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一学生に過ぎない俺が大魔導師の下僕として召喚されたら  作者: 路地裏こそこそ
~七章 クアベルト編~
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準備しますかね

本日、8/14分は二話更新です。

前回をご覧頂いてからどうぞ。


「さて、まずは身体魔術だ」


 並べた魔巻物(スクロール)の中から、体に付与もしくは効果をもたらすものだけを選び出す。


 先ずわかりやすい所から、『蛇の知覚センス・オブ・スネイク』と『暗闇の看破ブラウズ・ザ・ダークネス』をチョイス。この二つは『視力』に関する効果を持つ。

 元来、蛇の知覚センス・オブ・スネイクは名の示す通りであれば視覚に関するものではないが、魔術としての効果はこれに当たるらしい。

 それぞれの付与を発動させ、身体付与魔術として身に付ける。


 次だ。『魅惑の諫言ファシィニディングアイズェア』これで俺は言葉に『魔』を帯びさせることが出来る。かと言って常時発動は面倒極まり無い、なので手で印を組むことを条件として付与する方法を使う。コマンドワードの代わりって訳だ。


 そしてコイツ……手の平への付与を試す「指でなそった個所」と彼、ゲルトは言った。ならば俺には好都合だ。予想が正しければこの『一夜の幻影ワンナイト・ファンダムズ』の魔巻物(スクロール)の行使権が永続化できるはず……よし! 使えた。

 発動を確認した俺は無駄にならずに済んだ事に胸をなでおろした。


 最後の身体付与術……『雑踏の会話検知ディテクト・ヒア・ノイズ』これはあの盗賊共の倉庫で見つけ、密かにポーチに押し込んだ一品である。

 効果は所謂「聞き耳」スキルの効果と思えばいい。

 常時発動としておいて、ON/OFF可能なように、コマンドワードも仕込んでおく。

 発動してみれば、聞きたい対象の音の種類固定、つまり要らない会話の切り捨ても出来るようでなかなかに高機能且つ、便利な様だ。

 現に、下の階に居る三人娘の会話も聞き分けることができてた。昔の少年漫画に出て来る忍者の如く『十里先の針の落ちる音』とまではいかないが、非常に高性能な術で驚いている。

 

 次に常時装備している指輪へ追加の付与を施す。

 『消臭の霧ディオドライジング・フォッグ』と『減音の栓(サプレッサ・プラグ)』と『防液性の膜(リキッドプルーフ)』――うん。問題なく完了。

 そして最後にブーツへ『魔法の間仕切りマジック・パーティション』を追加付与。

  ふう。よし、すべて成功だ。


 残りの『付与武器 弓エンチャンテッド・ボウ』は予約している武器がある。そいつは今まで、こいつが無かったが為に保留されていた。


 おっと、念には念を入れてっと。


「『付与術 魔力エンチャンテッド・マジック』っ……よし」


 一時的に魔力を帯びる術の効果を確認、下地は万端。では追加だ。


「『付与武器 弓エンチャンテッド・ボウ』」


 保留していたコイツ、狙撃銃「レミントンM700」今は組み上がり付与も済んでいるが、元はバラしてあったそれを手に取る。

 分解しアンに預けて保存した際、既にガス充填の為の付与だけは済んではいた。

 それに対し、今回手に入った魔巻物(スクロール)で武器として扱えるようにしたのだ。


「待たせたな、お前さん(レミントン)


 うん、持った感じでは付与された魔力を感じる。

 あとは暫くして効果が持続しているか確認するだけだ。


幻像刃(ミラージュブレイド)』は飯を食った後でも良いだろう。

 リナの短剣に付与するべきものだしな。


 これでいい。さて今夜もどこかでソロプレイと行きますか。

 新たな力が山盛りで、試してみたい事が山盛りだ。

 折角、手に入れた力。十全に生かせるようにしないとな。


 さて降りるとするか――どれ、三人とも居るかな?

 『人物探知』ヒューマン・ロケーションオン。うん、まだちゃんと下に居るみたいだ。

 俺はロミィを見失った教訓として、気になった全員にマーカーを施すことにした。無論さっき出会った親子にも付けている。



「おっ、いたいた。待たせたな」


「そんな装備で大丈夫か」


 もうこれ、完全に癖なんだろうな。なんつーかイイ顔しやがる。

 こりゃ答えてやらないと拗ねる。


「ふん。大丈夫だ、問題ない……これでいいのかジェシカ」


「ふふ。さっすが私のケイクン。ねね、用事は終わったって事でしょ、早速行かない?」


「お風呂、大きいって言ってました」


「えっ、今の会話は無視なのかいロミィ先輩?」


「マスタぁは偶に分からないことを言います。気にしたら負けってアン様が言ってました」


「そ、そうなのか」


 教育が行き届き過ぎですアン様……俺ちょっと凹んだぞ。


「……んで、出る前にだ。ちょっと二人は俺の部屋に来てくれ。あっいや待てよ…うん、ついでだ。悪いが三人とも一度俺の部屋に来てくれ」


「何か忘れ物かい?」


「そんなトコ」


「了解。じゃあすぐ行こうか、いいかい?」


「大丈夫です。ちゃんと全部飲みました」


「こっちもおっけ~」





「うわぁ、うわぁ、うわぁ~~、す、すごい力を感じる。これ凄いよケイゴ殿!」


幻像刃(ミラージュブレイド)』を施した短剣を見ての驚嘆がこれだ。

 いつもは隠れていてよく見えない縞々の尾がピンと立ってこちらから見えてる事からも、喜び様がうかがえるってものである。

 そんなに欲しかったのか。こんなに喜んでくれるってんなら、次に何か見つけた時にはもう一本も何とかしないとだな。


「気に入ったみたいだな。一本分しか無くて悪いがリナなら使いこなせると思う」


「必ず、絶対に、間違いなく使いこなして見せる、有難うケイゴ殿っ」


 こらこら、妙齢のお姫様が短剣に頬ずりとかしちゃだめですヨ。

 鞘に収まってるとは言え、危ないでしょ。

 それに……ねえ? なんか柄に頬ずりとか見ちゃうとさぁ……なんかエロイじゃん?


「はぁあん。素敵」


 俺は恍惚としたリナからグリンと目をそらす。

 あっぶねぇセリフ吐くんじゃねぇよ。


「ははっ。どういたしまして……じゃ次は二人だ」


「私達にも何かくれちゃう?」


「ワクワクで申し訳ないがちょっと違う。んとロミィからにしようか、ちょっとおいでロミィ」


「はい、マスタぁ」


「後ろ向いてくれ。おっ髪が少し伸びてきたな。少しじっとしててくれるか」


「ふあ……はい、マスタぁ」


一夜の幻影ワンナイト・ファンダムズ


 首裏のうなじ部分にある例の印章を肌の質感で覆う様にイメージして術を起動。

 どうやらうまくいったみたいで、印が消えて見える。

 特殊な看破術でもない限りこれは見破れないだろう。

 ロミィの高い魔術抵抗が気になったが、受け入れ態勢にあれば関係がないみたいだ。


「終わったよロミィ」


「えっ、なになに、何したの?」


「風呂に行くんだし大衆浴場って話だからな。あのくだらない印章を見えなくして見たんだ。どうだろう、二人にはどんな風に見える?」


「本当だ。キレイになくなってる様に見えるよ、ケイゴ殿」


「うん、私にもそう見えるよ。すごいじゃんケイクン……一応犯罪だけど……」


 やっぱそうか。でもいいや、気にしない。


「なぁに、聞かれりゃ応えるさ。マフラーやストールで隠しても問題ないんだ。だから問題ない!」


「そっか。で、でも私は別に良いかな……」


「ん、なんでだ」


「私はここでお湯を使わせてもらえればいいだけだしぃ、そ、それにホラっ、私の印章の位置がちょっとホラッ……ね?」


 そう……なぜか彼女の場合ロミィと違って、うなじではない。俺の手首にある、主の印章は同じ個所にあるのにだ。

 彼女の印章は、胸元の鎖骨よりちょい下目にある。どうやらあの印章は、契約の瞬間触れている個所に発現するっぽいのだ。そんな所なだけに恥ずかしいのは無理も無い……しかし、嫌な思いを外でさせたくはない。更に言えば、俺が庇えるはずも無い場所なのだ。

 少々気恥ずかしいのは俺も同じ。だから、ちびっとだけ我慢してもらいたい。


「俺相手に少し恥ずかしいってのは、汚らしいセリフを吐きかけられる事と比べても嫌か」


「そ、そそ、そういう言い方ズルくなぁい?」


「ズルくない! それに俺は罵倒されたとか、後から聞く方が嫌だぞ。」


「う~~。さ、触らないんだよね……?」


 あんなイイ顔して下品な真似ができるのに、鎖骨付近を触れられるのも嫌とか……。

 俺は毛虫か?

 まあいい。オトメ心とは複雑らしいからな。


「触らん、肌を見なきゃできないから目を閉じるのは無し。上着だけ脱いで胸元は隠しててくれれば大丈夫だ」


「ロミィ、私胸を抑えてるから脱がしてもらえる?」


「ジェシ姉ぇ、隠しますか? お風呂一緒でした。恥ずかしくないです」


「あっ、あれはちょっと違うの! ねえ、お願いだようロミィい」


「おおぉ、ケイゴ殿が真っ赤……そうかっ恥じらいか! う~む勉強になる」


 な、何の勉強してやがる。

 くそうっ、自覚しない様にしてたのに、顔には出てたってのかド畜生。


「う、後ろ向いてるから、さっさとやってしまおう。日が暮れると浴場まで閉められちまう」


「う~~~……うん、わかった」


 き、気にしちゃだめだ。絹ずれの音とか聞えないのだ。

 今回は駄目だぞ、じっと大人しくしてろよマイサン!


 俺は恥ずかし気に強く目を瞑るジェシカへと術を施し、ロミィからの謎の脹脛への噛みつき攻撃を甘んじて受けつつ、リナのフンスフンスと息荒い凝視に耐えると言った業を終えた後、ようやく浴場へと赴き、事多き一日の疲れを流したのだった。

 

 どっと疲れた一日だった。


 そして宿へと戻り、旨い飯を食ったあと、俺には恐ろしい勢いで睡魔さんが「スイマセンそこ通ります」と大挙して押し寄せてきたのだ、なので快く道を譲ってやることにした。

 六時間も寝れば起きてしまう習慣がまだ抜けきってはいない俺は、思惑通りに陽が上る前に起き出すことに成功。

 予定通り、深夜のソロプレイって名の新しい力の慣熟訓練へと向かう事にしたのだった。



次回 08/21 AM 02:00を予定しております。

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