第二話「手掛かりも暗雲の中」by鯉
はい、二話目です。サブタイトルは未定なので、テキトーに決めます
私がまず行なったことは、兄の行動をどう調べればいいのか、を調べることだった。大学へ行っても教室へ行かず、図書館やパソコン室登校をした。その結果分かったことといえば、素人がただ闇雲に調べ始めたところで、簡単に限界へぶち当たるということだった。
まず「調べる」ということからして何をどうすればいいのか分からない。何十万冊もの本がある大学図書館から目的の1冊を探す方法も、情報のるつぼと化したインターネットから適切な検索する方法も。大学はもちろん、高校・中学のころに習ったはずなのに、どうせ使うことはないと高を括り聞き流していた自分が恨めしい。
仕方がないから、警察や兄の勤めていた会社へ直接聞きに行くことにした。
いざ警察署までやって来ても、入っていく勇気がなかなか出てこない。こんな時に背を押してくれる兄はもういないのに、いつまでもそれを待っている無意識の自分に絶望しかけた。それでも躊躇して、いい加減に帰ろうかと思い始めた頃だった。署内から出てきた昨日の若いほうの刑事と目が合った。私は反射的に逃げ出した。
交差点の隅に公園を見つけ、自販機で買った缶のミルクティーを飲む。久しぶりに全力で走ったせいか、なかなか息が戻らない。いつも大学へ履いていくような靴を選んでよかった。いくらぺったんこの靴でも、おしゃれな靴よりも運動靴のほうが走りやすい。
軽い気持ちの判断に助けられたことで自分をほめ、その直後に警察署から逃げ出してしまった自分が情けなかった。
半分くらい飲み、それ以上が口に入らなくなる。感情が混乱して吐きそうだった。突然運動したからかもしれない。でも私は紛れもない世間知らずで、決意したことすら簡単に投げ出し、せっかくのチャンスすら逃げてしまう。
ベンチにすわりこみ下を向いて悶々としていると、恐々と近づいてくる足が見えた。
「楠本さんですよね。あんなところで、どうされたんですか」
刑事さんが追い付いてきたようだった。
「いえ、なんでもありません」
自然な声、自然な声。そう心の中で唱えながら口に出したのに、泣きそうな固い私の声が聞こえた。それしきの失敗で、もう泣きそうになってしまう。
「私の名前、覚えてますか」
そして次に目に入ったのは、探偵の文字だった。
探偵。実在するのか、というのがまず思ったことだ。あんな職業はテレビの向こうにしかないと思い込んでいた。
自分の兄のことなのに、全くの他人のほうが情報を集められるのか。