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神様はずっと見ている  作者: 浅川
本編「神様はずっと見ている」
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「そうなのか!」



 荒木は長島正道=娘にまで手を出す屑野郎だと岩田によってイメージがこびりついていたので、その本人からの訂正は天がひっくり返るようであった。



「荒木先輩、騙してごめんなさい。正道さんは悪い人ではないんです。ある計画のためにやも得ず……」


「……ある計画ってなんだよ」


「荒木先輩が……想いを馳せている奏ちゃんをちょっとだけ懲らしめるためです」



 騙したのは瀬谷をこららしめるため……。



 さらなる新情報に荒木は理解が追いつかないようで口をパクパクさせている。



「なぜ奏さんを……あんな美女だと女性陣の中には嫉妬する人もいるということですか? あと荒木先生、奏ちゃんのことを?」


「それは今いいでしょ。そういうことなのか?」


「ふふっ。平たく言えばそういうことですかね。私はさらに妬んでしまう過去がありまして。

 高校生の時にとある大きなオーディションを受けて最終選考の五人までは残ったのですけど、その中に初々しい奏ちゃんが混じっていて……もう五人を並べた時点で一人だけ抜きん出ていてこの人で決まりだろうなって空気が結果発表される前からありました。

 ネット上で一般者投票もできる形式だったのですが、今年受けた人は運がなかったねーというコメントはよく目にしてました」


「オーディションって岩田、芸能界目指していたのか?」


「母が舞台女優なので、子供より親が張り切っていた面もありましたけど私も挑戦してみたいとは思っていました」


「それで約十年越しにステップアップできるきっかけを奪われた奏さんに復讐を?」


「いえ、さすがに十年もずっと憎んでいたわけではありませんし母の方があの小娘ーって喚いて根に持ってました。ほんの悪戯気分で、このくらいならいいだろって軽い気持ちです。

 たまたま駅の改札から出てくる奏ちゃんを目撃してこの近くに住んでいるのか? と偶然、知ることができなかったらこんな事やろうとも思いつきませんでしたよ」


「奏さんは岩田さんのことを覚えてはいなかったんですよね?」


「はい。覚えてもらっては困るのですけど、本当に覚えていないと分かるとなんだかムカついたのはどうしようもないですね。私はついSNSの投稿をチェックしてしまう癖が長年ついてしまい……すぐに気がつきました」


「……どんなことをしようとしたんだ?」


「ふふっ。同じような業界に居る正道さんも彼女には良い印象はなかったそうなので、協力的だったのがこの計画を加速させました……」


「長嶋監督も憎いって思っていたんですか?」


「正道さんは苦労人です。四十代前半まではアルバイトをしていました。

 そのアルバイト先のCMにデビューしたばかりの奏ちゃんが起用されていたそうで店の広告ディスプレイに映像が、店内放送でもナレーションが……もういい加減にしてくれと思うくらいリピートされました……。

 末端の労働者が成功者の象徴である芸能人を見ると殺意がわいてくるのはよくあることですよ。お前はカメラの前で、マイクの前で愛想よくしていればお金が貰えるんだからいいよなって。ふふっ」



 有名人税とはこの事かと生々しい叫びを二人は聞いた気がした。



「こうしてタッグを組んだ私達はこんな作戦を実行します。ある日の生配信で視聴者からホラーゲームの実況プレイやってというリクエストに断固として拒否していたので、奏ちゃんはホラー系が苦手なのかと。なら彼女の自宅に幽霊が出没したってシチュエーションを演出できたら……」


「もしかして……」



 荒木はすっかり豹変してしまった岩田に震えるも口をはさむ。


「ふふっ。正道さんは誠実に実行してくれました。映像系のスタッフだったので特殊メイクの知見もあり、顔半面に大火傷のメイクを施したのかと私は感心してしまったのですが……どうやら気合いが入りすぎたあまり人間も辞めてしまったみたいですね」



 シーンと静まりかえるリビング。



「ふふっ。それは不運な事故であるのは正道さんといつまで経っても連絡がつかないことで薄々は。

 でも阿部さんの仰る通りですね。正道さんは私の守護霊になった……今も正道さんは私の横に居て()()()()()()()()()()()()。……だからもう悲しくなんかない!」



 岩田はそれこそ鬼が憑依したみたいに目つきが変わった。



 それに二人はギョッとする。



「これからもあの神社を()()()()()()()()()()ためには……何より()()()()()()()()()()()には……あんたには犠牲になってもらわなくちゃいけないな。敏腕記者が取材に行ったきり行方不明……なんて素敵なたねだ。まさに怪談にはうってつけだ」


「私? 私が! そ、そんな」



 岩田の両肩からあの青い腕が繰り出された。長さはとても人間の腕とは思えなかった。その両手が阿部の首を覆う。



 阿部は天井を向き目が虚ろになる。



「ちょ、ちょ、そんな殺さなくても! そうだ、目を閉じればまたいなくなって……」


「無駄だ。俺は今、()()()を介してこの空間に干渉している。この娘はこの空間の住人だ。存在はここに確定している」


「さ、左様で、ございますか……」



 荒木は気絶する。もうこの現実を受け入れられない故だった。



 首が千切れることも、血が噴水のように吹くこともなかった。



 阿部は圧縮されるように首から縮まる。そして最後は弾けたように飛散した……。




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