第34話 パン作りは不思議と新たな問題の始まり?
あ~、うん。まさかパンを焼いただけで、これほどの問題が起きるとは思いませんでした。いや、問題というか、良いこと? もあったんだけど、大半はちょっと待って! と言いたくなるような問題が、私がパンを焼いたことで起きてしまったんだ。
焼くまでは、特に何も問題はなかったんだよ。あれ? と思うことはあったけどね。
まず、教える前に、とりあえず私のやり方で、パンを作ってみて。それで、私のやり方でもパンが焼けるということが分かったら、細かく作り方を教える。ということを伝えてから、パン作りを始めた私。
できるかも分からないのに教えて、もしも焼けなかったら、みんながっかりするだろうし。私も自信満々とは言わないけど、これでよし! なんて言っておいて、焼けなかったら恥ずかしいし。
そうして始まったパン作り。最初にやったのは、粉の量を測ること。と、ここでもう、さっき言った、あれ? と思うことが起きたんだ。
粉やサトとか、いろいろ分量を測るためにもらった入れ物。 もちろん、その入れ物にメモリなんて付いているはずもなくて。だから、あとで量を調節できるようにと思って、食材に使っても大丈夫なインクのペンで、粉を入れた位置に線を書こうとしていたの。
でも入れ物に、強力粉に1番似ていた粉を入れたら、なぜか、ここまで粉を入れる! って感じで、入れ物に線が現れたんだ。
「えっ!?」
思わず声を上げた私。そんな私を見て、ママやバクスターさんたちが心配して、どうしたの? って聞いてきたから、ここに急に線が出たって伝えたの。
でも、ママも誰も、線って? と言って、誰1人としてその線が見えないことが判明。戸惑ったよね。もちろん話している最中も、線はちゃんと入れ物に出ていたから。
だけど、みんな見えないって言うし、何度も同じことを言って、変なことを言っているって思われたくなかったから。私はすぐに見間違いってことにして、そのまま線のところまで粉を入れることにしたんだ。
ただ、この線はそれだけで終わらなかった。粉を線まで入れ終わり、他の材料と混ぜるための入れ物に粉を移すと、線がフッと消えてね。何なんだろう? って思いながら、次に別の小さな入れ物でサトを計ろうとしたら、またフッと線が現れたんだよ。
これがチリ、バタ、ふっくりんと、全部同じ現象が起きたんだ。しかも、線まで入れた量は、私がいつも使っていた量とほとんど同じ感じ……。
まさかね、と思った私。だって、私にしか見えない線で、しかもそれで量が計れるなんて、普通は思わないでしょう?
でも、なぜこんな線が現れたのかは分からないけど、これで測るのは問題ないって、思っている自分もどこかにいて。ちょっとドキドキしながら、その後の工程も、いつも通りに進めることにしたんだ。
私のやり方はこう。まず入れ物に粉を入れた後、その上にサトとチリとふっくりんをそれぞれ乗せる。ふっくりんはチリから1番遠い場所に乗せるよ。そしてそこまで準備ができたら、水を入れて混ぜる。
生地がまとまってきたら、常温のバタを入れて、生地に弾力が出て、なめらかになるまでこねる。
と、そこまでいくのに15分くらいだったかな。生地は問題なくこねることができて、ここで少しホッとできたんだ。
次は、パンに必要な一次発酵。この世界にはラップはないから、新しい濡れ雑巾を生地の上にかけてから、暖かい場所で発酵させることに。
ここで、みんなに説明はあとでって言ってあったけど、さすがに気になったみたいで、何でって聞かれたけど。細かい説明はさすがにできないから。
一般的に言われている、焼き上がったパンが、ふんわりして軽い感じになって、とっても良い匂いのパンにするためって、説明しておいたよ。
そうしてまた、ドキドキしながら待つこと約1時間。そっと濡れ雑巾を上げてみると、生地は最初の大きさから、約2倍に膨らんでいて。指でそっと確かめると、最初よりも生地がふっくら柔らかくなっていて、弾力もあり。
この出来上がりに、私は心の中で、よし!! と、叫んだよ。そしてここからは、不安よりも、やり遂げるぞっていう気持ちの方が大きくなったかな。
次の作業は、生地を取り出して分割し、手のひらで生地を優しく、中心から外側へ均一に押してガス抜き。ちょっと休ませるベンチタイムを約15分くらいしたら、いよいよ成形。成形といっても、今回は丸パンだから、綺麗に整えたくらいだけどね。
そして2回目の発酵。この2次発酵で膨らまないと、別に完璧に失敗ってわけじゃないけど、やっぱりふんわり柔らかパンにならないし。
なんかパンが割れるっていうか、綺麗にできないっていうか、出来上がりが変わってくるからね。ここから約40分くらいが、またドキドキタイムだったよ。
そうして約40分後。私の目の前には、さらに膨らんだパン生地が。だけどホッとする間もなく、焼きの作業に入る。
厨房に大きな窯があって、そこへパンを入れると、バクスターさんが火魔法で薪に火をつけてくれたよ。
でも、そう。私は、これほど本格的にパンを焼いたことがない。家では普通にオーブンで焼いていたからね。
ということで焼くのは、見た目だけで判断することに。火を強くしたり、弱くしたりと、バクスターさんには申し訳なかったけど、細かく焼いてもらったよ。
目を離すことなく、ただただパンが焼けるのを待った私。ただ、このあたりで、ある問題が出始めていたんだ。というか、グルルは気づいていたみいで、何で教えてくれなかったのか。
……て、まぁ、無理があるか。街に慣れてきたとはいえ、人との生活が初めてのグルルに、それを求めちゃね。
それに私も、この世界へ来た時のことを、完璧に忘れていたし……。
こうして私がパンが焼けるのを待つ間に起きた、小さな問題はだんだんと大きく、そしてたくさんの問題へと発展していき。最終的に私の最初のパン作りは、まさかの大騒ぎになってしまったんだ。




