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神様はずっと見ている  作者: 浅川
本編「神様はずっと見ている」
8/11

 あと一時間で日付けが変わる二十三時。



「お邪魔しまーす。あっどうも初めまして! 阿部と申します……岩田さんですか、よろしくお願いします。

 あのいきなりすみません。確認しておきたいのですけど、この家って猫ちゃんを飼っていたりします?

 ……それならよかった。私、猫アレルギーなんですよー。こんな素敵な大きいおうちだとペットの一匹や二匹、飼っていてもおかしくなさそうだったので聞いちゃいましたー」



 玄関からよく通った声が。



 猫アレルギー? そうか!



 それであの日は中へ入って来れなかったのか。俺を守ってくれたのはソラだったか。



 ということで奏ちゃ……いや瀬谷さん宅には四人の男女が集まっていた。



 この四人が一堂に集まるとは人の縁とは面白い。



「荒木先生こんにちは! こんな所でまたお会いするとは人の縁って面白いですね。しかも、こんな美女二人と一緒だなんて羨ましいです。まぁ荒木先生はイケメンで、お金持ちなんでこのくらいの美人じゃないと釣り合わないですよねーやっぱり……」



 う、うるさいなもう……俺が今、思っていたのと同じ言葉を口にしただけでイラついてくる。



「オシャレな曲が流れていますね。なんて曲です?」


「これは、愛はとまらないって曲ですね。マネキンって映画の主題歌に使われた曲でこの前、観たら曲も気に入ってダウンロードしました」



 岩田が阿部に曲紹介するがこれからこの曲の雰囲気に合ったホームパーティでも開かれるならいいのだがそれとは程遠い会合が行われる予定だ。



 音楽は明るい曲を流していれば怖い幽霊も現れないのではと魔除けみたいに流し続けている。



 効果はあるのか分からないし気休めみたいなものだけど。



 瀬谷さんは赤いパーカーを着て赤ずきんちゃんみたいにフードを被り膝を抱えて震えていた。



 あれから岩田にみっちりとくっ付いてしまい離れないそうで岩田も手を焼いている



 そんなか弱い女性二人だけでは心細いと俺も岩田より泣きつかれてここに同席しているのだが、俺だって怖くないわけではないし男だからって役に立つとは思えない。が、見捨てられないのは未練もあるゆえか。



 瀬谷さんは俺のことをどう思っているのか?



 どうやら俺のことは好ましく思っていないらしい。会ってからたった一日どころか一時間くらいしか経っていないのになぜと思ってしまうが、俺に対するあの視線の痛さは敵意と呼んですらいい……。



 なんか知らんがこれは脈なしだ、そう思ってからはもうちゃん呼びからは卒業することにした。



 きっとそう呼んでしまったらより嫌悪感が増してしまうだろうから自戒の意を込めて。



 さてこの問題の行く末はどうなるのか。



 普段はうるさいとしか思わないが、こういう時に阿部が持つ天性の明るさは護符のようかもしれない。



 自慢の高笑いで幽霊を追い払ってくれないだろうか。



「では、詳しくお話を聞かせてもらいましょうか。奏さんの様子からもこれは緊急性が高いとみてこんな遅くでもやって参りましたよ。しかし、美人って何やっても魅力的に映りますねー。怯えている姿も可愛い! 美人の特権、ずるい」



 この余計な一言でさえ士気が上がるようで場が暖まる日がくるとは。それだけここは冷え切っている。



「岩田。説明してくれ」


「はい」



 顔に大火傷を負った長島が住所を知らないはずの瀬谷さん宅を襲撃、鍵まで開けた。



 次の日の朝には長島なのか定かではないが謎の黒い人影を俺が見て、ものの数秒で姿をくらます。昨日の今日、関連性があるとみてもいい。



 改めて振り返るとこんな所業は生身の人間であるなら無理だ。やっぱり人間ではない存在が……。



 幽霊なんだから壁をすり抜けられるなんていうのはこちらの常識だ。



「すごい。奏さんの他にも荒木先生も怪異らしきものを目撃しているんですね。

 それは只事ではないと思いますよね。しかし、ここ日本なのにどちらかと言えば洋画チックな現象ですね。奏さんが直接的に襲われるし、その幽霊も顔にひどい火傷を負っている所なんて特に。それで、ここでさらに特筆するべきなのが……そいつが岩田さんの父親であると」


「はい」



 岩田は消え入りそうな声だった。



「岩田の父親は直前に瀬谷さんに手を出そうとして返り討ちに遭っている上に、娘である岩田にも同様のことをしようとした、それで岩田はたまらず家から逃げ出して……逆恨みも甚だしいが復讐する動機はある。普通なら警察に相談するような事件のはずなんだけどな……」


「……果たして岩田さんの父親は生きているのか? そこが疑わしと思って私に相談したんですね」



 俺は頷く。



「俺が岩田を車に乗せた二日前、岩田はその日に火事が起きた神社の敷地から出てきました。

 父親から逃げていた最中だったそうです。顔の火傷はその火事が原因で負ってしまったんじゃないか? と思ったのですが、もはや亡くなっていて化けて出てきた説の方が信じたくないけど、信じられるだけの現象が次々と起こっているのが現状でして……その火事で一人が亡くなっているそうですし」


「なるほど。そうなると遺体の身元が早く分かってほしいところではありますね。……ところで皆さん。その火事になった神社のことはご存知ですか? 旗上はたがみ神社って名前なんですけど」



 ここで俺は火事になった神社の名前を初めて耳にする。



「いえ、知らないですね。俺はこの街には生まれた時から住んでいますが神社があること自体、火事になって大騒ぎするまで知りませんでした。岩田は?」


「私は……なんかあそこら辺に神社があるなーくらいには認識していましたかね。それでも中へ入ったのは二日前が初めてです。奏ちゃんは?」


「知らない。私、ここには三年前に引っ越したばかりだから」



 風邪ひいたみたいに掠れた声だった。そっか、ここに住み始めたのは三年前か。



「最近、ここに住み始めた人はもちろん、昔からここで暮らしていた人にもあまり認知されていないこの旗上神社……実はそんな地元の人間よりもオカルトマニアの中でも特に熱狂的な愛好家の間では注目されている神社なんですよ」


「えっ? そうなんですか!」



 俺は驚きと共にあの火事の日に見た異様な光景を思い出す。



 あれはやっぱり、そっち系の事象だったか。



「どんな曰くのある神社なんですか?」


「うん……ここまできたら話すしかないか。ネットで検索したくらいじゃパパッと出てくる情報じゃないんですけどね」




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