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第21話:検証の120秒と、ループの活用法

無限ループに閉じ込められてから、客観的な時間は一秒も進んでいない。しかし、一行の主観的な時間は、すでに数時間が経過していた。


「——41、42……。よし、アリス! 今だ、火球ファイアボールをあの岩に当てろ!」


「はいっ、師匠! ……えいっ!」


カズキの指示でアリスが放った火球は、岩に当たる寸前で「120秒の壁」に突き当たり、シュンと消滅して元の位置(アリスの杖の先)に戻った。


「……なるほど。やはり運動エネルギーの保存則もループの影響下にある。だが、アリス。お前の魔力残量はどうだ?」


「それが……不思議なんです。魔法を撃っても撃っても、120秒経つと魔力が全快しちゃうんです! だから、全然疲れません!」


「……素晴らしい。『リソースの自動回復機能』か。デバッグ環境としては最高じゃないか」


カズキは目を輝かせた。本来なら精神を病むはずの監獄を、彼は「何度でもやり直しができる完璧なシミュレーター」と定義したのだ。


「クレア、お前もだ。その120秒の間に、限界まで素振りをしろ。筋肉の疲労も120秒でリセットされるなら、神経系の反復練習だけをノーリスクで積み上げられる」


「なるほど……。一撃の速さを極めるための、果てなき修練。……カズキ殿、これはもしや、私に与えられた試練なのですね!」


クレアは目を血走らせ、恐ろしい速度で剣を振り始めた。120秒経つたびに彼女の構えは鋭くなり、その「動作の最適化」はカズキも目を見張るほどになっていた。


そんな中、アイリスだけはループの境界線ギリギリに寝転がり、虚空を見つめていた。

「ねえカズキ。このループ、ポテチの味はしないけど、寝不足だけは解消されるわね。起きた瞬間に『睡眠直後』の状態にリセットされるから、実質24時間起きてても眠くならないわ。これ、ブラック企業の夢のシステムじゃない?」


「アイリス、お前は管理職だろうが。……さて、解析は終わったぞ」


カズキは地面に、120秒間で消えないように「自分の腕」に直接マジックで書き込んだ数式を指差した。


「このループ、一見完璧に見えるが、118秒付近でわずかに『演算の揺らぎ』がある。ゼノンとかいう奴がループを繋ぎ合わせる際、メモリのポインタを戻す瞬間に発生する『わずかなラグ(継ぎ目)』だ」


その時だった。 空間が歪み、余裕の笑みを浮かべたゼノンが姿を現した。


『フフフ……。どうだ、終わりのない120秒の味は。そろそろ精神が摩耗し、絶望に……——って、なんだお前たちは!?』


ゼノンが絶句した。 そこには、異常なまでにキレッキレの動きで素振りをするクレアと、超高密度の魔法をノータイムで連射するアリス、そして腕にびっしりと数式を書き込み、不敵に笑うカズキがいた。


「よお、ゼノン。お前のループ、なかなか良い『デバッグ・サーバー』だったぞ。おかげでアリスの魔力出力は30%向上し、クレアの剣速は音速に近づいた。……お礼に、お前のプログラムの『継ぎ目』、教えてやろうか?」


『な……何を言っている……! 貴様ら、狂ったのか!?』


「狂ってないさ。ただ、進捗(ループ脱出)の準備が整っただけだ」


カズキはアリスの杖に、アルミホイルを巻き付けた自作の「ノイズ増幅器」をセットした。


「118秒の継ぎ目に、この増幅器で過負荷オーバーロードを叩き込む。……行くぞ、カウントダウン開始だ!」

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