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第十話「切れない絆」by南国

投稿遅れて、ごめんなさい。完成はさせたいですね!

「ひかり、おいで。頼みを聞いてくれてありがとう。頭撫でてあげる」

 小さい頃に母が死んでから、兄が私の親代わりだった。残業し帰ってこない父に代わり兄は全ての事をこなしていた。勿論全て任せることはなく、手伝いは率先して行っていたがやはり頼りきりだった。兄は彼女ができてからも変わらず私を優先して。小さい頃、母の墓参りに行ったときも。歩き疲れた私をおぶって帰ってくれた。泣きそうな時、頑張った時、ことあるごとによく頭を撫でてくれていた。そんな兄が誇らしく。ほら、また頭を撫でてくれようとしている。

 私は兄に近づこうとして気がついた。何かが違う。よく見ると兄の腹にはナイフが刺さり血がとめどなく溢れていた……。


 私はうなされ飛び起きた。そして今までのが夢であったことに気づく。ふと、今日は何日であったのだろうかと思い、カレンダーを見る。8月13日。今日は母の命日だった。時計は12時を回っている。いつもなら早起きの兄に叩き起こされ、10時の開店時間に合わせ私は花屋で花を買っていた。私はあわてて支度をし家を出た。

 お墓前の長い、長い坂道を登る。やはりお盆であるためか人が多い。花屋にもかなりの人が買いに訪れていてなかなか買うことができなかった。カーネーションが売り切れてなかったのは幸運だった。普段は開店に合わせて来ていたためこの花屋がここまで繁盛していたとは思わなかった。

 ようやく坂を登り終え、墓地に着く。

 私は いつも通り墓に向かおうとしてふと気づく。今日からは私が桶を持っていかなければならないことを。私は桶を手に持ち蛇口をひねる。7分目まで水が入っていることを確認し水を止めた。しかし壊れてしまっているのか水滴はいつまでも滴り続けていた。

 線香を買い、ようやく支度を終えた私は母の眠る墓に向かった。定期的に手入れに来ていた為に墓は少ししか汚れていなかった。供えていた花をカーネーションに変え、墓を水で清め、茶碗の水を取り替える。全て自分でやるのは初めてだった。そして最後に線香を供え手を合わせる。頭の中に浮かんでいたのは母の思い出。……そして兄との思い出だった。

 全てを終え、立ち去ろうとした私はそこにいるはずの無い人影を見つけた。来てるわけがない。だってあの人は今まで一度もここに来ているはずないのに…。

人影も私に気づいたみたいだった。驚いたように足を止め、踵を返そうとする。

「待って!お父さん!」

 私はつい引き留めていた。

 父は立ち止まり、悩む素振りをみせながらもやがてこちらに向かってきた。

「どうして今ここにいる。もう5時のはずだ」

 その言い方で全てを悟る。父もまた母が死んでからここに来ていたことを。そして私たちに気を遣い時間をずらしていたことを。

「お父さんこそなんでここに。家族のことなんて気にしたことないのに!」

止まらなかった

「わかった。お兄ちゃんが死んでようやく家族の大切さに気づいたんでしょ。もう遅いよ」

 父はずっと前から影で私たち家族のことを気にかけていたことに気づいたのに

「大丈夫だ。これからは私がちゃんとお前を守る。だから一杯泣いて良いんだ」

 私は涙を流していた。兄が死に、その死の真相を確かめるという目標を設定することで辛うじて心の均衡を保っていた。心の支えになる親友もいた。でも親友は容疑者で。私の心は壊れていたのかもしれない。

父は私を抱き締めた。そしてぎこちなく頭を撫でてくる。その感触は兄そっくりで。ついに私の心は決壊した。私は声を上げて泣き続けた。

 泣き終わる頃にはもう辺りは暗くなっていた。

 父が母の墓を拝んでいる間、私は墓の掃除に使った桶を片付け手を洗った。今度は蛇口はしっかりしまり、水滴一つ落ちなかった。二人で歩きながら私は父に全てを話した。父は話を聞いた後

「無茶だけはするな。私にとってはもうお前しかいないんだ。私にできることはなんでもする。だから無茶だけはしないでくれ」

 と真剣な表情で言う。

 私はその暖かさに再度泣きそうになる。父に見えないよう遠くを向くとそこには見知った人影があった。

その人影は一つの墓の前で手を合わせている。その墓には谷津井と書いてあった。

「お父さん、私少し用事があるから先帰ってて!」

 と言って飛び出す。

 ちらりと見えた人影は大友だった。そして谷津井という姓。

 私はつい最近その名字を聞いている。

 大友の仕事は『川井友紀を見守ること』

 私の中では一つの仮説が生まれていた。

 私は真偽を確かめるために大友のもとへ走っていった。

今回は小話は思いつかないので休止です(笑)

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