表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイク小説 短辺集  作者: 霧笛の火魔人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/15

【リアル】

「聞こえてますかー?」


「聞こえてるよ、おはよう。今どこ?」


「コンビニの、一つ手前の信号です」


「あー、見えた」


朝7時。

私たちは、ツーリングの待ち合わせをしていた。


「トイレに行く?」


「大丈夫です」


「じゃ、このまま出発しましょう」


ヘルメットに仕込んだインカムで会話をしながら、バイクのエンジンをかけた。

相方が駐車場に入ってきたので、軽く手を振り、そのまま二人で出発した。


今日は金曜日なので、通勤ラッシュが始まる前に市街地を脱出したいと思っていたのだ。

国道を二台のバイクが連なって走る。


「今日の淡路バーガーって、食べたことがあるんですか?」


「去年、シービーさんのグループで行ったことがあるんですよ。おいしかったです」


今日は、バイク仲間のルークさんが発起人で、現地集合のツーリングとなった。

相方とは家が近いこともあり、一緒に行くことにしたのだ。


バイクのツーリングと言えば、集団で走るイメージを持つ人もいると思うが、そんなのは昔話だ。

今は、バイクが5台集まって走れば、共同危険行為という名の「暴走行為」扱いされることがあるのだ。

実に理不尽だが、車のドライバーたちには、一定数の「バイクを絶対許さない」と敵視する人がいる。

しかも、ドライブレコーダーで動画が撮られてネットに晒される時代なのだから、じつに面倒くさい。


私たちは、おとなしく車の後ろに連なって走った。


「目の前の車に、(Baby in Car)ってステッカーが貼ってあるのわかる?」


「見えますよ。この時間じゃ乗せてないでしょうね」


「英語圏の人がこれを見ると、驚くらしいよ」


「マナーとか思いやりの話ですか?」


「いや、(Baby in Car)って、車の部品に乳児が使われているって意味になるらしい」


「わはははははは」


「A baby in the carが正しい英語なんだって」


「和製英語だったんですね」


ちょうど信号に引っかかり、私たちは先頭で停止した。

相方が、対向車のほうを指さして言った。


「車の顔って、なんで怒った目つきのやつばっかりなんでしょうねぇ」


「全部じゃないけど、吊り上がった目つきのデザインが多いよね」


「あんまりカッコイイって思えないんだけどなー」


「後ろの車は目が丸くて、かわいいよね?」


「軽自動車でしょ? やっぱり女性がターゲットの車両だからなのかな?」


バックミラーを見ると、パステルカラーの車がいた。


「国内でガラス部品を作るのが難しくなって、ヘッドライトが樹脂製に切り替わったから、一斉に四角いライトになったんだよね」


「国内でガラスって作ってないの?」


「ないことはないけど、ほとんどが中国製になったよ」


「最近、ものすごく小さい丸いライトが増えてない?」


「それはLEDライトのことでしょう? 時代の流れだよねぇ」


「車は怒り顔が多いけど、バイクって虫顔が多くなったよね」


「なんでだろうね」


相方とツーリングをするときは、だいたいこんな他愛もない雑談が続く。

もちろん、ツーリングルートの話や、「次の交差点を右」みたいな連絡もする。



順調に進んでいたのに、急に車が詰まってきた。

片側二車線の国道で、対向車線は車が少ない。


「まだ通勤ラッシュの時間じゃないから、これはマズいなぁ」


このパターンは、事故か工事だ。


諦めて、おとなしく車の間に挟まって走る。

相方は、私の隣にやってきて、ほぼ並走状態になる。

普通車線にいるので、私が追い越し車線寄りの位置だ。


「あ~、ノロノロ運転になってきた~」


車は渋滞しだすと、極低速でノロノロと走ることがある。

いわゆるクリープ走行だ。

しかし、マニュアルミッションのバイクにとっては、この状態はとても厄介だ。

速度が低くなりすぎると、ほとんど一本橋を走っているようなもので、バランスを取り続けないといけない。


「あ~、通勤ラッシュの時間になっちゃったよ。ざんねーん」


走行している間に、対向車線も車が詰まりはじめ、朝の恒例行事が始まってしまった。

車の間をスクーターが猛スピードですり抜けていく。


「怖くないのかねぇ」


「私にはできないなぁ」


朝のスクーターは異常だと思う。

毎朝、同じ時間に同じ場所を走るスクーターにとっては、慣れた走行なのだとは思う。

それでも、車が急に車線変更したり、ドアを開けるとか考えないのだろうか。


「うわーーー、いまのスクーター気付きました? すり抜けをしながら、スマホでメール打ってましたよね」


「見た見た。でも、以前にも見たことがあるんですよねぇ」


まぁ、たまにしか見かけないけど、関西以外でもこんな奴がいるのだろうかと考えてしまう。

もしかして、全部同一人物だったりしたら、さらに驚きだが……


「車で、運転しながらスマホ弄ってるのは、そこら中にいるよね」


朝の通勤ラッシュで低速走行が続くと、かなり高い割合で「ながら運転」を目にする。


「この前、ハンドルの上に漫画を置いて読みながら走っている車を見たよ」


「それ、自動運転の車じゃないですか?」


「車体に会社名が入ったプロボックスに自動運転がついてたら、そっちの方がびっくりだわ」


「怖いですねー。早く自動運転が普及してほしいです」


「いやーー、日本で自動運転は無理じゃないかなー」


「え? 自動運転の車って走ってますよね?」


「完全自動運転はまだですよ。例えば、死亡事故が起きた時に運転手とメーカーのどちらに責任があるかとか、全然決まってないですからね」


「完全自動運転なら、メーカーじゃないんですか?」


「例えば高速道路で前後左右に車がいて、前の車が追突事故で急停止したとする。右にも左にも車両がいて避けられない、急停止が間に合わず、できても後方の車が追突する。さぁ誰を道連れにするかという判断になるけど、プログラムに人命の優劣をつけることはできないよね」


「テレビで自動運転の車を見たことがあるけど、あれは何?」


「完全自動運転ではなく、自動で走るけど事故した時は運転手の責任にするから、目を離しちゃダメって車だよ」


「え゛~」


それでも、自動運転に向けての開発は続いている。

いつかは、こんな問題も解決するのかもしれないが、私が生きている間にそんな時代が来るのだろうかとも思う。


「そういえば、道交法の改正でイヤホンしながら自転車に乗ると違反になりましたよね。バイクのインカムって大丈夫なんですか?」

「車のハンズフリー通話は合法だから、バイクのインカムも問題ないよ。でも走行中にインカムを触ると違反」


「使ってもいいけど、触ると違反なら、それは違反では?」


「信号待ちとか、停止中に触るのはOK」


「車も一緒ですか?」


「そーそー、スイッチがハンドルについていても、触ると違反……じゃないかなぁ?」


そんな事を話していると、後ろの車が車間距離を異常に詰めてきた。

バイクのテールランプとの距離が30cmくらいしかない。


「うわ、なにこの車、こわーーー」


「バイクのことが嫌いなドライバーなのかもね。さっきのスクーターみたいなのがいると、嫌われるのも仕方ないとは思うけど」


「これって、煽り運転だよね。私のバイクは、後方もドライブレコーダーで撮っているもんね」


「バイクが車の間にいると煽るドライバーがいて、バイクが車の横を抜けていくと『すり抜けだー』って騒ぐドライバーがいる。理不尽だよねぇ」


私たちは、げんなりした気分で市街地をノロノロと走り続けた。

やがて、市街地を抜けて車がいないダム湖沿いの道に出た。


「あーーー、これこれ」


「気持ちいいですねー」


やっと、気持ちの良いツーリングが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ