餡子不在の大福劇
突発的に書いた練習(?)小説です。
白露家の穏やかだった午後のひと時は、アポイントを怠った不意の来客によって完膚の無きまでに崩されることとなった。
無粋を極めし客人の名は――
「私の大福がぁっ」
白露三姉妹の次女、アカネの上げる悲嘆の叫声である。
「うっさいわよ、アカネ」
騒々しさに憤りの色を露わにさせた一声を放つのは、アカネたち妹らが座する居間に隣接したリビングの木椅子に腰を掛けて雑誌の紙面を眺め見る長女、ユウヒである。
「アカ姉が煩いのはいつものことじゃん、何をいまさら……」
リビングのフローリングとは打って変わり、畳張りの居間床に腹を沿って寝転ぶ三女クレネは、手元のスマートフォンから目を離さずにボヤく。
「――この中に犯人がいるっ!」
これまた先の突飛さに拍車を掛けた叫び声がもう一度、白露家の穏やかさを容赦無く損なわせる。凛、と細い眉の端を持ち上げたアカネは眉をそうした様に、畳の淡い緑をドサッ、と打ち鳴らして立ち上がる。
「今ならまだ、情状酌量を考えてやらないこともない」
「アホくさ……」
「じゃ、クレネが犯人で」
「はいはい、私がやりましたぁ」
居間のみでスピード解決を見せようとする事件の行方に待ったを掛けるのは、二人の絶妙に噛み合っていない温度差を横目で見やっていたユウヒだった。が、
「てか、アカネは何に対して怒ってるの?」
こちらも微妙に違っていたようである。
「これだよ、これ」
アカネは片手を腰に据え、逆の手で小皿を突き出して来る。
縁枠を赤い一本の細線で着色された飾り気の少ないその皿上には白が――小皿の白とは僅かに色合いの異なった白が乗せられている。くたびれた様相で皿に横たわった白は、柔皮の表面に微細な粉を纏っているのも見える。
ユウヒは一見してそれが大福の皮であることを悟り、引きつった笑みを浮かべる。苦笑の類いである。
「どうしたらこんな器用な食べ方ができるのよ?」
「ストローで吸ったんじゃない?」
「粒餡だったし、ストローじゃダメだった」
――ん?
と、リビングへ移ろったアカネを含めたリビング勢の二人が声を揃えて居間で寝そべる妹の方へ向き直る。
「クレネが犯人なの?」
ユウヒは酷くあっけらかんとするクレネに尋ねる。と、
「さっき自白したし……情状酌量は?」
全くと言って遜色ない、悪びれた感じのしない返答を返して来る。更に横柄なのは、反省の色を僅かばかりにでも表出していないにも関わらず、平然と情状酌量を訴えかけて来る無神経さである。
故に――
「そんな余地――なしっ!」
次女の得意技、全身こちょこちょの刑に処されるのだった。
評判良かったら連載しようかな……。