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第22話:オーバーロードと、幸運の強制終了(シャットダウン)

「118秒の継ぎ目に、この増幅器で過負荷を叩き込む。……行くぞ、カウントダウン開始だ!」


カズキの合図とともに、一行は120秒の終焉に向かって動き出した。 カズキの計画はこうだ。アリスの魔力を「逆位相」でぶつけ、ループの接続を物理的に「弾く」。しかし、それにはコンマ数秒の精密なタイミングが必要だった。


『無駄だ! 貴様らのような低スペックな存在が、我が完璧なループの周期を合わせられるはずが——』


ゼノンが嘲笑い、ループを強化しようとコード(魔力)を編み直したその時。 カズキの「運」が、最悪のタイミングで、最高のバグを引き起こした。


「い、いくよ師匠! せーのっ……あ、あれ!?」

アリスが放とうとした魔力光弾。しかし、彼女は足元の小さな石ころ(※運によってそこに配置された)に躓き、放たれた魔力は全く違う方向——真上の「何もない空間」へと飛んでいった。


「アリス!? 軸がズレてるぞ!」

カズキが叫ぶ。本来ならこれで計画は失敗し、一行は再び120秒の最初に戻るはずだった。


しかし、その「ズレた魔法」が、偶然にもゼノンがループを調整するために開いていた『管理者用隠しポート(裏口)』を直撃した。


『なっ……!? バカな、なぜそこが分かった!?』


さらに、転んだアリスを助けようと駆け寄ったクレアの足が、地面に埋まっていた「古代の錆びた水道管」を偶然踏み抜いた。 プシュゥゥッ! と噴き出したのは、高圧の霊水。それが霧状になって周囲に広がり、カズキが持っていたアルミホイルのアンテナに反射。


カズキが驚いて落とした電卓が、地面に叩きつけられた衝撃で**「÷ 0(ゼロ除算)」**というエラーを吐き出し、それが霊水の霧とアルミホイルを媒介にして、世界全体の演算システムへ「想定外の負荷」として伝播した。


「……なんだか知らないが、計算が合わないぞ!? エラー値が無限大インフィニティに跳ね上がった!」


『ギ、ギャアアアアア! 演算が……処理が追いつかん! ループが、逆流する……!!』


ゼノンが叫ぶ。カズキの「工学的な狙い」を、仲間たちの「ポンコツなミス」と「異常な幸運」が100倍に増幅してしまったのだ。 120秒のループは、ガムテープを引き剥がすような不快な音を立てて崩壊。 無理な演算を強いられたゼノンは、自分自身が「無限ループ」のゴミ箱データへと変換され、砂嵐となって消滅した。


気づけば、一行は元の「時間の進む森」に戻っていた。


「……ふぅ。まあ、計算通りだな(※1%も合っていません)」

カズキが冷や汗を拭いながら眼鏡をクイッと上げる。


「さすがカズキ殿! あの瞬間にわざと電卓を落とし、ゼロ除算を誘発させるとは……まさに神算鬼謀!」

クレアがキラキラした目で称賛する。


「そ、そうです! 私が転んだのも、師匠の計算のうちだったんですよね!?」

アリスも調子に乗って胸を張る。


「(……絶対違うわ。でも、結果的にループを抜けたし、ゼノンも消えたから良しとするか)」

アイリスだけがジト目でカズキを見ていた。


だが、安堵したのも束の間。 崩壊したループの衝撃波で、森の木々がなぎ倒された。その先に現れたのは、禍々しい黒いタワーがそびえ立つ**【魔王軍・第4開発局】**。


そして、そのタワーの頂上から、巨大なホログラムスピーカーを通じて「声」が響いた。


『……面白い。「Pochi31415」という聖なる暗号パスワードを持つ者の仲間か。ノートの残りは我が手にある。取り戻したくば、この「デバッグの塔」へ来るがいい』


カズキの顔が引き締まる。

「……ポチ……3.1415……。僕のパスワードを、あんな悪趣味な声で読み上げるとは……。許さん。アイリス、行くぞ。あいつらに『情報セキュリティ』の何たるかを徹底的に叩き込んでやる!」


カズキの怒りのボルテージ(と帰還への執着)は、ついにMAXに達した。

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