表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
122/157

気が付けば桃源郷


 軋みを上げる体。痛みと言う名の警告を無視してロミを抱えながら湿地を駆ける、チラリと行く先に視線をやると、リナは既に戦闘状態にあるのが見えた。

 急ごうと思わず力が入るとヂクリと痛みが走り、やがて全身からも痛みと言う報告があがる。

 唾棄。

 特に左足の痛みが酷い、そのせいでバランスが安定しない、速度も出ねぇ。


 イラつくっ。


 強い強いと他人(ひと)からさんざん評価を貰っておいて、その実これかよ。

 足りねぇ。

 認識が、覚悟が、技術が、魔術が、武器が!

 そして、なによりも純粋に強さ(練度)が足りねぇ。

 

 ええぃっ違う違う! 反省は後にまわせ。

 今はリナだ。



 盗賊共は翼竜王の登場で恐慌状態に陥った獲物(キャラバン)にその計画通りに襲い掛かっていた。

 リナはその収穫の場に乱入していったらしいな。

 彼女の手により既に二名が斬りふせられ転がっている。生死は不明、どちらにせよ斬られた敵は戦闘は不能の様子。なら上等!

 なお現在は、多少手練れと思われる槍の使い手と近接戦闘中。


(ミサキサン……じゃねぇや、ジェシカ)


(なぁに、心配させてくれちゃうごゴシュジンサマ)


 指示無視(逃げろっつったの)については言いたい事があるが、いまはナシだ。

 俺自身が弱っちぃ事に起因するワケだし、助かった事も事実だしね。


(悪い、あとで謝る。で、状況は?)


(見えてる限りではお姫様に寄ろうとしてる他の敵の姿は無いよ、いま見えてる転がってるのを含めた三人で応戦って感じじゃん)


(あいよ。ジェシカは己の安全に留意しつつ合流を急げ、ロミィは俺とあっちに行くよ)


(はい、マスタぁ)


 俺達の向かう先……幾人かの女性が、昏倒もしくは捕縛されている事を確認。

 その側に居る数名の兵士姿は、解放するそぶりも介抱するそぶりも無い。

 アレハ敵ダ――数は三!


 バラけちまってる商隊の護衛達は、互いに連携も取れず各個に応戦中っと。

 ちぃ、全部で八人じゃないのかよ。最初に見た時より全然多いじゃねぇか、くそったれ!

 斥候や先行していた仲間が帰ってきて合流でもしたか?

 なら、女性達が人質にされて動きにくくなる前に強襲して、救出後に援護に回るのが妥当。


 俺は制動代わりに勢い殺しつつもそのまま突進、女性達を囲んでいる兵士姿の男たちの一人の後頭部へと膝を打ち込んだ。

 当然、男は吹っ飛ぶ。そして昏倒。

 自業自得だボケ、死んでも文句言うなよ。


 ロミィを地に下し、呆気に取られている一人にグロック抜き放つ。

 くそっ、へたくそすぎる。膝を狙ったのに太ももと、左肩とは情けねぇ。

 僅か五メートル程度の距離でこれとは――我ながらひどい。

 泣けるぜガッデム(ド畜生)

 即座に切り替える。距離を詰めて手甲と『巨人の腕力』(ストロングジョー)のコンボ近接でぶちのめす。どこかが折れたのか、しばらく地面を転げ回って悶絶していたたがそのままし突っ伏して気を失ったのを確認。

 残り一つ。


「倒しましたマスタぁ。ここは終わりです」


 っと、はやいねロミィ。

 

 見れば腹を抑えながら、でろりと舌を出した盗賊が白目をむいて気を失っていた。

 殺さず一撃で昏倒とは……本当に心配するだけ無駄だな。

 さすがパイセンっすわ、俺より余程有能っす。


 ココォォ~~ン。

 ォォ~~ン。


 何かが空気を割いた音が幾度か聞こえた。

 これは……狙撃だな。


(ジェシカ? 合流……は?)


(だって! 見てらんないじゃん。いちおー言っとくけど私、殺してないかんね。でも相対してる護衛の冒険者っぽい人がやっちゃうかもだけど)


 それは仕方ない。


(今ので護衛の人たちが優勢になったッポイし、私もそっちに急いで行くね)


(了解)


 なら馬鹿共|《敵》はほぼ全滅か。


「マスタぁ?」


 あれ?


 あ~つめてぇ。


 なんだ、水? 頬に冷たい液体。


 へへっ、ちょっちキモチいいかも。


「マ、マスタぁ!? ジェシ姉ぇ! マスタぁが!!」


 おお? なにをそんなにさけん……で……。





 あ~超かっこ悪い。恥知らずな事にまた倒れちまったらしいな。どうやら仕事が終わったと知った時に気が抜けちまったようだ。なんだか眼の周りがとても冷たくて気持ちいい。濡れタオル的なもので視界を塞がれているらしい、あとなんか後頭部に人肌な感触。


 膝枕ぁ……でもされてるのかなぁ。


 起き上がろうとすると、あちこちイテェ。それに力が入らねぇ。

 傷は癒したハズ、それに自己再生もするハズ、ならこりゃ筋肉痛か? 超回復による筋繊維の成長による痛み……だったけ。俺の無限再生能力にも適用されるのか。

 ならちっとは成長出来ている証として喜ぼうかね。


 頭を置いてる感覚だとジェシカじゃない。無論ロミィではもない。

 リナ姫様か。にしても、はて? リナってこんなにムチムチだっけか?

 素肌っぽい感触。しっとりとした柔い肌。若干の脂肪のその下にはパンと張った筋肉。

 無理矢理に体を起こそうとしたが駄目だった。再度、頭は肉の枕に沈む。

 あ~マジで力が入んねぇわ。


「あ~悪いねリナ、重いだろう」


 冷たさを捨てたくなくて目隠し状態のまま背中を叩こうとしら、ぷよんとした柔らかさ。右腕の内側に確かに感じたその感触(柔らかさ)に驚いて思わずソレ握った。


 ふよん。


「んう」


 ある筈の無い位置に、ある筈の無い巨大な質量のやわやわ。


 ぺたぺた。


「んあ? あ~起きたみたいだな坊ちゃん。どうやらアタイも少し寝てた見たいだ、へへっ」


 にぎ……にぎぎ。


「んふっ。オ、オイオイこらぁ~。起きて早々元気そうだでなにより――あうんっ」


 お、おおぅ!? 


 魔力を少し回して激痛を無視してガバチョと起き上がろうとすると、額に肉の塊がぶつかってまたもや枕に押し戻された……だとぅ?

 その際、冷たさを提供してくれていた布がハラリと落ちた。すると目の前には、覗き込んでいるのであろう女性の胸部に搭載されている『やわらかミサイル』が迫っていた。


 ちっ、近いチカイちかい!


 ぺとん。


 のおおおおおおお! のののった!! のの乗ってるんですけどぉ!


「むぅ、見えないな。我ながら邪魔な肉だ」


 そう言って胸部の『やわらかミサイル』を手でぐにゅりと変形させて覗き込んできた見覚えのあるその女性は……。


「お、おひゃようございます、ケーナさん」


「おうっ、おはよう坊ちゃん。気分はどうだい?」


 はい、や~らかいです。最高です。

 じゃなくてぇ!


「ん~? あっはっはっは! 坊ちゃんの立派なモノも元気そうだなぁ、うんうん」


 へっ? ま、まさか。

 ちろりとマイサンの状況を確認すると……!?

 ぎ、ぎにゃぁぁぁぁぁ!!

 見ないでー。テントみちゃらめぇなのぉ!


「ちょ、えと、これは、その、あのっ」


 しどろもどろになりながら、非常に心地良い枕から緊急脱出。

 名残惜しい気がしちゃいかんのデス。

 走り巡りまくってる強烈極まりない激痛は、この際無視なのデス。

 緊急事態デスシ、オスシ。


「ふふっ。そりゃ~オトコに良くある疲れナントカってヤツだろ? うし、助けてもらった礼だ。このアタイが一丁ひと肌脱ごうじゃないか」


 満面の笑みでマイサンを指差しながらにそう言うと、立ち上がって後ろを向いたかと思うと、ぷりんと大きなお尻を突き出して。


「ほい」


 ぺろんとリナから借り受けた巻頭衣の裾をまくり上げたケーナさん……!?


 あ~! あ~! あ゛あ゛あ゛~~~ぁ。

 あっか~~~ん!

 あかんてコレ!


「ほい、これでいいかい? おっと、おさわりは禁止な! 見るだけにしときなよ~。坊ちゃんにナニはまだ早いぜ? どうだい、オカズ位にはなるだろ? イヒヒヒッ! 」


 いひひ。ぢゃナイデスよぉ!?

 ケーナさんはこんがり健康的な小麦色の肌なのにそれは……まぁるくて、しろくて……。


「失礼します。替えの水桶を持って――ちょっと! ケーナさんなにやってるんですか」


 イカン。誰かが入ってきたらしい。が、そんな事はどうでも良くなってしまっている。


 も、桃やぁ! 白くてでっかい桃様やぁぁぁ。


「あう……あうあう」


 そ、それに……は、はいてな……ワ、ワレ、ワレレレレレ!


 ブバァ!!


「きゃあぁぁぁ、だ、誰かぁー! ケイゴ様が~!」


「あん~?」


 ぺちん。


「おお~? こりゃしまった、下帯が無いの忘れてたゾ。いやっはっはっは!」


 鼻から大量の血を失って巡らない頭で見聞きしたのは、己の尻を叩くように触れて、冗談の様にアリエナイ事を言い放ちながら爆笑するケーナさんの姿だった。



次回 10/16 AM 02:00を予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ