第30話 試食と、グルルとモルーによる辛口評価タイム
「どうだ、おチビ」
「う~ん、これは、あたちのちらないこなかも」
「そうか。今のところ、使えそうな粉は半分くらいか」
「じぇんぶ、ちゅかえるかわからない。しょれに、あたちがちがうっていったこなが、ちゅかえるかもちれない」
「ああ、順番にやるんだろう?」
「うん、じぇんぶやる」
バクスターさんに呼ばれて、厨房へやってきた私たち。今日はバクスターさんとレントンさんがいて、他の料理人さんたちは休憩に行っていたよ。
そしてまずはバクスターさん。バクスターさんは、パパたちの家で専属として働いている料理長さん。
バクスターさんのご飯は、本当に美味しいんだ。グルルとモルーなんて直談判して、たくさん料理を作ってもらい、私のマジックバッグにしまったくらいだよ。しかも1週間に1回くらいのペースで頼んでるし。
バクスターさんは喜んでたくさん作ってくれたけど、さすがに今度、頼みすぎってちゃんと注意しないとね。
グルルとモルーは、いざという時のためとか言っておいて、お腹が空くとしまっておいた料理を食べちゃうからさ。せっかく作ってもらっても、すぐになくなっちゃうんだ。
ただ、バクスターさんは、料理の腕はもちろんだけど、他のスタッフからの信頼も厚く、料理以外でもバクスターさんに悩み相談をしに来る人がいっぱいいてね。今日も私たちが来る前に、相談を受けていたみたい。
『ヒトミ、そろそろ終わるじょ?』
「あと、ふたちゅ」
『その後は、何を調べるんだじょ?』
「べちゅのこなちらべて、しょれから、ほかのじゃいりょちらべる」
『まだまだいっぱい調べるじょ?』
『モルー、邪魔をするんじゃない。それが終わればパンを焼くと、さっきヒトミは言っていただろう』
『そうだったじょ!? 邪魔はダメなんだじょ! グルル、邪魔しないんだじょ!』
『だから邪魔をしているのは、お前だ』
調べているのに煩いなぁ、なんて思いながら、残り2つの粉を調べ始める私。バクスターさんは、その粉の特徴を私に細かく教えてくれるよ。
バクスターさんたちには一応、こんな粉なんだけどって伝えてあったから、私にも分かりやすいように、説明してくれるんだ。
「これはどうだ?」
「う~ん、ちょっと、しゃらしゃらしゅぎ?」
「これは、よく俺たちが使う粉だ。パンにもお菓子にも、どちらにも使えるものだな」
粉の中には、クッキーにしか使えないものや、パンにしか使えないものなど、用途が決まっている物があって、本当にそれにしか使わないらしいの。
でも私は、自分で選んだ粉でも他の粉でも、ずべての粉を使って、パンを作ってみるつもり。だって、私の感覚が間違っているかもしれないし、もしかしたら、クッキーだけと決まっている粉が、実は美味しいパンを作れる粉かもしれないでしょう?
「料理長、パンが焼けました!」
「おう! どうする? 先にパンを確認するか?」
「うん、やきたてのほうがいいとおもう」
毎回、私が調べた粉でパンを作って、様子を見せてくれるの。それで今日調べた粉で作られたパンが焼けたから、いったん粉を調べるのを止めて、みんなで焼きたてのパンを試食することにしたよ。
そうして始まるグルルとモルーによる、パンの評価タイム。
『こっちのパンは、カサカサが強いんだじょ。こう、ふっくら感が少しもないじょ。それに、スカスカなんだじょ。このスカスカが良くないんだじょ』
『そうだな。それに深みがないと言うか、コクがないと言うか、風味がイマイチだな』
『ふっくらほんわか、ふわふわふわ~んには、ぜんぜんおよばないんだじょ』
覚えたての言葉を使うモルー。
『そうだな、程遠いな』
『こっちのパンは、かたかたで、もっとダメなんだじょ』
『論外だな。俺なら問題なく噛めるが、ヒトミには食べさせられん。モルーにもな。おい、あまりこっちのパンは食べるな。歯が悪くなるぞ。まだ、最初のパンの方がいい』
なんだかんだ、いつも喧嘩している2人だけど、こういう時はちゃんとモルーを心配してくれるグルル。モルーも、グルルが本気で注意している時は、ちゃんという事を聞くよ。
『うんだじょ』
グルルもモルーも、いつも容赦なく、きちんとパンの評価をするんだ。でもその容赦ない感じがいいらしい。バクスターさんも、他の料理人さんも美味しいパンのために、大切な意見だと、評価を聞き、質問をし、メモを取る。今もそう。
「確かにな。お前たちの言う通り、このパンは、おチビのパンとはまったく別物だ」
「しかし、我々にとっては、このパンが基準ですからね」
「これよりもふわふわなものだと、時々手に入るリーチの粉で作ったパンだが。あの粉は年に数回しか手に入らんからな」
「貴重な物ですからね」
「きーちのこな?」
「ああ、キーチって言う木の実があってな。その木の実の中身を乾燥させて、粉にするんだが。この木の実がなかなか見つからない、貴重な実なもんでな。なかなか手に入らんのだ」
『キーチの実? 初めて聞くな』
「そういえば、木の実でも何でも、人と魔獣だと、呼び方が違うものが多いからね。もしかしたらみんながいた森にはあって、他の呼び名で呼ばれているかもしれない。後で本で確認してみよう」
『もしそれがあれば、ヒトミのパン作りが、もっと進むかもしれないな。よし、しっかり確認しよう』
キーチの実か。パンがふわふわになるなら、使ってみたいかも。
はぁ、確認する事がいっぱいだよ。他にあっちも問題だしね。




