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エルドガルドギルド  作者: 白鰻
プロローグ
1/208

00 飛龍狩りのエルド

 灼熱の炎。煮え滾ったマグマ。

 ここはとあるゲーム、とあるダンジョンの最深部。そこで、あるパーティーがモンスターの討伐ミッションを行っていた。

 難易度は文句なしの最高クラス。このゲームでも五本の指に入る高難易度ダンジョンに加え、敵は超巨大な火竜。半端なプレイヤーでは到達できない世界がそこにあった。


 灼熱の炎を身に纏い、火竜は容赦なくプレイヤーに襲い掛かる。盾役の戦士ナイトは必死に仲間を守るが、それも限界。ただ攻撃を受け、ヒーラーである僧侶プリーストが回復を行う。MPマジックポイントが尽きればそれで終わりという、完全にじり貧の状態に陥っていた。

 魔道師ウィザードの少女はすでにMPが尽き、このミッションを完全に諦めている様子だ。 


「やっぱり無茶だったんだ……私たちだけで火竜を討伐するなんて……」

「ここで全滅すれば、一気にランキング圏内から降格。もう、上位に追いつくことは出来ないな……」


 そんな彼女と共に、盗賊シーフの男も絶望の表情を浮かべる。レベルが見合わなかったのか、彼の攻撃は火竜には効かない。この男もまた、何もできない状況に陥っていた。

 

 このパーティーは一人のギルドマスターによって動く、小規模ギルド。決して弱くはない。むしろ、最近急成長している期待のギルドだった。

 だが、そのおごりが過ぎたようだ。


「せっかく百位以内に入ったのに、俺たちの夢もここで終わりか……」

「マスター……」


 屈強な戦士ナイトのギルドマスター。戦意を失ったメンバーを必死に守り、力の限り戦った。

 後悔はないだろう。この巨大なVRMMOで百位以内に入るという名誉を手にしたのだから。

 だが、男は思う。もう少し、もう少し高みに上り詰めたかった。上位の者にしか見れない世界、実力者たちの集う上位の世界、それをただ少しだけ見たかったと――




「おいおい、諦めるなよ。半分削ったんだろ? あと半分、精々気張ろうじゃないか」


 突如、ギルドメンバーたちの前に現れる一人の男。

 その見た目は剣士ソードマンだが、盾は持っていない。防具は全て布で、剣は刀身の長いロングソード。白を基調としたその服装は、まるでどこかの勇者のようだった。

 彼は飄々とした様子で、暴れる火竜を眺める。


「おー、超上級巨獣じゃねえか。これ、ここまで削ったのか? ひょえー、こりゃ将来有望だな」


 いつ襲われてもおかしくないその状況でも、男は余裕の表情だった。自分の強さに絶対的な自信がある。そういった様子だ。

 ギルドマスターは彼の顔に見覚えがあった。

 忘れるはずがない。自分の目標であり、いずれ到達したいと思っていた高み。その頂点に君臨する男が、今目の前に存在していた。


「エルドだ……」


 ギルドマスターは右手を強く握りしめ、叫ぶ。


「間違いない! 攻略、討伐、総合ランキング一位! 飛龍狩りのエルドだ!」

「なっ、TPトッププレイヤー中のTPトッププレイヤーじゃねえか! 何でここに!」


 総合ランキング一位、それはこのゲームにおける評価指数合計値においてトップを意味する。即ち、このゲームにおける最強の存在がこの男、飛竜狩りのエルドだった。

 どこのギルドにも属さず、己の実力のみでトップに上り詰めたソロプレイヤー。このゲームをプレイする者なら誰もが憧れるだろう。

 エルドは照れ臭そうに頭をかき、ギルドメンバーたちの前に立つ。


「いや、持ち金尽きちまって、宝石でも掘って一発当てようと思ったんだけどな。まあ、いいや、よし! 報酬の二割は貰うぞ!」


 彼が剣を抜き、戦いが再開される。

 知能の高い火竜はこの突如現れた強者を警戒し、今まで攻撃を行わなかった。しかし、敵が剣を抜いたとなれば話しは別だ。竜は巨大な雄たけびをあげると、強靭な爪を使い、エルドに斬りかかった。

 手始めの接近戦。だが、彼は真面に殴りあう気など、さらさらない様子だ。


「おっ、来たな。スキル【ジャンプ】!」

「た……高い……」


 エルドが飛龍狩りと呼ばれる所以、それはこの異常に成長した【ジャンプ】のスキル。このスキルを駆使し、彼は天を飛ぶランクの高い巨獣を軽々と討伐していくのだ。

 しかし、火竜も見す見す敵を逃すはずがない。空中で格好の的になったエルドに、竜は容赦なく灼熱の炎を吹き付ける。

 攻撃は直撃……したかと思われた。しかし、ここでエルドは驚きの戦法に出る。


「やれやれ、俺は盾を持っていないんだ。勘弁してくれよ」


 なんと、彼は敵の火炎をロングソードによって吹き飛ばしたのだ。これには盗賊シーフ魔道師ウィザードのプレイヤーも度肝を抜かす。頭の回転が速いのか、盗賊シーフのプレイヤーはこのカラクリを理解した様子だ。


「【チャージ】のスキルで火炎を弾き飛ばしたんだ……」

「【チャージ】って、相手を吹き飛ばすスキルでしょ! そんなこと出来るの!」

「出来ているから仕方ないだろう!」


 攻撃エフェクトにも当たり判定はある。理屈的には可能だった。

 しかし、それを実際に行うとなれば話は違ってくる。襲い掛かる高速の火炎にスキルコマンドを打ち込むなど、とてもノーマルな人間が出来る事ではない。このエルドというプレイヤーの異常性が、充分に分かる戦法だ。


「スキル【ダブルスラッシュ】!」


 驚くギルドメンバーをしり目に、火炎を突破したエルドは空中から連撃を繰り出す。二回ヒットの高威力な攻撃。これには堪らず、竜は大きなうめき声をあげる。威力は充分だった。

 攻撃に成功したエルドは、軽快に地上へと着地する。彼は戦闘開始時からずっと空中で飛翔降下しながら戦っていた。流石は【ジャンプ】が得意な飛龍狩りだ。


「どうした火竜! 俺を燃やしてみろよ!」


 エルドは刀身を竜に突き付け、そう叫ぶ。

 自信に道溢れた頂点の貫禄。彼の戦いを見たギルドメンバーたちは、ただ言葉を失っていた。





 七つの大陸を巡る壮大な世界観。二十三のジョブが織りなす戦略性のある戦闘。

 女性でも楽しめる生産システムの充実。子供でも安心なデフォルメ化されたモンスターにエフェクト。

 発売されて早一カ月、いま日本で最も注目されているゲーム。


 それが最新のVRMMORPG【ディープガルド】だ。


戦闘職: 剣士ソードマン戦士ナイト盗賊シーフ格闘家モンク弓術士アーチャー銃士ガンナー海賊パイレーツサムライ忍者ニンジャ使役士テイマー

     

魔法職: 魔道師ウィザード僧侶プリースト召喚術師サモナー吟遊詩人バード踊子ダンサー付術師エンチャンター道化師ジェスター


生産職: 商人マーチャント農家ファーマー錬金術師アルケミスト鍛冶師ブラックスミス機械技師メカニック裁縫師テーラー

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