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神様はずっと見ている  作者: 浅川
本編「神様はずっと見ている」
7/11

 瀬谷宅の庭、外回りを見回ったのちに荒木は出勤した。



 異常はなし、とされてもこれで安心できるものでは何もないのを二人は、荒木も承知していただろうが形式だけでもやってもらうことにした。



「足跡でもあればよかったんだけどね。それなら幽霊じゃないって断定できる」



 あの長島は生きているのか、幽霊だったのか?



 そこをはっきりとさせたいのだろうがそんなことを議論してもどのみち無意味かもしれない、そんな徒労感が二人にはあった。



「つばきちゃんは幽霊っていると思うの?」


「うーん、否定はしないかな。だって大昔から霊って昔話であったり絵としてたくさん残っているじゃん。

 それこそ恨みを持ったまま亡くなって、その成仏できない霊が復讐する怪談なんかもあるし……怖い話に限らずとも亡くなった家族が夢に出てきたとか、事故や災害から天国にいたあの人が守っていてくれていたような気がするとかの話もよく聞くし意外と皆んな信じているんじゃない?」


「それは私達の心の中に知らずのうちに棲みついてしまっただけの精神的なものだよ。人は良くも悪くも発達した脳のおかげで妄想力は半端ないからね。子供だと何でも信じちゃうし」


「妄想って……」



 あははと笑い流す岩田。



「それじゃあ、奏ちゃんが見た正道さんは幽霊じゃないのか。

 大火傷もしているし、治療もせずいつまでもそんな真似ができるとは思えない。病院に行けば火傷の原因も問診されて事件が疑われるだろうし。ならもう気に病むことはないかもね」


「うん。それならいいんだけど一度でもあの火傷に耐えてまで私を気絶させた執念で、しばらくは元気出ないかな」



 瀬谷が甘えるように岩田へ絡みついてくる。



「あっ! これ荒木先輩のスマホだ。返すの忘れてた……」



 テーブルの上にある荒木のスマートフォンに気がつくと岩田はそれに手を伸ばす。



「返すの忘れたって、なんでつばきちゃんがあぃ……荒木さんのスマホを?」


「先輩が庭とか調べてくれている時に連絡先教えてくれませんかった頼んだの。そしたら電話帳を開いたスマホ渡されて……終わるまでにアドレスを写すなりしておいてって言わてそのまま返すの忘れていた」


「そういうこと。なんで連絡先を知りたいと思ったの?」


「いや……たまたまとはいえ私達の事情を把握しているわけだしいざという時に連絡取れた方がいいかなと思って……」


「そう。まぁスマホないと不便だしこっちから届けなくても今日中に取りに来るんじゃないのかな」


「だといいけど……」



 岩田は何を思ったか立ち上がり一歩前へ。



「やっぱり……一度この家を霊能力者みたいな人に診断してもらわない? 私達に今できることって警察に相談する以外だとそのくらいだし、念のためにも」


「霊能力者に診断してもらうって……私がこの世の中で最も信用していない肩書きの一つなんだけど。どうせちゃんと仕事したのか曖昧なまま法外な料金取られて終わりでしょ」


「そうかもしれないけど……私の知り合いにいるんだよね。霊感がすごく強くて幽霊が()える人が。しかも近所に住んでいるから直ぐに来られる」


「そんな人が近所にいるの……なんで知り合いになったの?」


「亡くなったお母さんが家事代行の仕事をしていて……そこでよく利用してくれているお客さんに霊感が強い人がいたの。それで何度か家に来てご飯をご馳走するような仲なんだ」


「そんな深く入り込んでいるの。気をつけた方がいいよ」


「大丈夫。そんな悪徳な商売をする人じゃないから。それどころか……」


「それどころかなに?」


「ううん。やっぱり悪いから良いかな……奏ちゃんの知り合いにはいないの? その分野に精通している人は」


「いるにはいるけど……。私、ある雑誌にコラムを定期的に寄稿しているんだけど、そこで知り合った記者にオカルト分野の記事もよく書いている人が」


「ならその人でも……きゃ」



 再び瀬谷は岩田を覆うようにして絡んできた。



「そんなことよりさぁ……」



 ピンポーンとチャイムが鳴る。



「誰?」


「もしかして荒木先輩かも? スマホ忘れたのに気がついたのかも」


「早かったね」



 やって来たのはやはり荒木であった。忘れたスマホを取りに来たのだ。



「はい、どうぞ」



 岩田が荒木のスマホを渡す。



「いやーうっかりしてたよ」



「仕事には間に合うのですか? まさかまたスピード違反して……どうしました? なんか変なものを見ている目していますけど」


「誰かがいる」


「えっ? 誰かって……」



 後ろにはリビングの出入り口前で腕を組んでいる瀬谷が居た。



「奏ちゃんじゃないですか。いるのは当然ですよ」


「違う。もっと奥に、黒い影が……あっ動いた、おいどこへ行く!」



 怒鳴る荒木は断りもせず靴を脱ぎ、中へ駆け込む。



「嘘だろう。あんな一瞬で……いなくなっている。どこへ消えた。外に出た? 瀬谷さんもそこに居たなら見ただろう?」


「私はそんなの見ていないですよ。誰なの?」


「誰かって……まさか正道さん?」


「俺は会ったことがないから分からないけど全体的に黒くて、髪の毛の長さから女性ではない気がする。そいつがさっきまでリビングの中に居て、俺の方をじっと見ていた」


「リビングの中に居たってことはまだこの中に……?」


「けど、人の形はしていたんだけどそれにしては不自然だったんだよな。肌が全く出ていなくて全身黒で、人間というよりなんかこの世のものじゃない変な物体、それこそ幽霊でも見たような……」


「あっ奏ちゃん!」



 瀬谷は気を失ったのか、建物が倒壊するように何も言わず倒れてしまった。



 荒木はあれが生きた人間であるならどこかに痕跡があるはずだと部屋を探し回るが、どこか覇気がなかった。それよりもただ途方に暮れるように動いているようにしか見えなかった。



「荒木先輩どうしましょう?」



 岩田が泣きながら荒木に訴える。



「これは……お祓いでもしてもらった方がいいんじゃないか」




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