第五話「探偵との交渉」by901
はい! 今回で五人目です! リレー小説、ヤクートさんに続いて初参加の901さんです! お二人共、小説経験があって安定しているイメージで、ぶっこみ(キラーパス)がなさそうで、ちょっと安心ですね(笑)
だいぶ謎が深まってきましたね。 ではどーぞ!
「楠本さんーーお兄さんの方ですが、本当に残念です」
ひかりは何も言わなかった。探偵、大友は続ける。
「私の依頼主は清宮こころさん、楠本さんの勤務先の人ですよ」
ああ、思い出した。あの忌々しい二人組の男が言っていた名前だ。兄が二股をかけていたという女。
「今日は彼女から伝えて欲しいことがあると言われててね。彼女は楠本さんと付き合っていなかった」
「えっ!」
「そういう噂があったけど、あなたに勘違いをして欲しくないと」
「それは……本当なんですか?」
「真偽は私にも分からないよ。ただ社内で噂になっていたことは確かで、楠本さんが亡くなる何日か前は二人とも距離を置くようにしていたそうだ」
ひかりは安堵した。兄と清宮は、仕事のパートナーとしての関係だったのだ。それを周りが変な噂に仕立て上げただけなのだ。
「楠本ひかりさん、あなたはお兄さんの死の真相を追っている」
大友の顔を見ると、サングラスの奥からじっと見つめられている気がした。
「私はお兄さんに関するいくつかの情報を持っている。それはきっとあなたの探偵ごっこに役立つと思うよ」
ひかりはむっとした。
「ごっこではありません! 警察が頼りにならないから……」
「そうか。ではその捜査に私が協力すると言ったら?」
「本当ですか!」
「君は私の依頼人ではないから、私はお兄さんの情報を無償で渡すことは出来ない。でも君が私の求めている情報を教えてくれるなら、提供してあげてもいい」
情報の交換ということか。ひかりはちょっと考えてから聞いた。
「あなたの欲しい情報って何ですか」
「川井友紀に関する全て、かな」
「え?」
「取引するかい」
「ちょっと待ってください! 川井友紀って……。友紀は親友なんです。そんな簡単に個人情報を話すことなんて出来ません」
「じゃあ自力で頑張るんだね、私も陰ながら応援しているよ」
大友は歩き出してしまう。
「ま、待ってください!」
もちろん待つよ、楠本ひかり。これで交渉が決裂したら意味がない。大友は交渉のプロだった。相手にノーと言わせない話法を心得ていた。
「教えます。友紀のこと話します。だから兄のことを教えてください!」
大友はニヤリと笑い、振り向いた。
「川井友紀を条件に楠本さんの情報を得ていることは、誰にも話してはいけない。これが条件だ」
「もちろんです」
ひかりは勢いよく頷いた。
友紀には本当に悪いと思っている。でもこれしかーー無力な私にはーー方法がないのだ。
ひかりは携帯を取り出して、友紀に探偵に会ったという内容のメッセージを送った。いつまでも彼女に守られるだけの関係ではいけない。私が自ら行動しなくては。
二人は近くの喫茶店に入った。
ひかりは友紀について知っている限りのことを話し、大友はボイスレコーダーを取り出してそれを録音していた。
「あの……私が友紀について喋ったこと、誰にも言わないでいてくれますか?」
大友は白い歯を見せてニッと笑った。
「もちろんだよ」
「あの……これで兄の情報教えてくれるんですか」
大友は鞄から紙の束を取り出した。
「うん、何から話そうかな」
大友がページをめくる手を、ひかりはじっと見つめていた。数枚にまとめられた兄の短すぎる人生。家族である自分ですら手に入れることが出来ない人間関係の情報。その全てを知ることが出来たらーー
「真実は時に残酷だよ」
ーー自分は後悔しないと言えるだろうか。
「それでも知りたいかい」
ひかりは躊躇いを振り払うように首肯した。
私が兄を信じなくてどうするのだ。例え兄が誰かに恨まれるような人間だったとしても、それを受け入れる覚悟は出来ている。
「兄を恨んでいる人は三人いるって言ってましたよね」
リレー小説において、私が参加したのは全五回です。第一作目はSF風、二作目はライトノベル風(部活間戦争)、三回目がヒューマン(病院もの)、第四回は青春(大学生の一夏)、そして今回がミステリー。リレー小説とはその名前のとおり、前の人のものを受け継いでいくものです! ミステリーにおいて、重要なのは「伏線」! 面白いのはその自分で張った伏線をほかの人が拾ったり、自分が拾おうとしたころとは違う形で拾わざるえなかったり、非常に面白そうです。
まあ、未だに一番伏線を使ったのが一番手という(笑) まあ、さすが私のブレイン役と言った形でしょうか?(笑)
次回はウタガメさん! 一度書いてもらったこともありますので、期待してます!(笑)