第40話 みんなの無茶振りと、ちびちび可愛い子パーティー設立
『ヒトミ、こっちこっち~』
『早く来て~』
「うん! いまいく!!」
呼ばれて急いで農具小屋へ入る私。農具小屋の中は、外は明るいけれど、やっぱり暗くて、足元に気をつけなくちゃって感じだった。
『暗い? 大丈夫? 明るくしようか』
「だいじょぶだよ」
『そう? あ、でも、これからスノウタイガを治してあげないといけないし、それにはパンを食べさせてあげないといけないから、こんな暗い場所でパンを用意するのは大変でしょう? あの子のところに行ったら、少しだけ明るくしてあげるね。あんまり明るくすると、あの子が嫌がるかもしれないし』
「うん。しょれがいいかも。おねがいちましゅ」
『任せて!!』
そうして、また歩き始めた私。が、最初に、足元に気をつけなくちゃと、ちょっと思っていたくらいだったけど、進むのが案外大変だった。大人の姿で農具小屋へ入れば、大したことはないんだろう。でも、今の私は3歳児。
農具小屋は広いうえに、農具を越えたり潜ったりと、ちょっとしたアスレチックをこなすことになり。スノウタイガと呼ばれる魔獣の子のところまで行くのに、結構時間がかかっちゃったって。ようやくモルーたちが見えたと思ったら、みんなに遅いって言われちゃったよ。
『もっと、パパッとくぐれない?』
『ここはジャンプ』
『そっちはくるりん』
『ヒトミはまだまだなんだじょ』
その辺の物で、農具小屋の進み方を見せてくれた妖精さんたち。できるかっ!! ってやつばかりだったよ。15センチ幅くらいの隙間を潜ったり、ジャンプと言いながら、普通に飛んで行ったり。
くるりんに至っては、空中でよく分からない、アクロバティックない動きをするっていうね。どう考えても、私にできない動きでしょうよ、まったく。
って、そんな出来もしない動きを、見てる場合じゃない。スノウタイガはどこ? 私はとりあえず妖精さんたちに、できるかなぁと、簡単に返事をしながら、みんながいた場所を見たよ。だけど……。
「あれ? しゅのたいががどこ?」
そこには、他の妖精さんたちしかいなかったんだ。
『そこにいるよ』
『箱の後ろ』
『静かに挨拶してあげてね』
『ちょっと緊張』
静かにって、私は静かだよ。動きが騒がしいのは妖精さんたち方じゃない?
『じゃあ、少し明るくするね! それっ!!』
黄色い色の洋服を着ている妖精さんが、くるりんと回ると、ぽわっと、そんなに強くない光で周りが明るくなったよ。
「ありがちょ!」
『じゃあ、呼ぶね!』
『お~い、出てきて良いよぉ~』
『ヒトミしか来てないよ』
『早くパンを食べて、元気になろう!!』
『それで僕たちと遊ぼう!!』
「あしょぶのはやい。だめ。まじゅは、ぱんをたべてゆっくり。しょれから、あしょぶのをかんがえる」
『えー』
『早く遊びたいのに』
『でも、ちゃんと元気にならないで遊ぶと、また具合が悪くなっちゃうかもなんだじょ。おばあちゃんたちが、いつも言ってたんだじょ。いっぱい遊びたいなら、ちゃんと治してからにしなさいってだじょ』
『そっかぁ』
『じゃあ、遊ぶのダメだね』
『おーい、早く出てきなよ。早くパンを食べて、ちゃんと治さないと遊べないって』
私たちが話している間も、スノウタイガは木の箱の裏から出てこなかった。それで、妖精さんたちが待てなくなったみたいで、迎えに行っちゃって、私はハラハラしちゃったよ。
だって、無理やり出て来させて、怖がってパンを食べてくれなくなったらどうするの? グルルやパパたちの方の、治癒師さんが治せる症状ならいいけど、私のパンじゃないと治らないものだったら、食べてくれないと困るでしょう?
『ほら、こっちだよ!』
『小さくて、可愛い僕たちしかいないから、大丈夫だよ』
『そそ。僕たち、ちびちび可愛い子パーティー』
『モルーも小さいし、ヒトミも小さい。だからみんなで、ちびちび可愛い子パーティー。人間は集まると、よくパーティーって言ってるもんね。何だっけ? 冒険者パーティー』
『そうそう、パーティー!!』
『『『うん!! ちびちび可愛い子パーティー!!』』』
『可愛い子なんだじょ!!』
スノウタイガを迎えに行っていない妖精さんたちと、モルーが返事をする。
『あ、でも、1匹違う』
『なんかさっき、違うこと言ってた』
『ちょっと、キララを見た方が良いと思う』
『自信ありすぎ』
そう言いながら、みんなが見たのは、さっきから呆れたように、何も言わず私たちを見ていたグルル。キララっていうのは、鏡のことね。
『キララだったら何度も見たぞ。この家に来てからな。いやぁ、もともと俺は、自分がカッコいい存在だと思っていたが。キララで改めて見てみたら、思っていた以上に格好良くて、自分でも驚いたぜ』
『『『……』』』
『……じょ』
『パンを食べても、目は良くならないみたい』
『なんか心配になってきた』
『僕たちは、本当に可愛い。でもグルルは……』
『ダメなんだじょ』
ん? 私はここに、何をしに来たんだっけ? みんな、ちょっと自己評価を表に出しすぎじゃないかな? 確かに可愛いし、カッコいいけども。
『……ちびちび可愛い子パーティー?』
ん? 今の声、初めて聞いたかも。
『そう!』
『そうだ! 君も小さいから、ちびちび可愛い子パーティーの仲間じゃない?』
『あ、そうか! そうだよね。じゃあさ、やっぱり早く出てきて、パンを食べて元気になって、ちびちび可愛い子パーティーでいろいろやろうよ!! 遊びだけじゃなくていろいろ!!』
『うん! それが良いよ!!』
まさか、そんな理由で出てくるわけ……。
『……うん、ボクいく!! ちびちび可愛い子パーティー、なんか良い!!』
……え? 本当に? まさかの返事に驚いた。可愛いって言われただけで出てくるなんて。でも、まぁ、出てきてくれるなら何でもいいか。
ペタペタという足音が、木の箱の裏から聞こえてくる。そうして数秒後、私たちの前に現れたのは、ホワイトタイガーの子供に似ている、でも大きさは3ヶ月の子犬くらいの、とても小さくて、本当に可愛い魔獣だったよ。




