第6話 信じてもらうための嘘。怒りの矛先は、あのバカへ
シエラが怒ってくれていた時に話に出ていた、こんな場所に人間の子供がいるなんてありえないってやつと。周りにこの子の両親の姿は見えないし、辺りを探っても気配がしなかったっていうやつ。
このことについて、私が分かる範囲で、後で話を聞くって言われていたんだ。
なんかね、この洞窟にはあまり人が来ないんだって。どうやら強い魔獣が多くて、それなりに力のある人じゃないと、入ってこられないらしい。
ちなみに魔獣だけど。私はライトノベルに出てくるような、魔法と剣、そして動物に似た生き物、魔獣がいる世界に行きたいって、バカ神にお願いしたでしょう? グルルたちは、その魔獣で間違いなかったよ。
そんな、そんな強い魔獣ばかりで、強い人しか入れないような洞窟に、私みたいな人間の子供がいるなんて、どう考えてもおかしい状況でしょう? だから私に何があったのか、後で聞きたいって言われていたんだ。
となると、問題だらけの私。バカ神のことや、自分が地球で暮らしていたとか、話せないことばかりだからね。だからグルルとモルフィンがシエラに怒られている間に、どう答えようか考えていたの。
ただ、すぐに考えられるようなことじゃないし、私が考えたら、変あることになりそうだなと思ってね。
私は考えた末、ライトノベルに出てくるような設定を借りる事にしたんだ。それでどこまで通用するかは分からないけど、私が考えるよりは良いはず。そして何か質問をされたら、その時々で答えていくしかない、ってね。
私が借りた設定はこれ。私はおじさんと2人で、どこかの森に住んでいた。でも私には新しい家族が必要だって、おじさんが街まで連れて行って、家族を探してくれようとした。
それで、一緒に街まで行くのに、おじさんは一気に遠い場所まで移動できる魔法が使えたから、その魔法で街まで行こうとしたんだけど。どうもおじさんが、その魔法に失敗しちゃったみたい。
気づいたら私はここにいて、おじさんはどこにおらず。いきなりのことにビックリしていたら、グルルが私に所に来た。
と、いうことにしたんだ。完璧かって言われるとそうじゃないけど、とりあえずはこれで何とかなるんじゃないかな?
私はドキドキしながらグルルたちを見た。話は一応終わったよ? どうか? どうかな?
3人とも黙ったまま。何も言ってくれないから、さらに緊張が高まる。だけどその数秒後、最初に声を出したのはグルルだった。
『何をやっているんだ、お前のおじさんとやらは!!』
ってね。それからは3人とも、おじさんに対しての文句が止まらなかったよ。
『こんな小さな子に、そんな危険な魔法を使うなんて』
『そこは魔法なんか使わずに、しっかり街へ行くべきだろう』
『こういうことも起きるって、なぜ考えなかったのか』
『ヒトミがどうなっても良かったのか』
『ひとみ、とっても怖かったんだじょ!! 怖いのダメなんだじょ!!』
『なんてバカな人間なんだ』
『どう考えても、大の大人がやることとは思えない』
『これだから役に立たない人間は』
『本当に信じられない』
『ひとみ、怪我もしたんだじょ! グルルとおじさんのせいなんだじょ!』
『俺のせいじゃないと言っているだろう!』
だそうですよ、バカ神様。おじさんはバカ神のことだからね。みんな、もっと言ってやってもっと言ってやって。私は思わず頷きそうになりながら、みんなの話を聞いていたよ。
そしてモルフィンは、私が怪我をした原因に、しれっとバカ神も加えたよ。その辺はちゃっかりしている。
ただ、この感じだと、みんな私の話を信じてくれたみたい。本当のことを話せないのは本当に申し訳ないけれど、余計なことは話せないから良かったよ。
『はぁ、ヒトミ、本当に大変な目にあったな』
『もしかしてヒトミが、他の人間の子供よりもしっかりしているのは、悪いけれどそのおじさんとやらのおかげかもしれないわね。ダメなおじさんのせいで、ヒトミがしっかりしなくちゃならなかった感じかしら。ヒトミ、頑張ってきたのね、偉いわよ』
『そのおじさん、ダメなんだじょ。おいら、おじさんに会ったら、いっぱい怒ってやるんだじょ!!』
『そうだな。俺もしっかりと話をしようじゃないか』
『私ももちろんね! でも……そうね、実際問題。ヒトミ、おじさんはあなたがここにいることを、知ることはできるのかしら? それに迎えにくることができるか分かる?』
「たぶんわからない。しょれに、まほ、しゅぐになんかいも、ちゅかえないっていってた。だから、むかえにこれないかも」
バカ神が迎えにくるとは思えないし。迎えに来ようとしても、また何かミスをして、結局迎えに来られないってなりそうだし。
というかそれよりも、みんなが『お話し合い』をしようとしてくれているのを、あの場所から見ていて。みんなにいろいろ言われないように、見てみぬふりをしていたりして。
私が迎えにかないかもと言うと、グルルとシエラが。大きな溜め息を吐いたよ。




