表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/45

第18話:逆位相の魔法(パッチ)と、幸運のデバッグ

「——チッ、なんて酷いコード(バグ)の書き方だ。これじゃスタックオーバーフローで世界がフリーズするのも時間の問題だぞ!」


ルーターから溢れ出す、砂嵐のようなノイズを纏った魔王軍の兵士たち。彼らは実体を持たない「バグの塊」であり、クレアの物理攻撃もアリスの通常の魔法も、触れたそばから「無効化エラー」されてしまう。


「師匠、攻撃が当たりません! 魔法が、変なモザイクみたいになって消えちゃいます!」

「カズキ殿、私の盾も通り抜けてくる! 奴ら、存在そのものが法則を無視しているのか!」


「落ち着け! 奴らが『バグ』なら、正攻法で戦うのは非効率だ」

カズキはカバンから『アルミホイルの芯』と、『ガムテープ』、そして『断線したイヤホンジャック』を取り出した。


「アリス、その杖の先端にこのアルミ芯を固定しろ。僕が今から、奴らのノイズを打ち消す『逆位相の魔導波』の周波数を計算する。お前は僕が合図した瞬間に、全力で『一番気持ち悪いと思う魔法』を放て!」


「ええっ!? 気持ち悪い魔法!?」


「そうだ! 奴らのノイズ(正位相)に対して、真逆の波(逆位相)をぶつけて、波形をゼロにする。……アイリス、お前はルーターのポートを物理的に押さえろ! 外部からのパケット流入を阻止するんだ!」


「わ、わかったわよ! もう、管理者なのに指先がビリビリするわね!」


カズキは関数電卓を叩き、魔王軍のノイズ周期を読み取る。

「……今だ、アリス! 周波数2.4GHz、位相を180度反転……撃て!」


「えーい、もう、ぐにゃぐにゃになれー!!」

アリスが放ったのは、攻撃魔法ですらない、ただの「ねじれた魔力の塊」。しかし、それが魔王軍の兵士に触れた瞬間、パズルのピースが噛み合うようにノイズが相殺され、敵が霧散していく。


「消えた!? 師匠、すごいです!」


だが、魔王軍も黙ってはいない。ルーターの中枢から、さらに巨大な「バグの腕」が伸び、カズキを押し潰そうと迫る。


「カズキ殿、危ない!」

クレアが「(今度こそ魔王軍ごとルーターを叩き壊して、彼の帰還を阻止する!)」という邪な、もとい必死な想いを込めて、全力の唐竹割りを振り下ろした。


しかし。 その瞬間、カズキが偶然足元の『空き缶』を踏んで滑った。

「おっとっと!?」


カズキが絶妙な角度で転倒したことで、クレアの剣先はルーター本体をわずか数ミリ逸れた。そして、剣が叩きつけられたのは、ルーターの横にあった『バグのエラー・セグメント』。


カキィィン! と小気味よい音が響く。 「……え?」 クレアが呆然とする。彼女の渾身の一撃は、ルーターを壊すどころか、内部に溜まっていた魔力の「接触不良」を完璧に解消する「衝撃修理ショック・リペア」となってしまったのだ。


「ナイスだクレア! 今の振動で、スタックしていたデータが流れたぞ!」


さらに、カズキが転んだ際に手をついた場所は、ルーターの『リセットボタン』の上だった。


「——システム再起動リブート。魔王軍のパッチを全消去、初期設定に戻す!」


ルーターから清浄な青い光が放たれ、森を覆っていたノイズが一気に晴れていく。 魔王軍の残党たちは、「ありえない……我々のバグを、ただの『転倒』で修正するだと……!?」という断末魔(?)を残して消滅した。


静かになった森の中。 カズキの手元には、かつてないほど安定して青いランプを点灯させるルーターが残った。


「……勝った。通信状態、極めて良好(バリ5)だ」 カズキが満足げに頷く。


一方で、ヒロイン三人は顔を見合わせた。

「(……失敗したわ。ルーターを壊すどころか、カズキの運のせいで完璧に修理されちゃったわね……)」

アイリスが小声で吐き捨て、アリスとクレアは深く溜息をつくのだった。


「よし! 通信を確立するぞ。……あ、あれ?」

ルーターの画面を見たカズキの顔が、急に青ざめた。


「……どうしたの、カズキ?」


「……『パスワードを入力してください』……。工学部のWi-Fi、先週パスワード変更したんだった……。思い出せない……」


「「「(やったーー!!!)」」」


三人の乙女たちの歓喜の咆哮(心の声)が、森に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ