやりながらに言う。


「俺達の目的はなんだいロミィ」


「盗賊退治。です」


「うん、半分当たり。ねっ、ケイクン、はいどーぞ」


 差し出された盃に淹れられた暖かな茶からは花茶の一つ、茉莉花茶。

 鼻孔にあがってくる湯気からの豊かな芳香が心地良い。


「ああ、半分だ。サンキュー、ジェシカ」


「ああん? もう半分ってなんだってんだ坊ちゃん。アンタ達はあいつらの討伐クエストを受けて来たってんじゃあないのかい」


 豪快に干し肉を引きちぎって食らい付きながらケーナさんは、次の獲物である果物に手を伸ばす。そしてこれまた豪快に噛り付き、たっぷりと水気を帯びた果肉を貪る。


「ちょ、ケーナさん! 相手は貴族様ですよ。そんな話し方じゃ……」


 見た目は結構幼い目のメルディ嬢だが、眉間に皺を寄せあげて苦言を寄せるその様は、大きくなった子を叱る母の様だ。


「ああ~いい。いいんだよメルディさん。いちおー騎士って肩書があるらしいケド、俺自身にとっちゃ、ふってわいたようなもんでね。まぁ単なる成り上がり冒険者って程度さ。言葉使いなんて適当でいいよ」


「まあ……でも、ケイゴ殿がそうおっしゃるなら宜しいのでしょうか……」


 ふう、とため息をつき、小首をかしげて頬に手を当てる。

 とまぁ、あざとい程にメイドな仕草が、なんだかとても愛らしくて似合うなぁ。


「助かる……で続きだが、討伐や捕縛ってのは『ついで』なんだ。本来の目的は――」


都市(クアベルト)への流通不全の原因究明と解決。じゃん」


「そゆこと」


「あ~いや。アタイ馬鹿だから、まだ揉める理由がわからんのだが?」


 あ~あ~、そんなガリガリと音を立てそうな勢いで頭を掻き毟らなくても……。


「じゃあケーナさんに質問だ。俺達が商人達を置いて討伐に向かうって言ったらどうなると思う」


「おん? あ~助けろって喚くだろうな」


 先ほどの果物が余程気に入ったのだろう、何個かの果実がかいた胡坐の上に転がしてある。

 つか、本当に十代女性のかねえ。リナや、かの戦斧王マリアンヌ事マリーさんも男っポさはあるが

これ程ではない。

 そんな豪快極まりない彼女もぷりっとした、おし……。


「んあ。どした坊ちゃん? 顔真っ赤にして。熱でも出たか?」


「い、いや。何でもない! こほん。え~、その助けを断って更に、馬も使うな。俺達の馬も貸さない……なんて言えばどうなる?」


「ん~? あーっと。ん~~」


「馬以外の荷を運ぶ手段として、先を競う様に騎竜を確保を巡って争いがおこる。かい? ケイゴ殿」


「さすがは先輩冒険者様。正解」


「ふーむ、なるほど!」


 ケーナさん。そこはポンと手を合わせようか?

 何故に膝を打つかな。それじゃオッサンだよ。


「んでぇ、その後、負けた方は残った馬で街を目指した挙句、アイツにまた襲われる……じゃん?」


「大正解。その結果、アイツ(翼竜王)を追った俺達は無駄足を踏む事になる」


「はは~ん、あんたら頭いいんだなぁ!!」


「うむ、それは確かに面倒。ならばどうする……ケイゴ殿」


 リナは食後のデザートにと、ジェシカが戯れに飾り切りにした林檎っぽい果物をしげしげと眺める。

 その形は、(ウチ)の母はやってくれた事の無い『うさぎさん』カット!

 視線をジェシカにやると、どや!? っとした顔を浮かべて、これまた器用に用意した削り出しの楊枝に、幻の物(うさぎさん)を刺して『あ~ん』を要求してきた。


「ああ、ちと我が主殿(マイ・マスター)に御出座して頂く事にしたよ」


 楊枝を強奪。幻の物を頬張ると、少々酸味の効いたリンゴの様な甘さだった。


 

次回、プライベートの都合上いつもと異なります。


一応『10/26(木)AM 02:00』と予定しております。


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